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人は見た目が100パーセント!!


「ほ、本当に良いんですね?」



「はい!! お願いします!!」



「念の為、もう一度だけ説明させて頂きますが…あなたがこれから転生する世界にはモンスターもいますし、あなたの暮らしていた日本と言う国の様に治安が良いわけではありません。他の方は、特殊な才能だったり、強力な魔法だったり、伝説の武器や防具を持って行かれますよ?」



「はい! 大丈夫です!」



「そ、そうですか。では、あなたの転生特典ポイントの全てを[かっこよさ]ステータスに極振りですね。承りました。」



「それでは桐崎 龍馬きりさき りょうまさん。ご武運をお祈りしています。」



眩しいほど綺麗な金髪の長い髪とまつげ、透き通る様な白い肌と美しい声の女神様がそう言うと、僕の体は光に包まれる。



徐々に光が大きくなり、あまりの眩しさに腕で目を覆う。



まだ目を開けれそうにはない。

しばらくして、ある時を境に周りの空気が変わるのを感じた。



「風……。」



全身を撫でる爽やかな風と、足元でざわめく草達の声。



踏みしめる地面からは大地の鼓動が伝わってくる。



恐る恐る目を開けるとそこには見渡す限りの大草原が広がっていた。



「おおぉ。すっげぇ。 本当に異世界だ! まじかよ!!」



目を開けるその瞬間まで、実のところ半信半疑だっただけに、明らかに現世で記憶しているそれとは違う景色にテンションが一気に上がる。



「異世界か。本当にあるんだな、そういうのって。」



すーはーすーはーと深呼吸をする。肺に入る空気の綺麗さだけで、あまり文明が発達している世界では無いんだろうな、と感じた。



さて、お約束通りだが俺は現世でどうやら死んでしまったらしい。

どんな死に方をしたのかはよく覚えていないんだけど、気がついたら女神様の目の前にいたってわけだ。



例によって異世界へ転生する際にチート級の能力を授かることが可能だったんだけど、俺が選んだのは…



ザ、外見!!!!!



前世では冴えない外見のせいで彼女の一人も出来たことがない。



世の中見た目が全てだ!

俺もイケメンになれば絶対に幸せな人生を送れるに違いない!!



「なーはっはっはっはー! これからバラ色人生の始まりだぜー!!」

「って寒! おかしいな。風が全身を撫でるとか格好つけて言ってたけど、この感覚…まさか。」



ゆっくりと視線を下ろすとそこには見まごう事無きパンイチ姿の自分の下半身が両の眼に飛び込んできた。



「ななななな、なんでパンイチ!? しかもよりによって母さんが買ってきたハート柄のトランクス!!」



そうか。ポイントを全てかっこよさに極振りしたから、文字通り裸一貫って訳か。



案外シビアなんだなあ、転生って。



「このパンツは女神様からのせめてものご慈悲ってところか。ふっ。サンキュー女神様!!」



それはいいとして、いつまでも大草原の真ん中でほぼ全裸で立ち尽くすわけにもいかない。



「さてと、街を探さないとな。女神様曰くモンスターのいる世界らしいけど、初めからそんは凶悪なモンスターに出会ったりはしな……」



そう言いかけた時、虎と目が合った。



「でかいな。しかもなんかツノ生えてるし。…………………いやぁぁぁぁぁあ!!」



俺は大声をあげてそれはもう脱兎の如く走った。



「いやいやいやいや、無理無理! 絶対無理! 異世界きて初めて出会うレベルのモンスターじゃないだろこれ!?」



必死に逃げる俺を追いかける虎の様なモンスター。



「も、もうダメだ…追いつかれる…。」



がばっと虎が飛びかかる!

あぁ、前の人生よりもさらに短い人生だったな。と潔く死を受け入れようとしたその瞬間、



ドカンッッ!!



という凄い音と共にあたりに土埃が舞い、それに驚いた虎型のモンスターがバックステップで距離を取る。



「な、な、な、なんだ?! 何が起きてるんだ?!」



「てやーーー!!!」



と猛々しい声と共に女の子がブンッ!! と杖を振り回す!



睨み合う虎と女の子。

尻もちの体勢で唖然とする俺。



「一体なんなんだこの状況……。」



「あのー! 大丈夫ですかー?!」



虎から目を離さずに女の子が問いかけてくる。女の子はよくゲームやアニメで見る魔法使いが装備しているローブの様なものを羽織っている。年は同じくらいに見えるけど、俺なんかよりも遥かに頼りになる様にみえた。



「は、はい! なんとか大丈夫です!」



「それは良かったですー! ちゃっちゃと倒しちゃいますんで、ちょっと待っててくださいねー!!」



「あ、ありがとうございます!!」



女の子に助けてもらうなんて情けない気もするが、虎と戦うなんて無理! ここは異世界ファンタジーらしく魔法で華麗に倒してもらおう。



「えいやー!! とーうっ!!」



俺の期待に反して魔法使いっぽい格好の少女は杖を振り回しながら虎と戦っていた。



「え、めっちゃ肉体派??! 魔法とか使わないんですか?!」



「ちょっと黙っててもらえますー?! はあ、はあ…なかなかやりますね…この一角タイガー。」



一角タイガー! めっちゃそのままのネーミングだった!!

ホワイトタイガー並みにそのままだった!!


「かくなる上は、封印されしあの必殺技で……うん?」



突然少女の動きが止まった。

どうしたんだ急に…。



少女の横をのしのしと一角タイガーが通り過ぎる。



「え? ちょ、なんで!?」



時魔法でも喰らったのか、魔法少女はピクリとも動かない。

もしかして怒らせてしまったのか?!



「うそでしょ。まってまってマジヤバイ、こっち来る!!」



今度こそお終いだ…。俺は再び覚悟を決めた天を仰いだ。



「ペロペロペロペロペロ」



「うわっぷ! なに!?」



信じられないことについ先ほどまで戦っていた(まあ、俺が戦ってた訳じゃ無いんだけど)一角タイガーが

俺の顔面を人懐っこそうな表情でペロペロと舐めている。



「わー! やっぱりですー! 珍しいですねー!!」



魔法少女が目を輝かせながら近づいてくる。



「な、一体なんなんだよ?! 説明してくれー!」



一角タイガーに馬乗りされてペロペロ顔を舐められるというこの状況。一見するとムツゴロ○さんみたいだな。



混乱しながらもそんな事を考えてしまうのは、命の危機を脱したと本能的に悟ったからかもしれない。



「えーっとですね、簡単に説明すると、その一角タイガーちゃんはメスみたいですね!」



「…はい?」



「それでお兄さんはどえらいイケメンじゃないですかー!?」



「ど、どうも…。それが何か…?」



自分の姿を鏡でまだ見てないのでわからないが、かっこよさのステータスはしっかり上がっている様だ。

でもそれがなんだって言うんだろ?



「つ、ま、り……その一角タイガーちゃんは、お兄さんに恋をしちゃったんですよおー! キャー!」



「ま、まじすか……」



俺はイケメンになりたかった。

モテモテになりたかった。

それなのに異世界に来て初めて俺に恋したのがモンスター(虎)だなんて……



「そんなのありかよー?!」





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