6-19
章管理のやり方がよくわからなくて試しにやってみました。
章タイトルで四苦八苦しました。
某魔法使いシリーズとか某猫型ロボット劇場版とかからパクr——リスペクトしました。
各話タイトル入れなくて良かったと一安心。
ネーミングセンス良い人助けて。
なんだコレは——アルファルドが絶句しなければ、そう口にしていただろう。
アルファルドが実の娘であるカルネの策謀によって収監されてからどれだけ経ったのかわからない。ただ数年から十数年は経っているだろうなというのが個人での考えだった。
けれど、だからといって、これほどまでに里が変貌しているだなんて考えもしなかった。
(私以外の者も……やはり、そうか)
同じく牢獄へ投じられていたエルフたちの顔を見ても、大なり小なり自分と似たような表情。アルファルドが真っ先に我を取り戻したのは、目の前の景色があまりにも自分の記憶と違い過ぎて、混乱が一周回ってしまったからだ。それからよくわからない笑みが零れてきた。案外、ヒトというのは度が過ぎた衝撃を受けると笑うことしかできないのだな、とアルファルドは長い生涯で初めて学んだ。
牢屋から「欠落」の先導で脱出した後、そこから見た集落の景色はあまりにも記憶と違うものだった。
そう。「記憶に無いもの」ではなく、「違うもの」だ。
「これは……これじゃあ、まるで……」
「ああ……。これは、人間たちの村と同じじゃないか……」
エルフたちにも様々な者がいる。人間でも国が違えば文化は変わるし、大陸が変われば様相そのものが変化する。エルフたちにもそれと同じことがいえる。
アルファルドたちが生まれ育ったこの村は、エルフたちの中でも取り分け排他的な集落だった。例を挙げれば、この村では紛れ込んだ人間を殺すが、他のエルフの集落では殺さないことの方が多い。無論、「迷い込んでしまった」と言い訳をしてエルフを攫おうとする者も人間には多いため、尋問の上に監視は付くことにはなるが、それでも殺しまではしない。
アルファルドたちの記憶する自分たちの村というのは自然と密着したものだった。
木々を切り倒すというのは必要に迫られてからであり、単に材料として木を見るということはしない。彼らのいう「家」とはテントのように布張りのものを示していた。
彼らの生活を一言で言い表すなら「質素」だろう。けれど、それで彼らは満たされていたし、それ以上を望もうという気もなかった——はずだった。
それが、今ではあちこちに建物が並んでいる。その材料は何かといえば当然周囲の木々であり、森を切り崩すことで成り立っている。
だからだろうか、集落の規模も、畑を含めて大きく広がっている。だいたい二回りほど拡大されていた。
「なんという、馬鹿な真似を……」
エルフの集落の周囲にある森は自然として存在する森だ。それをかつて「精霊使い」や「賢者」などのロールを保有したエルフたちが協力して秘術を施し、他者は入り込めないようにしたのだ。
かつてのエルフたちが付与した対象は森そのものである。そして森を形成するのは木々だ。ゆえに、木を切り崩すことによって、秘術の効果は少しずつ劣化していく。これは植樹によって木々を増やせば効果を取り戻せるというものではない。かつてのエルフたちは森の木々一本一本に付与して回ったのだから。
「アルファルド様、血が……」
「む……」
言われて気が付けば、歯を食い縛り過ぎたのか唇が裂けて血が滲んでいた。舌で舐めとり、苦い味で意識を引き締め直す。
目の前に広がるこの集落は、言ってしまえば人間たちの暮らす村そのものだ。
あれだけ人間を下等生物だなんだと蔑んでおきながら、生活様式は彼らの方が優れていると言っているようなものではないか。ましてや今となっては、ハーフエルフを量産して奴隷売買をしようなどと考えている。
(これではあの男が我らを見下すのも文句は言えぬ……)
言うなれば、誇りがない。
人間たちを下等生物だと蔑むのであれば、エルフは彼らの何もかもを凌駕しなくてはならない。たとえ生活が不便だとしても、それがエルフの生き方なのだと胸を張り、誇り高く生きていかねばならない。
そうアルファルドは先達に教えられてきたし、そう振る舞って生きてきた。
誇りがない癖に、見下す相手の良い部分だけは真似し、それなのに彼らを尊重しない。
その有り様は醜悪という言葉が適当だ。
(……いや、今はそれどころではない、か)
アルファルドは冷静に努めるよう自分自身に言い聞かす。我を諌める術は生まれてこの方身に染み付き過ぎている。
「誰か、索敵できる者はいるか。他の者たちがどこへ行っているのか調べてくれ」
「わかりました」
周囲の者たちに指示を出しながら、アルファルドは考える。
今回、集落を攻めて来たのはこの大陸を支配する「剣舞の魔王」が幹部、八刀将のアキツ。その戦力は協力無比としかいえない。自分たちで抗うことは不可能だろう。
だが、今は「欠落の勇者」という超戦力がこちらにはある。彼は既にアキツがいるであろう方向へ走り去ってしまったが、それを補助することくらいは自分たちにもできるはずだ。
(だが、むやみやたらと行っても無駄だな。無力な子供たちとその守り手を残し、後は戦える者たちだけで向かうのが良いだろう)
アルファルドがそう考えていると、指示を出していた者が他のエルフたちを見付けたという。頷きを返し、それから自分たちと同じく囚われの身になっていたドワーフたちへアルファルドは向き直った。
「散々我らエルフがあなたたちに無礼を行ってきた。申し訳ない。だが、もしも良ければ——」
「ああ、気にすんな気にすんな」
「……は?」
ドワーフの一人が顔の前で手のひらをぱたぱた振りながら苦笑を浮かべる。
「ウチもエルフも……まあ、人間も一緒じゃろ。集まりゃ意見も割れるってもんじゃ。『欠落』さんたちだってそうじゃったしな」
「あー、アレは酷かったなあ」「トールちゃんとテッサちゃんの喧嘩じゃろ?」「喧嘩っちゅうより殺し合いじゃったでアレは」「酒が進んで仕方なかったのう」
他のドワーフたちがワイワイ騒ぎ出すのを尻目に、ドンネルと名乗るドワーフは肩を竦めた。
「俺たちにも似たようなお荷物は、帰ればおるわい。あんたみたいな諌めるやつがおらんかったからの暴走じゃろ? 気にすんな」
「いや、しかし……」
「いい、いい。俺たちだって『欠落』さんに頼ってきりじゃ。あの人の規格外さというか、天衣無縫っちゅうか……自由気ままな勝手の仕方を見とると、正直、色々考えてたのが阿呆らしくなってきてな」
ドンネルは快活に笑う。
さも、そんな小さなこと気にするなと言うかのように。
「あの人の中では力が全てなんじゃないか? 本当かどうかは知らんが……それでも、俺たちドワーフも、エルフも……それこそ同族のはずの人間相手でも、あの人は変わらん態度で接するじゃろうな。なんせ、八刀将相手でもアレなんじゃからな」
ドンネルが指差す方向を見てみると、そこでは「欠落」が仲間たちと言葉を交わしながらアキツと戦っていた。会話の内容はわからないが、あまりにも緊張感がない。アルファルドが見る限り、彼らが相対しているアキツはこの距離からでもプレッシャーを感じるほどの存在だ。だというのに、まるで「ちょっと面倒だな」とでも言いた気な顔を浮かべているだけで、さして気を張っている様子がなかった。
そして、それは「欠落」だけではない。他の仲間たちにしても、「欠落」が現れてからの表情はどこかやわらかいものがあった。
「堅い物言いなんざどうでもいい。俺たちだって、あんたらエルフに死なれちゃ困るんだ。つまり、一蓮托生ってこった」
「おうよ。一人で良い物は作れんからな」「誰かと協力した方が楽に良いもん作れるわい」「全部一人でやろうっちゅうのはのう、若造のやることよ」「酒じゃってそうじゃ。材料を育てるやつ、作るやつ、持って来るやつ、呑むやつと要るからのう」
「……恩に着る。協力してくれ」
ドワーフたちは力強く頷いた。
◇◆◇◆
「あううう。お腹が空いて力が出ないのです……」
『もう、メイ、頑張ってヨゥ。ワタシに自分で走れってノ?』
「エミリーさん自分で飛べばいいと思うのです!」
『ヤーヨ! メイの頭はワタシの特等席なんだから! この権利を奪おうってんならメイ相手でも容赦しないワ!』
「もう意味がわかんないのです!」
メイが空腹で痛む腹を擦りながら、テッサとトールに先導されて走っていると、やがてエルフの集落を抜けて森へ入った。
「こっちでいいのか?」
「間違いねえ。エルフどもの魂は自然に紛れててよくわからねえが、ドワーフどもの魂はここじゃ異質だ」
「なら、信じるとしよう」
言いながら、トールはその長剣を振るう。日の沈んだ暗い森の中、あちこちからやってくるモンスターをトールが切り払い、さらにテッサが鎖を振るって進路に邪魔な木々を砕き開いていく。
「はう。トールさんもテッサさんもすごいのです」
『とか言いつつ、メイもさりげなく魔法使ってんじゃない』
「だって、そうしないと本気でメイ役立たずなのです……」
『なーに言ってんノ? メイってばこの一団のマスコットなんだから超重要じゃない』
「メイ、マスコットだったのです!?」
「うっせーなおまえら! もちょっと緊張感持て!」
「ひゃう! お口チャックなのです!」
やがて、メイたちの耳でも喧噪が聞こえる距離にまで近付いた。
そう、喧噪だ。
雰囲気は決して穏やかでなく——むしろ真逆のもの。アキツという超級の脅威から離れられたというのに、それでもなお切羽詰まった雰囲気がこちらまで感じられる。
「……ち。狙いはあたしたちだけじゃねえってことか? そりゃそうだよな」
「場所はわかった。先行する」
「じゃ、あたしは外からやってやんよ」
メイたちの前を走るトールは一気に加速し、テッサは木々を足場にして明後日の方向へ向かった。
そして取り残されるメイとエミリー。
「あれ。メイたちはどうすればいいのです……?」
『ンー。とりあえず、トールの後に付いて行けばイイんじゃナイ? トールってば「勇者」だし、その後なら敵もいないデショ』
「わかったのです」
そうして、メイもまたトールの後を付いて走ったのだが——到着した先は地獄絵図だった。
決して、エルフたちがモンスターに食い荒らされているというわけではない。そもそも、モンスターの姿などそこにはなかった。
死にかけのエルフがいて、それを救うために必死になっているというわけでもない。
では、何が起こっていたのか。
「う、ぇ……」
『うーわ、ひっどい。さすがにコレはナイわー』
メイは思わず口に手を当て、エミリーは台詞の割に口調は愉し気で、ニヤニヤと嗤っている。
そこではエルフたちによる、盛大な責任の押し付け合戦が始まっていた。
罵り合いなど可愛いもの。殴り合っている者も少なくない。ある女性は別の女性のマウントを取って顔面を殴り、別の者に後ろから羽交い締めにされている。
口から出るのは決して状況を打開するものではない。
彼らが発するのは、どうすれば自分が責任を逃れられるかのみ。
『メイ。たぶんね——』
エミリーは陶然とした笑みを浮かべたまま、瞳だけは雪の精霊に相応しく氷点下の色彩を宿してメイに告げる。
『マスターって、こういうの、死ぬほど見て来たんだと思うワ』
必死です。必死です。
何に必死かって?
章終盤に入って思いっきり物語の形変えるのに。
自業自得だと嗤うがいいさ!
欠落「馬鹿は死ねよ」←刺さり過ぎて痛い




