♯0–2 王都凱旋
勇者は魔王を倒し、長き戦いを人族の勝利で納めた。しかし、その終戦の下には重く大きな犠牲があったのだったーーー。
「やった、、、のか?」
そう、呟いた。が、その問いに返す者はいない。いや、正しくはいなくなっただろうか。
魔王を倒し、幾許かの時が経った。
触れれば軽く火傷するほどの熱を持っていた大理石も既に冷めきっていた。
やっと頭の整理がついて、次第に実感が湧いて来た。自分は魔王を倒せたのだと。
これで、あいつらは安らかに眠れるな、、、
「あいつら、、、か」
魔王を倒した実感は湧いても、大切な仲間を失ったということ一点に関してはどうも実感がない。
自分はおかしくなってしまったのか?
あいつらが命を落としたとき、自分はどう感じていただろうか?ー憎しみ?怒り?
あぁ、俺、おかしくなってるな、と今になってそんな風に思えた。だって、悲しみが出てこなかったのだから。
魔王城からの帰路、そのことが頭の中を支配した。
魔王城から一番近い村に戻ると、そこには心配で今にも倒れそうな一人の女の子が待っていた。
俺たちパーティーの一員である、ビーストテイマーだ。彼女は俺を見ると涙を浮かべて走り出して来た。
遂には五人もいたパーティーが、俺とあいつの二人だけになってしまったのか。と、また先のことが脳裏に浮かぶ。
「心配したんですよ?!どうして一人で行ってしまわれたんですか!?もし、もし勇者さまがダメだったらと思うと気が触れそうで、とても、とても、、、」
今俺は彼女に心配と労いと叱責の言葉を受けているのだろうが、あまり入ってこない。
「ーーっんぁ!?」
不意に、言葉にならない声をあげた彼女。
気が付くと俺は、彼女を強く抱きしめていた。
「もう、お前だけは失いたくなかったんだ!
もう仲間を失うのは沢山だっ!魔王なら俺が倒したっ!だから、、、だからもう、帰ろう?王都に帰って、王都に帰って、、、それで、静かに暮らそう、、、もう、、、俺は疲れたよ…」
ーー驚いた。俺自身が言ったことなのに、自らの意思はなく、しかし、これが本当の思いかと
すんなり腑に落ちたような言葉だった。
ようやく、あいつらが居ないんだ、ということに実感がわいた気がした。
ーーこうして俺たちは今までの軌跡をなぞるかのように王都に戻った。
王都は俺たちが魔王を倒した事が出回っていたのか、どうも騒がしく、当の俺たちにすら気付く人は少なかった。
王城へ入り王の座る玉座へと向かう。
王はなんとも嬉しそうに俺たちを迎え、なんとも哀しそうに嘆いていた。その晩は王の計らいで旅立つ前の晩餐より、はるかに豪勢な晩餐だった。本音を言えば、長らくまともな食べ物を食べていなかったせいか、あまり美味いとも思わず、うまく体にも馴染まなかった。
数日たってから、王様が正式に魔王討伐を国民に広めるべく、馬車で王都を巡ることとなった。
皆、安心に満ちた表情で俺たちを出迎えてくれ、
あぁ、これが俺たちが守ったものかと思い、少し報われた反面、散りいったあいつらの事がますます胸に刺さった。
少し短めですがこれで、
段落的には次かその次あたりでいよいよ転移って感じにしたいと思っています