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欠落の勇者の再誕  作者: どんぐり男爵
「欠落の勇者」とエルフたち
91/129

6-17

 自身の手で作り出した氷の回廊を抜け、地下の牢屋から地上へ脱出する。

 外へ出てみれば既に陽は傾きかけており、空は緋色と群青色が綺麗に二層に別れていた。夕刻であるとはいえ気温の高いアールグランド大陸、少し動けば汗が噴き出てしまうくらいの暑さだ。とはいえ湿度はそこまでではないから、直接日射しを浴びさえしなければ暑くて仕方ないということはない。

 それでも地下牢なんて暗く閉ざされた場所から解放されたわけだから、多少は気分がいい。

 辺り一面がまるで廃墟のようになっていなければ、より良かったようにも思えるが。


「なかなかのぶっ壊れ具合だな」

「なんという……こと、だ……」

「おれたちの村が……」


 おっさんを始め、俺の後ろを着いてきたエルフたちが顔を歪ませ、溜め息を漏らす。


 地下牢への入口はエルフたちの村の中心からは外れた場所にあった。そりゃあ牢屋なんて村の中心地に置く意味もないから当たり前か。そうした離れた場所だからこそ、村が酷い状況だというのがよくわかる。

 無事に立っている家もあるにはある。けれど、それ以上に倒壊してしまったものの方があまりにも多い。

 右往左往するように逃げ惑っているエルフたちが俺たちに気付いて敵意の視線を向けるが、俺がやったわけではないので鬱陶しい。


「さっき崩落が起こったときの一撃だろうな。余波でここまで壊れるとは」


 結構な威力だ。ただ、違和感がある。どうして壊れていない家があるんだ?


「ドワーフたちの意見が訊きたい。壊れてる家と壊れてない家。その違いはなんだ?」


 餅は餅屋に訊いた方がいい。彼らの専門は鍛冶? 知らんわ。俺よりは建築とか詳しいだろ、たぶん。


「どういう意味じゃ?」


 よくわかっていない様子だったので、俺は自分の違和感を口に出しながら把握していくことにした。俺自身、まだ何に違和感を抱いているのかうまくわからないのだ。

 けれど、話していくにつれて、その違和感は輪郭を得ていく。


「攻撃の中心部周辺の家が壊れているのはわかる。そして遠くのものほど壊れていないというのも、衝撃波が弱まったということで理解できる。だが……今回のケースは違うんじゃないか?」


 衝撃の中心地が最も酷い有様で、そこから離れるに従って被害が弱まっていくというなら頷ける。けれども今回の場合は遠くの家でも壊れているものもあれば、そうでないものもある。そしてそれはおかしなことに近場の家でも同様のことがいえた。

 攻撃が加えられた場所を割り出そうと思ったが、壊れている家とそうでないものとの違いが距離ではわからなかったのだ。ここまで強力な攻撃だというのに、その命中箇所を割り出せないというのはどう考えてもおかしい。

 地面が抉れているというのも、箇所によって同じようなものが多く散見されているのだ。


「建物の素材によって違いがあるとか?」

「いや、同じもののようじゃぞ。もちろん古い新しいの違いはあるやもしれんが、ほとんど同じもののようじゃ」


 となると、攻撃方法が違うということか? 特殊な魔法かスキルによるものだと考えた方が良いのだろうが、こんな被害状況を作り出すスキルは思い浮かばないな。


「わからんのう……」

「役立たずどもめ」

「ぐっ……」「そんな言い方せんでもよかろうに……」「あんまりじゃ……」


 バッサリ切って捨て、これ以上ここに留まる意味はないと切り換える。ドワーフの泣き言など知らん。


「私たちは他の者たちの救助に出るぞ!」


 捕らえられていたエルフ代表の変態おっさんが先導し、エルフたちはこれらの攻撃に巻き込まれたエルフたちがいないか動き出した。ドワーフたちもそれに協力するつもりのようだ。よくもまあ、自分たちをハメようとした連中に協力する気になるな。同情ってやつか? 俺にはわからんが。


「まあ、いいか」


 それよりも、俺は俺のすることをしよう。俺の力を見せつける相手がいなくなるというのはちょっとした問題のようにも感じるが、これも考え方を変えればいい。

 つまり、どこに居ようと、俺がどれだけの力を持っているかわかるくらいド派手にやってしまえばいいだけの話。

 久々に一切合切の遠慮容赦をせずに戦えるということだ。もちろん、武器である片手剣が壊れない範囲にはなるのだが。

 トールたちはアキツと戦っているのだろう。その衝撃や剣戟の音は俺のいる場所まで響いている。そちらへ足を向けつつ、笑みを深くしていく。


「本気を出すのはメサイアと戦って以来か? まああそこまで本気は出せないか」


 あのときは喋らなければ優秀な駄剣があったから、容赦なく魔力を振るうことができたんだよな。それに左腕も一時的にあったし。

 今の俺というか、普段の俺は隻腕ということでステータスはかなり劣化している。常に能力低下の魔法を付与されているようなものだ。

 普段は思わないようにしているが、一度左腕を取り戻したということがどうにも意識をそちらに誘導してしまう。まるで麻薬のようだ。けれども、軽く頭を振ることで益体もない考えは捨て去る。これから戦いの場に赴くのだ。それも「剣舞」の八刀将を相手に。意識をそちらに割く余裕などないだろう。

 いつ戦闘に移行してもいいよう、片手剣を引き抜いておく。普通に走った方が速いが、それではアキツの奇襲があった場合に対応できないかもしれない。あの速度は決して油断してはならないものだ。

 何が起こってもいいようにしておかなくては。


「…………ん?」


 進行方向で一瞬、何かが煌めいた。そちらに意識が向いた瞬間、凄まじい速度で何かがこちらへ飛来する。思わず表情を引き攣らせながらも顔を逸らし、顔面直撃コースを辛くも逃れた。もっとも、頬はざっくりと裂けてしまったが。


「ちくしょう。ふざけたことしやがって」


 即座に回復魔法で治療することにした。この傷の感じからすると地属性の回復魔法が良さそうだと判断し、詠唱しようとして――中断した。


「うお、お、おおおおおおおおっっ!?」


 次々と向こうで発光が起こる。そしてその数と同じだけ、先の一撃と同じ攻撃が連射された。なんつう速度だ!


「冗談じゃねえぞ!」


 たまらず横へ移動するが、俺を追うように弾幕はこちらへ向けられた。追尾性能はさすがにないようだ。あれだけの速射砲で弾丸に追尾性能なんてあったらやってられん。

 されど、そのような性能がなくても脅威は脅威。さも相手を殺すまで止めるつもりはないとでもいうように発射光は瞬き続ける。

 光の明滅は夜空に散りばめられた星々のように。さながら流れ星とでも名付ければよいだろうか。いや、やめておこう。なんか恥ずかしいし。ポエミーにも程がある。


「あんなナリして随分ポエットなヤツじゃねえか、アキツ――!」


 俺の移動に伴いヤツも場所を移したのか、暗がりに入ってからの発射光でようやくヤツの姿を一瞬ではあるが視認できた。やはり俺を攻撃してきたのはアキツだったらしい。そうでなかったら面倒だったところだ。敵の増加を意味するのだから。

 それにしても、どうしてヤツはあの機動力を活かして攻めてこないのか。あの速射砲は確かに脅威だが、それでも発射光によって弾数やどこから狙っているのかは容易に判別できる。そもそも、あの攻撃スキルは対集団戦で活きるものだ。一発一発の弾丸が魔力によって生じている以上、無駄に撃てば撃つほど魔力を消耗しているというのに。


「……これは、メイたちが何かやらかしたな?」


 そもそも、アキツが俺を攻撃しているというのもおかしい。ヤツとはトールやメイが戦いに行っていたはずだ。もしや既に殺られてしまったとか? 有り得ない話ではない。


「おーい! メイ、エミリー、トール、性奴隷! 生きてたら返事しろ!」

「誰が性奴隷だクソッタレがあっ!」


 お、よくわかってるじゃないか。テッサにはその自覚があるということだな、えらいえらい。あとで御褒美に嬲ってあげよう。


「ご主人様が来たです!」

『やった! これでもう勝ったも同然ってワケヨ!』


 その期待の仕方はどうなんだ? おまえらで倒そうと意気込んだんじゃないのか? いやまあ、正直それを期待していたかと問われれば否なのだが。こいつら程度の戦力ではアキツを倒すのは無理だろうなあと思っていたし。


「くっ! 旦那さま、申し訳ありません……」

「無様だな。四体一で倒せないどころか、追い詰められているなんてな」

「うう……」


 声はあちこちから投げ掛けられてくる。どうもメイとテッサ、エミリーとトールの二人組でそれぞれ別れているらしい。あの速射砲に対処できず、障害物を挟んで逃れているという状況か。俺? 俺にはいまだに魔弾が迫ってるけど? モテる男は辛いぜってこういうことか。たしかに辛いな。鬱陶しい。


「うざってえな! 今話してる真っ最中だろうが!」


 魔法を行使。氷の壁を前面に展開させる。その際に少し形状を弄り、魔弾を壁で受け止めるのではなく、上空へ跳ね上げるように傾斜を作り出した。


「なんでアイツはあんな状況になってんだ?」

「メイがスピードを落としたです! そしたらなんか色々あったです!」


 なるほど。さっぱりわからん。……が、まあ俺の予想が当たったってことか。

 この速射砲がヤツの奥の手のひとつということだ。俺に向けて集団戦向けのスキルを使っていたのも、メイたちを攻撃していたところから移行したと考えれば納得できる。


「旦那さま!」

「っと」


 魔弾の雨が止まったかと思えば、今度は一撃に収束させたモノが飛来する。氷壁から抜け出した直後、ソレは壁を貫通した。氷の砕ける音が連続したことから察するに、おそらく複数の魔弾をほぼ同時にまとめて一発の魔弾として放ったのだろう。


「遠距離攻撃までできたのか。『剣舞』の幹部で八刀将とか言う割に、斬撃ばかりってわけでもないんだな」

『それが違うのヨ。アレも立派な斬撃性質っぽいのヨ。一発で木を切り倒したの、ワタシ見たんだから』


 普通の魔弾ならば木を抉るか貫通する。しかし、あの魔弾は切ったというのか。となると、斬撃属性が付与されている。弾丸というより、あの攻撃は突きの猛ラッシュと考えた方が良さそうだ。リーチがクソ長い上に速いのがネックだな。いやはや、普通に魔弾じゃねえか。


「面倒な。だからメイに任せるのは嫌だったんだ。馬鹿が足を引っ張る」

「うう……ごめんなさいなのです……」

「メ、メイ殿は悪くありません! 私があの速度に対処できれば良かっただけの話なのですから!」

「黙れ、アンポンタンどもめが」


 弱者の傷の舐め合いなどどうでもいい。今はヤツをどうやって倒すか……いや、どうやって近付くかが問題となる。

 ハッキリ言って、あの速射砲の最大の脅威は速度だ。それも連射が問題なのではなく、単純に一発の飛来速度こそがマズい。今はある程度距離があるから逃れることもできているが、近付けばそれも困難になるだろう。

 魔弾も当然、飛距離に応じてその速度を僅かとはいえ落とす。それは同時に威力が損なわれるということでもある。裏を返せば、近付けばより速く威力を保ったモノが迫ってくるということだ。なのに回避の猶予は短くなる。本当に面倒なことこの上ないな。

 最初に受けた不意の一撃。されど、あのときの俺は確かに警戒していた。ゆえに、ヤツの魔弾は俺の肉体を壊し得る攻撃力を伴っていることが証明されている。まともに喰らえば死ぬってことだ。


 俺の使える魔法やスキルを考えてみるが、アレに対処するのは難しい。「勇者」というロールがレベルアップなどによって獲得するスキルや魔法は基本的に汎用性に優れたものばかりだ。ゆえに、アキツのように何かひとつに突出した相手に対して有効なものはほとんどないのである。平たく言ってしまえば器用貧乏なロールなのだ。

 速度に一点特化した「剣舞」が鍛えし一振りの魔刀としてアキツは存在している。

 魔王が鍛えた刃の切っ先が「勇者」に効果覿面なのは当然というべきだろう。


「よし、突破法を考えた」

「本当ですか!?」

「おう。おまえらが俺の盾になればいい」

「ざっけんな!」


 テッサが口汚く罵ってくるが、これも後ですべてお仕置きできると思えば小鳥の囀りのようなもので軽く聞き流せる。


「まあそれは半分冗談として」

『半分は本気なワケネ……』


 当たり前だ。なんだって自分から勝手に頭突っ込んで敵を怒り狂わせただけの連中を俺が守らなきゃならんというのか。せめて弾避けくらいにはなってもらわないと。


「四方八方から一斉に攻撃を仕掛ける。で、次々場所を変えつつ弾幕の雨でヤツに隙を作るんだ」


 アキツが単独で速射砲という暴力を振るうなら、こちらは数の暴力で応戦する。正面からの殴り合いなど馬鹿のすることだ。俺みたいな存在はもっとクールに戦うぜ。

 足りない手数は人数で補えば事足りる。そういう意味ではエルフどもに手伝わせるのもアリだな。少しでもアキツの攻撃の意識を割ければそれで十二分の活躍といえよう。


「よし。俺がヤツの注意を引きつける。その間におまえらは適当にエルフどもを捕まえてこい。手数を増やすぞ」

「抵抗してくるだろ。どうすんだよ?」

「脅せ。手足の一本くらいはなくても魔法を撃つのに支障はない」


 俺が言うんだから間違いない。


「エルフにも責任を取らせろ。なんだって俺たちで問題をすべて解決する必要がある。というか、俺たちは見捨ててもまるで問題ないんだぞ?」

「そう言われると、そうだよな」

「了解しました」

「わかったのです」

『問答無用で氷付けにして、ここで解凍するのもアリよね』


 なしだ馬鹿。窒息死するだろ。死体量産してどうする。弾避けにしても重いわ。俺の場合片手塞がったら剣持てないし。


「一撃派手なのを入れる。そしたら動き出せ。行くぞ……」


 アキツの魔弾を横に回避した直後、先程までいた場所にまた戻る。俺がそのまま横にスライドし続けることを予想したのだろう。アキツの魔弾は明後日の方向へ飛んでいく。ヤツの魔弾の速度が速いことを逆手に取った回避法だ。


「『大地を引き裂く業火』!」


 放たれる火炎は色黒く、瘴気を孕んでいるかのように思える。火と闇の複合属性魔法。

 あまりにも禍々しい見た目から「英雄」であった時代は使えなかった魔法だが、「欠落」となった今ではまるで問題なく使える。皮肉なものでもある。これが使えれば問題なかった戦闘もあるのに、腕や目を欠損した今だからこそ使えるというのだから。


 大切だったものを幾つも失ってきた。しかし、だからこそ鎖のようで、その実呪いに近い戒めを振り払った今は身軽だ。大切なものを失えば失うほど、俺は自由に動けるようになる。

 人々を守りながら戦うのであれば、俺は広範囲殲滅魔法を使えない。けれど、守る気もさらさらなければその条件は解放される。

 人々の尊敬されるべき姿を保つのであれば、俺はそう在らんと行動せねばならない。けれど、嫌われても構わないと思えば、威風堂々と唯我独尊を貫ける。


 大切なものを幾つも喪ってきた――だからこそ、本当に大切なものも理解できているつもりだ。

 そして本当に大切なものはやはり大切なだけあって、今の俺でもきちんとこの身にこの心に、剣に魔力に、魂に。刻印のように刻み込まれている。


 それが何なのか。俺には言葉にすることができない。別段、言葉にすると軽くなってしまう気がするだなんてロマンチックなことは言わない。

 単に、俺にはそれが何なのかわからないだけ。輪郭も重さも香りも色もわからない。けれど、大切だということはわかる。そして、それがまだ己の内に在り、呼吸と脈動を続けていることもわかる。

 それなら、それでいい。大切だと意識してしまえば、それを守ることに意識を割かねばならなくなるから。

 大切なものはまだ在る。それだけを理解していれば、それでいい。


「だから、それを――その輝きを奪おうとするオマエは、不快だよ」


 望んでの戦いではない。決してない。誰がこんな面倒な相手を好き好んで倒そうとするものか。ましてや俺が触れようとしなければ、アキツだって俺を害そうとはしなかっただろうに。

 だけど、もう遅い。もう戦いの導火線に火は着いてしまった。

 あとは爆発するだけ。誰か火を消せる者がいるというなら消すがいい。俺はそんなことに労力を割くのはゴメンだね。

 わざわざ戦おうとは思わない。思わないが――戦うのであれば、それは敵だ。

 敵なら、殺す。

 単純明快。シンプルイズベスト。やはり物事はこうでなくては。


「ハーッハッハッハ! 焼けろ焼けろ焼き爛れろ!」

「ヤバいのです! ご主人様がヒャッハーモードに入ってしまったのです!」

『何!? 知っているのかメイ!?』

「何故棒読みなのかはわからないけど、はいなのですエミリーさん! あのご主人様はヒャッハーモードなのです!」

『まあぶっちゃけわかってるケドネ。あの状態のマスターにはあまり近寄りたくないワ』


 聞こえてるからな、おまえら。何がヒャッハ―モードか。そんなんいいから、さっさとエルフどもの首引っ掴んで引きずってこんかい。


「トール、テッサ! 逃げようとする阿呆の手足は問答無用で切り落とせ! 黙ってこっちに来させろ!」

「了解しました!」

「わーったよ!」


 業炎は舐めるように。されどもそれを突き破るは鮮烈な輝きを放つ魔弾。


「ふんふん。見えるようになってきたぞ」


 魔力で強化した片手剣を振るい、邪魔な魔弾を弾いて回避を続ける。メイたちの方に流れ弾が行かないよう氷壁も展開させ、その間を俺は駆け回る。

 見えるようになってきて剣で弾けるようにはなったものの、やはり重い。両手剣クラスでようやく迎撃できるくらいの重さだ。ステータス差があるからなんとかできているが、これ、三〇〇レベル台だとマズかったな。

 これが「剣舞の魔王」が幹部、八刀将が一振りの実力。これと同じだけの力量を持つ者があと七人いると考えると、さすがは魔王の陣営といいたくなる。層が厚い。それだけに、メサイアのやつはよくもまあほぼ魔王単騎の魔王軍で他の魔王と肩を並べられるだけの力を作ったもんだ。こわやこわや。


 ある程度距離が離れたからだろうか。俺が少し前進しようと思うのと、ヤツが突っ込んでくるのは同時だった。

 ヤツもまた、戦闘における流れを掴むということの重要さを理解している。ここで俺を自由に動けるようにさせるのが自分にとって不利だと察しているのだろう。


「っくぁああ!」


 魔弾の速度に目が慣れてしまったからだろうか。アキツの突進を回避するのにやや遅れる。掠めるように回避し、衝撃波をまともに喰らってしまった。即座に風属性の回復魔法で傷を癒す。ズタズタに引き裂かれていた肉と皮膚が緑色の光を受けて回復していった。それでも流れ出た血は戻せない。


「魔弾より速いとか、ふざけてんのかテメエは」

「ああアあアァあァああああ! 憎い! 何もカも! 灰燼と帰せ!」

「ご大層なこと口走ってんじゃねえよ」


 つーか「灰燼」とか言ってるけど火属性の攻撃とかできないだろうが、オマエ。

 身の程を知れ。文字通りの意味で。


「所詮は魔王の小間使いだろ。この俺に勝とうだなんて思ってんじゃねえよ生意気な!」


 身体の芯から魔力を汲み上げるようにして、さらに体内の循環回路を巡らせ加速させる。

 調子に乗るなよカトンボ風情が。

第六章も終盤で申し訳ないのですが、一週間ほどお休みしようと思います。

更新再開は来週の日曜、8月20日の予定です。

毎日読んでいただいている方もいるようですみません。

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