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クラミュート=ココ=トリルビィ


「ところでシャル。さっき言ってたギルドカードってやつ、こっちの国では持ってないとまずいの?」



シャルに先導されながら俺と[ねむ]も歩みを進める。

ねむと言うのはついさっき名前をつけた一角タイガーのことだ。



「うーん…身分を証明するものでもあるからちょっと困るね。自分のステータスも見れないし!リョーマの国には無かったのー?」



「あー…似たようなものがあったのはあったけど…。ちなみにギルドカードは俺でも作れるのかな?」



「申請すればすぐに作れるよ! この国で代表的なギルドは5つあるんだけど、ギルドカードは協会が発行しているから共通なんだ! 街に着いたら作りにいこー!」



「ありがとう! 助かる!」



「いいってことだよ! でもその前に服をなんとかしないとね! 流石にその格好じゃ、関所が通れないからね!」



「ははは…そ、そうでした。」



「まー、馬車に着けばマントくらいならあるから、取り敢えずはそれで我慢してね!」



パンツにマントってそれ、どんな変態ですか…

それでもパンツ一丁よりはマシなことは間違いない。



「それにしてもシャルは馬車から離れて何してたの? 結構な距離歩いてる気がするんだけど…。」



「えっ?! いやー、さ、散歩?」



「散歩?」



「そうそう! 風が気持ちいいなーって思って! あ! そんなことより馬車見えてきたよ!」



シャルが指差す先の街道の脇に小ぶりな馬車が停まっていた。

この世界では馬車での移動が当たり前のようだ。

小走りで馬車に近寄るシャル。



こんな格好の奴をいきなり連れてこられたら仲間の人はびっくりするんじゃないかな…。

そう考えた俺は少し離れたところから様子を伺うことにした。



「ルビィー! ただいまー!!」



「シャーロット。おかえりなさい。突然飛び出して何処へ行っていたのです?」



「えへへー。ごめんね! それより新しい仲間を連れてきたよ!!」



「はあ?! なんですかいきなり。元の場所に返してきなさい。」



おいおい俺は捨て犬かよ…ってほぼそんな感じだった。



「えー! やだよ! うちで飼おうよ!!」



飼う?! 飼うっていったか今!!

ねむの事だよな?! そうだと言ってくれ!!



「全く…。で、一体どんな人を連れてきたんで……」



そう言いながら馬車から降りきた、ルビィと呼ばれる女性と目があった。

目があってしばらく経つが彼女はピクリとも動かない。



どうやらパンツ姿の俺か、ねむを見てなのかどちらか分からないがフリーズしてしまったようだ。



シャルとは対照的で、どこか知的さと気品が溢れでていた。

いいとこのお嬢様ってイメージだ。



「あ、あの…俺の名前はきりさ……」



「シャーロット。警備兵に連絡を。変質者です。」



うん。俺の方だった。



「あははー! 予想通りの反応でボクは大満足だよー! あはははー!」



「シャ、シャル! 笑ってないで説明してくれー!!」



半裸半泣きで懇願する俺と大笑いするシャルに挟まれて困惑するルビィと呼ばれる女性。

危うく転生先で牢屋生活を強いられるところだった…。



「そうだね! えっとねルビィ…かくかく……………しかじか………という訳なんだよ!」



「なるほど。事情は理解しました。まあ、貴方の悲鳴を聞いて飛び出していったシャーロットの事ですから、放っておけるはずがないですね。」



「え? シャルは散歩してて、たまたま俺を助けてくれたんじゃ…?」



「馬車で街に向かっている途中で散歩なんてする筈ないでしょう。この子、耳が良いですからね。それに困ってる人を放って置けない質なんです。」



「そうだったんだ。シャル…本当にありがとう。」



「や、やだなーもー! そういうのはいいから! ボクお礼を言われる様な事は何もしてないし! だって困っている人がいたら力になるのは当然のことでしょ!」



ああ、異世界にきて初めて出会ったのがシャルで本当に良かった。

これも女神様からのサービスなのかな?



「それにしてもモンスターをも魅了するとは驚きですね。一角タイガーが人に懐くなんて聞いたことがありません。どんなモンスターでも仲間にする事が出来るのでしょうか。」



「あの、俺もこっちの国に来たばかりなのでよく分からないんです。」



「うーん、ボクの見た感じだと[惚れ]させるって感じだったからどんなモンスターにもってのは流石になさそうだねー。 やっぱりモンスターにも好みってものがあるだろうし! あ、ちなみにボクはリョーマのことちょー好みだよ!!」



ううぅぅぅぉぉ!

この笑顔でその台詞……破壊力半端ない!!

今まで女性にそんな事を言われた事がなかった分、嬉しさを通り越して感動を覚えた。



「い、いや……それ程でも…。」



軽くどもってしまった。女性に慣れていないという弊害はかなりのハンディキャップになりそうな予感がするぞ!



「あ、そーだ! マントを探さなくっちゃ! いつまでもそんなかっこしてたら、リョーマが風邪ひいちゃう!」



バタバタと馬車に戻り荷物をゴソゴソと漁りだすシャル。

本当忙しい子だなぁ。元気と言うか、自由と言うか…



…ん?シャーロットって確か自由な〜とか可愛らしい〜とかそう言う意味合いがあったんだっけか…

シャルの性格と凄くマッチしているな。



「リョーマさん。1つ質問しても宜しいですか?」



シャルに聞こえない事を確認した上で少し小声で尋ねられる。



「はい? なんでしょうか。」



「貴方、こちらの世界の人間ではありませんね?」



「え??! い、いや…えっと、何故それを?」



あまりに突然確信を突かれて、上手く誤魔化す言葉が出てこず、認めざるを得なかった。



今考えればこれは大変なミスだ。

こちらの世界で異世界人がすんなり受け入れられるとは限らない。



異世界人が災厄の象徴だった、なんでことも絶対にないとは言い切れないからな。

いきなり拘束、最悪の場合処刑の対象なんてことになったら目も当てられない。



「いくら国が違うとはいえギルドカードも持っていないなんて事は普通あり得ません。ギルドカードは本人にしか使えないものですので盗賊に襲われたとしても盗られることはまずないでしょう。」



「そ、そうなんだ。でもシャルはそんな事を言ってなかったけど…。」



「あの子は…ちょっと頭がアレなだけです。」



頭がアレ……とんだ言われようですなシャルさん。



「でも……あの子ほど真っ直ぐで綺麗な心を持った人を私は知りません。なので、今後はシャーロットに嘘をつくような事は絶対しないと約束して頂けますか? それが私たちのパーティーに貴方をお迎えする条件です。」



一見するとその外見から冷静で、事務的で、どちらかというと冷たい印象を受けたのだけど、話をしてみればシャーロットの事を一番に考える、優しいおねいさんって感じだった。人は見かけによらないな。



「分かりました。約束します。でもシャルには嘘をつかないのが条件ってことは君には嘘をついてもいいってこと?」



「ふふふ。どうぞご自由に。貴方程度のつく嘘…私が全て見破って見せますよ。」



「大した自身だね。それじゃあ改めて宜しく頼むよ。えっと…ルビィさん、でいいのかな?」



「私の名前はクラミュート=ココ=トリルビィ。トリルビィとお呼びくださいませ。」



そう言うと彼女は目を細めニコリと微笑んだ。

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