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幻想郷二重創~重なる世界~  作者: 陰猫(改)
第2章【春雪異変】陰猫(改)Ver.
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第2話【護御霊空と八雲紫の会談】

「……姉さん……遅いわね?」

「だな。またお節介して遅くなっているんじゃないか?」

 私達がこたつでそんな話をしているとドサリと何かが落ちる。

 私はこたつから出て、雨戸を開く。

「遅いぞ、空ーーって、あれ?」

 音は木から雪が落ちた音だった。

 気付かない間に大分、積もったな。

 もしかすると空は雪のせいで遅くなっているのかもな。

「霊夢。雪が酷そうだし、ちょっくら人里まで空の奴を迎えに行って来る」

「ええ。頼んだわよ、魔理沙」

 私は箒に跨がるとフワリと浮いて博麗神社を後に飛んで行く。


 ーーー


 ーー


 ー


 魔理沙が飛び去ると霊夢は静かに彼女を見据えた。

「ーーで?今度は何、紫?」

「大した事じゃないわ。空は私の家で預かった事を伝えに来たの」

「空姉さんを?」

「ええ。そうよ。理由はお節介が過ぎたからかしらね?」

 八雲紫は静かに微笑むと彼女の前に空の持っていた買い物袋を置く。

「まあ、空の事は私が責任を持つわ。

 貴女はしばらく、一人で生活しなさい」

「うぇ~。面倒臭いわね」

 霊夢は紫にそう告げ、買い物袋を手に台所へと向かう。


 そんな霊夢を見送ってから紫はスキマへと消える。


 ーーー


 ーー


 ー


「少しは落ち着いた、空?」

 スキマを漂うボクに紫さんが尋ねて来る。

 当然だが、落ち着く訳がない。

 寧ろ、どうして?と思う気持ちの方が大きくなった気がする。

 そんなボクの表情を読み取ってか、紫さんはボクに近付いて優しく微笑む。

「疑問に思う事は多いでしょう。

 それについては私の家で話をしましょう?」

 その言葉にボクは少し考えてから頷く。

 ずっと紫さんのスキマを漂う他にする事もないし、多分だけど断れば、このまま、スキマの中を漂わされる事もあり得る。

「そろそろ、貴女には話さなくてはね?

 この幻想郷の成り立ちと異変についてをーー博麗の巫女としての役割をね?」

 紫さんはボクにそう告げるととある一軒家へとスキマを開く。

 そこは箱庭の様な場所だった。

 四方が結界でどうなってるか見えず、あるのはちょっとした庭とお家だ。

 ボクは紫さんと共にスキマから出ると紫さんは小さく欠伸をする。

「そろそろ、冬眠の時期なのよね?

 あまり、時間はなさそうね?」

「え?冬眠?」

「私はそう言う妖怪なのよ」

 そう言って紫さんは引き戸を開けて玄関から入る。

 そこには紫さんの式であるらんさんが佇んでいた。

「お帰りなさいませ、紫さま」

「藍。しばらくの間だけど、この娘と共に住む事になったわ」

「かしこまりました」

「丁重にもてなしなさい。彼女も博麗の巫女なのだから」

 紫さんはそう言うと靴を脱ぐボクを待ってから居間へと向かい、ボクと対峙する様に座る。

 ボクも座布団の上に正座して紫さんを見詰めた。

「さて、何から話をしましょうか?」

 そう言われ、ボクは悩む。

 聞きたい事は山ほどあるから何から話をすれば良いのか解らない。

 とにかく、何か話さなくちゃ……。

「あ、あのーー」

「ん?何かしら?」

「ど、どうして、ボクを呼んだんですか?」

「その質問の答えは出ているでしょう?

 貴女はあちらの博麗神社が土砂崩れで潰れ、そこから幻想入りした邪気を祓う為に呼んだのよ。忘れてしまったかしら?」

「忘れてなんかいません。ただ、どうして、ボクなのかなと思って。

 ボクよりも霊力を持つ強い人はいっぱいいるんだし……」

 ボクがそう告げると紫さんはクスクスと笑った。

「貴女、自分の価値が解ってないわね?」

「え?え?」

「貴女だけなのよ?向こうの博麗神社の邪気に反応して、やって来たのは?

 これがどう言う意味か解る?」

「え?えっと……」

「貴女には元々、才能があったのよ。

 邪気を祓う程度の能力と言う物がね?」

「……邪気を祓う程度の能力?」

 その能力には心当たりがある。

 ルーミアちゃんの時もフランちゃんの時も反応したし、邪気を祓う事が出来た。

 つまり、ボクには最初からその力が備わってたんだと紫さんは言うのだ。

「けれど、慢心は駄目よ?……貴女は邪気を祓うだけしか出来ない。

 つまり、霊夢達の様な異変の解決は出来ないし、此方も望まないわ」

「あ、はい」

 ボクが頷くと紫さんは微笑みながら頷いた。

 その辺はボクも解っている。

 ボクには邪気を祓う力しかない。

 その力を使うと力尽きてしまう。

 だから、ボクは霊夢達の足手纏いなのだと……。


「あとは幻想郷について話そうかしら。

 でも、その前にお茶にしましょう」

 紫さんがそう告げると藍さんがお茶の入った湯呑みを四つ持って来る。


 ……ん?四つ?


 ボクが首を捻ると藍さんの後ろにスキマが空いて二股の尻尾を持つ猫耳の女の子が現れる。

「藍さま~♪」

「ちえええぇぇぇーーん!今日もお前は可愛いぞー!」

 先程のクールさはなく、橙ちゃんに満面の笑みで頬擦りする藍さん。

「……あの」

「気にしないで頂戴。いつもの事だから」

「……はあ」

 ボクは紫さんの言葉に頷くとお茶を啜る。

 どうやら、此処でも賑やかな日々を送りそうだな。


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