5-8
「おっ、動いた」
その晩は予定通り宴会になった。トールにも羽目を外すくらい飲んでいいと告げたのだが、いかんせん自重したようなので、やはり俺が無理矢理飲ませることになった。わざと場を離れて口移しによるアルコール摂取である。そのまま酔っ払って甘えてきたので思う存分堪能し、今ではテントにメイたちと一緒にぶち込んでいる。
ドワーフたちの持って来た酒は異常に強いので俺の方も多少クラッとしたが、それでも収支としてはプラスになるくらい良い思いをしたので結果オーライだ。
ちなみにこのテント。俺はメイを奴隷にして自分で荷物を持つ必要がなくなってから買ったのだが、もっと前から手に入れておけばよかったと後悔した。それくらい優れものだ。それまで? 文字通りの野宿。
このテントは冒険者ギルドや商業ギルドなどと同じくギルド関連の手が入った、魔具ギルドの製品だ。
ギルド関連の製品であるため、魔具ギルドで開発され、商業ギルドで販売される。冒険者だけが割引価格で購入でき、それ以外では大金を払わなくては手に入らないものである。
普段は両手で持つくらいで平たい煎餅のような形をしているのだが、発動させることで四人ほどが窮屈ながらも足を伸ばせるくらいの広さのテントになるのである。これが主流であるため、基本的に冒険者は四人パーティを組むのだ。六人用とか八人用もあるにはあるが、そちらはいきなり値段が跳ね上がるので、それならばと四人用テントを二つ買うという者が多いようだった。
ともあれ、トールが酔い潰れてしまったりと色々あり、俺が寝ずの番をしている。なんで俺がと思わなくもないが、ドジを踏む馬鹿はいない方がいい。結局、俺一人で相手をするのが確実なのだ。
そういうわけで、自分が護衛だからと強行に主張し、ドワーフたちもそれぞれが持参したテントに入ってしまっている。彼らは普通のテントだ。
つまり、テントの外で警備を担当しているのは俺一人ということになる。勿論、尾行者の油断を誘うためだ。
ドワーフたちは浴びるくらいの勢いで飲んだため、まだ酒気が辺りに残っている。他の連中が起きることはないだろう。絶好の襲撃タイミングであるはずだ。
そうして待つことしばし。虫のさざめきが完全に途絶え、襲撃者が現れたことを察する。足音を消す技術はそこそこあるようだが、気配を消す技術はまだ拙いな。
「おい、テメエ。あんときは世話になったな」
「うん? どちら様ですか?」
「この野郎っ!」
「おい、あまり騒ぐな」
「っち、すまねえ……」
ん? 俺のこと知ってるやつがいるみたいだが、誰だろうか? 手に包帯巻いていて、痛そうにしている。俺のせい……なのか? わからん、誰だコイツ。人違いかな。けど、俺と人違いするようなやつっているのか? 黒髪で隻眼隻腕とか滅多にいないと思うんだけどな……。
「隠れてコソコソするやつまで準備するなよ。全員で来ねえと、ただでさえ低い勝率がゼロになっちまうぜ?」
背後に回っている者に声を掛けると、前にいる連中は驚いたようだった。
気付かんわけなかろうに。見張りが一人という段階である程度察しても良いようなものだが……いや、こういった連中は自分たちに都合の良い情報しか信じないし、物事を曲解するからな。俺が一人で見張りをしていることも、単にこちら側の油断だと考えているのだろう。
「ふん……『白無垢』の威光を傘にしてるわけじゃなさそうだな」
「馬鹿か、おまえら。どうして俺があいつらより弱いと思ったよ」
義眼のスキルを用い、レベルを確認する。八〇から九〇レベルほど。なるほど、人間の中ではそこそこやるくらいか。冒険者でいえば中級かな。まあ中級も分厚いのだが。俺の中では一五〇レベルを超えてようやく上級の仲間入りである。非常に少ない。
前にいるのは六人。後ろには最低でも二人。後ろの連中のステータスまでは視えていないが、目の前の六人の中に「精霊使い」はいないようだ。後ろの中にいるのか、それともいないのか。どっちでもいいか。
精霊がいたとしても、まとめて始末すればいい。
「素直に取引に応じてくれたらいいんだがな。『暴風』も起きないだろうし、それを期待してるんなら諦めた方がいいぜ」
「なんでそんなことが言えるんだ?」
「ハッ。俺たちがドワーフどもに酒を売ったからに決まってるだろ。一ヶ月もルギャルダの外にいたんだ。手持ちの酒がなくなったとは思わなかったのか?」
あ、たしかに。そこは完全に気付いてなかった。
そして俺のこの余裕は「暴風の勇者」が身内にいるからだ、と思っているわけね。
なるほどー。ちゃんと「俺は弱くないよ。むしろ強いよ」と言外に忠告したのになあ。
折角手にした情報を曲解するか、精査しない馬鹿どもめが。一般的にはそこそこ強いレベルだから、拷問の末に意識を改めれば生かしてやろうとも思ったが、やはりやめだ。殺そう。
「なるほど。で、薬でもブチ込んでおいたってわけか?」
「ああ。ドワーフには効かないだろうが、人間なら丸一日は起きない。……ま、量は摂らなきゃならねえんだが、そこはおまえが協力してくれたからな。見ていて傑作だったぜ」
ヒャハハハ、と男たちが嗤う。後方からは声が聞こえない。先程は静かにしろと言った本人が嗤っているところを見ても、これはブラフだ。ご丁寧に説明してくれたこともあって、おそらくは俺を萎縮させるのが目的なのだろう。
ただ、トールが起きないのは事実だと思っていい。……魔族にどこまで通用するかはわからないが。
「別にいいけどね。眠らせる予定だったし」
「はあ? 何言ってんだオメエ? 頭どうかしたんですかあ?」
さっきから絡んでくるな、こいつ。今日が初対面の癖に、どうしてここまで粘着質なのだろうか。それとも、俺が忘れているだけで何かあったとか?
まあ、覚えてないならそれだけの雑魚なのだろう。どうでもいいから忘れているに違いない。なので、無視しておくことにする。
「そんで? 取引ってのは何がしたいわけ?」
「単純なことさ――『白無垢』を俺たちのボスに寄越せ」
内心の温度が下がる。
さて、どういう理由でメイを狙っているのか。そこが問題だ。
もしもメイが人間でなく魔族だと気付いているのだとしたら、そういう魔具を所持していることになる。トールのことは知っているのか、どうなのか。魔具はどこにあるのか。そこらを聞き出さないといけないかもしれないな。
「どうして、オマエらのボスとやらはメイを欲しがってるんだ? ロリコンなのか?」
「う、うるせえっ! オマエには関係ねえことだろうがよ!」
「馬鹿が! 喋ってんじゃねえ!」
「…………えー」
え、マジで? そういう病気持ちの方でしたか。
メイに発情とか頭おかしい……まだ腹出っ張ったガキの身体してんだぞ? エミリーに怖い話された後とか、一緒に風呂に入って欲しいって泣きながら懇願してくるくらいガキなんだぞ? 頭叩いてエミリーに責任取らせたけど。今ならトールに丸投げできるから気分が楽。むしろエミリーに協力して怖い話をでっちあげたりしている。寝るとき隣にいて欲しいって要望もトールに投げれば済む問題なのである。トールがいてくれて良かった!
「……ま、交渉は決裂だわな。俺の奴隷を勝手に奪おうとしてんじゃねえ。『ロリコンは病気だから教会にでも行け』って伝えときな」
お祓い費用くらいは負担してやってもいい。社会浄化に協力するのは吝かでもない。
「仕方ない。殺せ」
この集団のリーダー格っぽいやつがそう言うと、男たちは一斉に動き出した。背後のヤツらはまだ動かない。……なるほど、俺が前にいる六人に気を取られている間にメイを攫おうって考えなわけだな。まあ、瞬殺すれば済むだけの話ではあるのだが。
「行きなさい、テスタ。あなたの新しい主人への印象を良くするのです」
「っち! うっせーな、叔母さん! あたしはまだ認めてねえんだかんなっ」
「——っ!?」
まるで予想外の方向から二人の女の声。まったく気付かなかった。
どうする? 俺の気配感知に気付かないほどの実力者だ。前の六人を瞬殺している間に攻撃されたらどうしようもないかもしれない。ならば、一撃で全員を魔法で薙ぎ払い、即座に反撃すべきか?
一瞬の思考。その刹那を切り裂くように、木々の隙間から銀色の冷たい光を伴い、鎖が奔る。
「……仲間割れ?」
鎖は俺でなく、メイたちの眠るテントの裏にいた者たちを襲撃したようだった。
「誰だっ!? 何者だテメエらっ!」
「仲間割れでもない、と……」
味方じゃないかもしれないが、少なくとも敵でないことはわかった。どちらにせよ、この喧しい連中をとっとと皆殺しにしよう。男と話すよりは女と話す方が気分的にも随分マシある。
駆けて来た先頭の男の拳を避け、伸ばした前脚の膝を蹴り砕く。さらにその足を素早く曲げ、回し蹴りで後続の男たちへぶつける。俺へ駆け寄って来なかったリーダー格の男が短い杖を俺へ向ける。魔力が収束する。「魔法使い」だ。
「〈蛇喰らう火鼠〉!」
「効かねえよ」
片手剣を抜刀し、スキルを用いて火弾を切り捨てる。
「な――なんでだっ!?」
「リアクティブスキルも知らないか」
無条件で効果が継続的に発動するパッシブスキル。これは意識して一度発動させておくと、また意識してオフにしない限りは効果が続く。俺の持つものであれば〈状態異常耐性〉や〈剣戦闘〉などがこれに当たる。
それに相対するのが、一般的にスキルと呼ばれるアクティブスキルだ。意識的に使わないと発動しないもので、主に魔法がこれに当たる。他にも〈雷鳴閃〉や〈星光の牙〉などもそうだ。
基本的にスキルはこの二種類がほとんどすべてなのだが、一部にはそうでないものも存在する。
それこそがリアクティブスキル。各スキルによって発動条件は違うが、条件を満たすことにより、名を詠唱する必要もなく行使可能となるのだ。
俺が今使った〈魔力切断〉もそのひとつ。武器へ魔力を纏わせることがこのスキルの発動条件。斬撃対象の魔力よりも武器に纏わされた魔力の方が上ならば、その分を消費することで相殺させられるのだ。そのため、実際は切断しているわけでもなんでもない、詐欺のような名前のスキルである。〈御鏡切り〉と併発した場合、アクティブスキルである〈御鏡切り〉が優先される。
厳密にいうなら、剣技系スキルなどのような物理系スキルは、実はほとんどがリアクティブスキルに分類される。では何故多くの者は口にするのか? 魔法と同様、スキルの名を口にすることが詠唱と見做され、威力が底上げされるからである。だから「厳密にいえばリアクティブスキルだけど、実質は普通にアクティブスキルだよね」というよくわからん分類分けをされていた。
底上げされるというが、詠唱抜きでは驚くくらい威力が下がるのだから仕方あるまい。俺くらいレベルが高ければそれでも問答無用の火力を叩き出すことができるが、メサイアなどといった強敵相手だとそれもできない。
「〈白夜の閃光〉」
光と氷の複合属性魔法を発動。閃光を浴びた連中は全員、一瞬で氷に包まれた。それ以前の段階でダメージが体力を突破していたので即死状態である。魔法耐性が足りんよ。レベルも足りんよ。
こんな雑魚どもはどうでもいい。なんのために警戒していたのかガッカリするくらいしょぼい連中だったし。
それよりも、途中で乱入してきた二人の女だ。
「さて……どちら様かな?」
「おやおや、つれないことを仰いますねえ『欠落』様は」
「……ああ、なるほど、おまえか。姿も声も毎回変えてんだから、わかるわけねえだろ」
「それもそうでしたか」
茂みの奥から姿を現したのは悪魔だった。幼女の姿だな。
ただ姿がどう変わろうと、キシキシとした笑みを見れば一発でわかった。邪悪過ぎる。
「そんで、もう一人は?」
「以前に話していた、私の姪でございます。これも話しましたが、不肖の兄が人間との間に生んだ、いわゆる小悪魔という存在ですね」
「ちっ。うっせーな。小悪魔小悪魔ってしつけーんだよ、叔母さんは」
鎖で三人の男の首を縛り、さらに締め付けてへし折ったのは彼女の姪に当たる存在らしい。なかなかにエグい攻撃をする。
見た目は人間でいうなら二〇歳前後ほどの美女だろう。まあ小悪魔らしいし、この悪魔と同様に見た目を意図的に作り替えているのだろうが。それでも美女は美女だ。むさいおっさんとかブサイクが出てくるよりは万倍マシであるといえる。
トールが凛とした美人であれば、彼女はヤンキー系美人だ。イイね。これはこれで、イイよ!
スミレ色の髪は肩にかかるくらいで、毛先が軽く跳ねている。切れ長な瞳と薄い眉は常に敵を探しているかのように苛立っている。胸は……トールよりあるな。
そして目を見張るのが褐色の肌だ。真っ黒とまではいかないが、小麦色に焼けた肌よりは濃い色をしている。そんな闇に紛れそうな容姿の中、浮かぶのは緋色の瞳。
「気持ち悪い目であたしを見てんじゃねーよ、人間がっ!」
「こら」
「痛え!」
「これからあなたの主人となられる御方ですよ? ……礼儀作法は叩き込んだつもりなのですが、どうも反抗期のようでして、恥ずかしい限りでございます」
はあ、と嘆息する悪魔。そしてその後ろで頭を押さえて痛みに涙目の小悪魔。というかこの身長差でどうやって殴ったんだろう? 魔法かな? 気付かなかったけど、まあ悪魔ならなんでもアリかなという気がしてくる。
傍目にはどう見ても悪魔の方が子供なのだが……出来の悪い姉を持った妹みたいな感じにも見えた。実際は叔母と姪というのだから面白い。
「『欠落』様、少し耳をお貸し願えますか?」
「いいけど」
「ま、待ってくれよ叔母さん! マジで、あたしに人間なんかの下に付けってのかよ!」
「躾ですからね。それに私としても、テスタを預けるならば、おそらくこの御方が最善だと判断しましたので」
耳を貸すと、悪魔は口を近付けて囁いてくる。
「彼女の名前は『テスタロッサ』といいます。小悪魔であるため、ファミリーネームは持ちません」
「うん? それがどうかしたのか?」
「……おや、ご存知ありませんでしたか。悪魔は名に縛られていますので、その名を呼ぶ者へは絶対服従が義務付けられているのですよ」
思わず目を見開く。それからテスタロッサへ目をやると、絶望的な顔をしていた。
絶対服中。その意味を、俺はよく理解している。
ゆえに、思わず目をテントの中で呑気に寝ているであろう馬鹿へ向けた。それから再度悪魔へ顔を向け、訊ねる。
「おまえ……自分の姪を俺に奴隷身分で預けようってのか?」
「その通りです。というか、テスタはそうでもない限り、『欠落』様に絶対従おうとはしませんから」
これが不可視の鎖というわけです、と悪魔はキシキシと嗤う。
身内にまでこれとは……本気で悪魔だな、こいつ。
「じゃあ、俺も不用意に名前を呼ばない方がいいってことだな」
「そうですね。私のようにテスタと呼べば――」
「駄目だっ!」
テスタロッサが顔を真っ赤にし、眉を吊り上がらせ、怒り心頭で叫んでくる。
「あたしの名前をそう呼んでいいのは身内だけだっ! たとえあたしを縛ってるつっても絶対に認めねえっ」
「困った姪ですねえ」
「まあ、じゃじゃ馬の方が調教し甲斐があるってことだな」
「さすがは『欠落』様ですね」
「あたしは自分の未来が心配で仕方がねえよ!!」
悪くない。全然悪くない。むしろ良い。それに、もう名前を知ってしまったのだから仕方あるまい。思わず口角が上がっちゃうね。
トールはメサイアの件があるとはいえ初めからある程度の無茶も呑んでいたし、少し物足りない部分もあったのだ。やはり男としては、手の届かない花を無理矢理掴んでこそという気がする。端的にいえば、燃える。
そも、昨今では受け身の男が増えているとかいないとか。実に嘆かわしい話だ。
男であれ女であれ、相手に求めるのは優れたモノだ。それが性格か、スタイルか、容姿か、強さかは個々人によって違うのだろうが、受け身で手に入れられるのはそれらが優れた者でしかありえない。
基本的にチャンスは待つものではなく、探し出すものなのである。だから俺は地面に落ちた小銭とか絶対見逃さないぞ。そして外に出ない限り、落ちた小銭は決して手に入れられないのだ。
「じゃあテッサで」
「それが妥当でしょうねえ」
「認めねえかんなっ! あたしはオマエなんぞの言うことなんて聞か――」
「おいおいテッサ、ちょっと頭が高いんじゃないか?」
「ぐっ!?」
俺の声が耳に届いた瞬間、テッサはその場に両膝を付き、四つん這いになった。土下座一歩手前だがプルプル震えているので、おそらく必死で抗っているのだろう。
「これ、本名なら抗えないってことだな?」
「察しが良くて助かります。ですが、十分に効果はあるでしょう?」
「うん。面白い」
「ひ……人を勝手に弄って……面白がって、んじゃ、ねえ……っ」
いや、だってこれ……面白いぞ! 久しぶりに本気でワクワクしてる! 昔からこういう玩具が欲しくなかったかといわれると、断じてノーである。
初めから従わないなら無理矢理従わせるのも面倒だから放置するけど、こういう形で鎖があるなら話は別だ。絶対俺からは逃げられないわけだし。
それに、メイに限らずウチの連中は基本的に従順だ。まあそうでないと俺が怒るのだが、テッサみたいに俺に鎖を握られた上で抵抗するというのは面白い。愉快愉快。
「じゃあ、小悪魔についての説明諸々をよろしく。俺、そういうのまったく知らないし」
「そうですね。本人から説明させてもいいのですが……どうせ自分に都合の悪いことは言わないでしょうし、私の方から説明しましょうか」
「ぐぎぎぎぎぎっ」
さも自然な動作で悪魔はテッサの背中に腰を下ろして足を組んだ。うーん、実に手慣れてるな。そういう趣味の持ち主なのかな? 俺と気が合うわけである。俺もたまにトールにやるしな。
「ああ、その前に……。『欠落』様、今襲ってきた愚か者どもの魂を頂戴してもよろしいですか?」
「前の魔人のときと同じか。別に構わんぞ」
あんな連中どうでもいいし。
「はあ!? 叔母さん、嘘だろ? あの魂、魔人のだったのか!? どっから狩って来たのか不思議だったんだぜ!?」
「そうですよ。そして、その魔人を倒して下さったのは、これからあなたが従うことになる『欠落』様です。これから誠心誠意働けば、似たような上質な魂を頂けるかもしれません。媚を売っても良いのでは?」
「ハッ。いくら叔母さんの言葉でも信用ならねえな。たかが人間が魔人を殺せるかよ」
いや、弱過ぎて仕方なかったんだけどな……まあ信用しないならしないでいいけど。俺は強制的に従わせられる魔法の鎖を手に入れたわけだし。
「では、テスタはいらないということですね」
「そうは言ってねえっ」
どっちだよ。
「悪魔たちにとって魂って、メシみたいな扱いなんだっけか?」
「いえ、嗜好品ですね。別になくても問題ありませんが、あったらあったで、心を豊かにしてくれます」
「なるほど」
「人間風情の魂じゃ物足りねーけど、ないよりゃマシだわな」
テッサがちょっとうるさく感じたが、これも俺への反抗心の表れだと思えば容認できるから不思議。普段は好きにさせて、一番反抗したいときに無理矢理黙らせたり言うことを聞かせて、自分が下僕なんだってことをしっかり理解させて悔しがらせよう。ああ、愉しみで仕方ない……。
こうして俺は素敵な素敵な贈り物を悪魔から貰うことになった。
情けは人のためならずともいう。悪魔とほどほどに仲良くしていて良かったと思える瞬間だった。
順調に「欠落」がろくでなし街道を爆走している件について。
え? 元から? 聞こえんなあ。




