第11話【紅魔館組との宴会】
それから数日後、ボク達は満月の輝く夜に博麗神社でレミリアさん達を招いて宴会をした。
「ふうん。此処が博麗神社ね?
随分と寂れた場所じゃない?」
レミリアさんは咲夜さんと共にやって来て、そう言うと持って来たワインを咲夜さんに注がせてグラスで飲む。
ボクは周囲を見渡し、フランちゃんがいない事に気付く。
「あの、フランちゃんは?」
「妹様は美鈴、パチュリー様、小悪魔と共に留守番をしてらっしゃいます」
ボクの問いに咲夜さんが答える。
え?フランちゃんの邪気は確かに祓った筈だけど、まさか、失敗しちゃったのかな?
そんなボクの表情を見て、レミリアさんが笑う。
「心配しなくても、フランの邪気はキチンと祓われているわよ」
「え?そうなんですか?なら、どうして?」
「単純な話よ。出発の時間になっても起きなかったからよ。
何度か声を掛けたのだけど、起きる気配がなくてね?」
そう告げるとレミリアさんはうっすらと笑って、チラリと氷の羽の生えた水色のウェーブの掛かったセミショートヘアーの女の子達を見る。
その中にはボクが邪気を祓った黒いワンピースの女の子もいた。
みんな、ボクより歳下に見えるけど、妖怪なんだろうけど、子供っぽいし、どうなんだろう?
ーーと言うか、当然の様にご飯食べながら楽しげにはしゃいでいるけど、この子達、誰?
「えっと、君達は?」
「あ、あの時のお姉さん!」
真っ先にボクの問いに反応してくれたのは黒いワンピースの女の子だった。
その言葉に緑の髪をしたサイドテールの女の子も此方に気付く。
そんな中で、ご飯を目一杯口に含んで水色の髪の女の子が喉を詰まらせて、自分の胸を叩く。
そんな女の子に振り返って、サイドテールの女の子が彼女の背中を擦る。
ボクも慌てて水の入ったコップを持って来て、彼女達に近付く。
「大丈夫?」
ボクがコップを渡すと水色の髪の女の子がゴクゴクと一気に水を飲み干す。
「ぷはー!死ぬかと思ったぞ!」
「本当に気を付けてね?」
「気にする事はないわよ、空姉さん。
妖精はバラバラになっても復活するから安心なさいな」
「それでも見過ごせないよ」
ボクが霊夢にそう告げると霊夢は頭を掻いて溜め息を吐く。
「姉さん。少しは懲りたら?
誰彼構わず、ほいほい気にしてたらキリがないわよ?」
「まあまあ、そう言うなよ、霊夢。
それが空なんだからさ」
ボクに注意する霊夢に魔理沙さんがそう言うと霊夢の盃にお酒を注ぐ。
そんな魔理沙さんに霊夢はもう一度、溜め息を洩らす。
「まあ、そうね。姉さんのお人好しは今に始まった事じゃないものね?」
「まあ、そう言う事だーーあっと、それで、こいつらについてだったな?
金髪の奴がルーミアって人喰い妖怪で青い髪の奴がチルノだ。
ーーんで、こっちが大五郎、だっけ?」
「え!?大ちゃんは男だったのか!?」
「大妖精の大だよ、チルノちゃん。
魔理沙さん、変な事をチルノちゃんに吹き込まないで下さい」
大ちゃんと呼ばれる女の子はそう言って魔理沙さんを咎めるけど、魔理沙さんは聞く耳を持たない。
まあ、この変は相変わらずだね?
「チルノちゃんにルーミアちゃんに大ちゃんね?……うん。覚えたよ」
「ところでお前は誰だ?」
「チルノちゃん、お前とか言っちゃ駄目だよ」
大ちゃんって娘はチルノちゃんのお姉さん役なんだろうか?
三人の中では一番大人びて見える。
「ごめんなさい、お姉さん」
「気にしなくて良いよ、ボクは空。
もう一人の博麗の巫女だよ」
「お前も鬼巫女なのか!?」
……ん?鬼巫女?
なんか、変な誤解がある様な気がする。
「姉さん。妖精なんかと絡んでないで、こっちで飲みましょう」
「あ、うん」
ボクは霊夢に頷くと三人に振り返る。
「それじゃあ、みんな。楽しんで行ってね?」
「空のお姉ちゃん、またなのだー」
「ソラ、またな!」
「空さん、ありがとうございます」
ボクは三人に手を振って答えると霊夢達の方へ戻る。
こうして、ささやかな宴会は明け方まで続いた。
後日、紅魔館の噂を早速、耳にしたけど、寝泊まりした人が夜に騒がれて退散したりとあまり、良い噂は聞かない。
霊夢に相談したところ、「そこまで面倒見れないわよ」と一蹴されてしまった。
紅魔館の人達が幻想郷に受け入れられるのはまだ先の話らしい。




