4-14 エピローグ
「なーんか、納得できねえ」
「やっぱりアイツ、ムカつくわ……」
「ま、まあまあ……」
オラルドとルミナークをメシアが落ち着かせながら、彼らは帰路に着いていた。
納得できない顔をしているのは二人だけではない。実際、メシアとしても納得できてはいないのだ。
それは今回の目的——「欠落」の救出というものが、ものすごく微妙な終わり方をしたからである。
「叡智の魔王」へ喧嘩を売るに等しい行為に、皆が並々ならぬ覚悟で挑んだ。
それがこの終わりか、と言いたくなる気持ちは誰にでもあった。
漆黒の剣士とソフィアの戦いもまだ終わる前で、他の者もそうだった。
そんなとき、凄まじい魔力の波動が人間魔族を問わず全員を襲ったのだ。そして直後、全員が直感した。
「嫉妬の魔王」が死んだという事実に。
そのことに呆然としている間に、「欠落」が奴隷であるメイを小脇に抱えていきなり現れた。
「はい、全員注目。……おお、結構いるね。ソフィアもいるじゃん。久しぶり」
「欠落」が自分に気付いてくれ、わざわざ声を掛けてくれたことに彼女が喜んだのはさておき、彼はあっさりとこう言った。
「もうすぐ俺帰るけど、メサイア――『叡智の魔王』ともう少し話すことあるからさ。悪いけど、帰ってもらえる? ああ、人間側に怒らないようには言っといてやるよ」
自分たちがここまで遠路遥々、命を賭してやって来た理由を台無しにするのだった。
『ほーんと、有り得ませんよあの「勇者」は! 私、ちょっと気を失ってたんですけど、何故かあの人と魔王とのこと、思い出せなくなってるんですよ!? あの「勇者」が過去に例のない最悪の「勇者」だってことは断言できますけど!』
「人のことを悪く言うの、わたしはあまり好きじゃないなあ」
『おお! あなた――ソフィアさんは本当に素晴らしい「勇者」ですねえ! その通りですね。私もちょっと、切り換えます』
突然のことに動揺する者たちを見ながら、あのときの「欠落」はソフィアの剣がボロボロだったのを見て、ふむと呟くのだった。
「俺、コレ要らないし、いる? 駄剣だから、要らなくなったら捨てて。売ってもいい。二束三文にはなるだろうし。なんなら肥だめにでも突っ込んどいて」
そんな軽い調子で渡されたのが伝説にもある聖剣だと聞いて、全員が絶叫した。何故か魔王軍である剣士までもが絶叫していた。
「欠落」としては聖剣を売り、その代金を全員で山分けすることで、今回の費用ということにしたいようだった。が、当然全員が拒否したのである。話し合いの結果、聖剣を手にするのはソフィアということになった。
最後まで惜しそうにしていたのは彼女と同じく「勇者」であるシルバーだったが、今回一番活躍したのが誰かといえば問答無用でソフィアなので、彼も羨ましそうな目を向けつつも大人しく引き下がった。
「それにしても……伝説のインテリジェンスソードである聖剣を要らないとは……」
「よくわからないよねえ」
「いや、あいつは頭がおかしい。前から思ってたが」
「そうね。狂ってるわ。死ねばいいのに」
今回の一件で損しかなかったのかと言われれば、それは否だ。
ソフィアたちの「太陽」と「銀翼」、「戦斧」はこれで連携を学んだ。共に冒険者ギルドに所属している以上、今後は協力することもあるだろう。
それにアイスドラゴンを始めとして、結構なモンスターを倒した素材の報酬も山分けになる予定だった。普通の冒険では決して手に入らない額だ。今回消費したアイテムや装備を新調しても、まだおつりが出るくらいには。
ソフィアは聖剣を腰に下げ、みんなとは少し離れて思案に耽る。
(何を考えてるんだろう、『英雄』さんは。やっぱり、私じゃ考えつかないことなのかなあ……)
それがちょっともどかしい。
けれど、少し、嬉しい。
あの剣士との戦いで、間違いなく自分たちは成長できた。そして聖剣を手に入れたソフィアは一番戦闘力が上がったといえるだろう。
でも、そんな聖剣すら「要らない」と言えるくらい、彼は圧倒的だったのだ。
あのボロボロの様子を見るに、魔王とは死闘を演じたのだろう。けれど、それをまるで意に解さぬ言動。それが彼の格を示すとソフィアは思ってやまない。
(もっと、もっともっと強くならなきゃ)
そう思い、力強く一歩を踏み出した。
が、意識を完全に魔力制御から剥がしたため、高く積もった雪に足が沈んでいく。
「ふぎゃっ!」
「ああ、ソフィー!」
「なーんで魔力制御を忘れるんだか……」
「窒息するぞ! 早く引き上げろ!」
危うく、死の危険性のない場所で死にかけるのだった。
◇◆◇◆
(あうううう……)
トールは内心緊張で仕方がなかった。
それもこれも、すべては彼女の主君である「叡智の魔王」メサイア・ホワイトが悪いともいえる。
先日の戦いがあった後、トールはメサイアに呼び出された。その場で大剣や魔具である鎧をボロボロにしたことを謝罪したが、それはどうでもいいと言われ涙目にもなった。
彼女の敬愛し、尊敬する魔王は、どこかスッキリとした顔をしていたように思う。
「『欠落』に追従し、世界中を旅せよ」
それがメサイアの命令だった。
そしてその場で隣にいた「欠落」は直後にこう言う。
「いや、要らんし。野郎とか要らん。そんなむさい旅したくない。可愛い女の子なら考えないでもない」
その背後にいた奴隷のメイと精霊のエミリーが凄い顔をしていた。
メサイアはその場で一瞬ぽかんとした顔をしていたが、すぐにあることに気付き、破顔して大笑いをし始めた。
「いや、私の決定よ。拒否は……許さないわ。貴方も、私の協力が得られないと、困るでしょう……?」
「ぐぬ……」
それから一晩開け、現在になる。
今、トールは「欠落」の休む部屋の前にいる。この姿でメサイア以外の前に出るのはかなり久しぶりだ。というより、初めての者の方が多いだろう。
先程から何人かの配下たちが側を通り過ぎていくが「あんな人いたっけか?」「新人じゃないか?」「けど『欠落』さんの部屋の前だぜ?」「引き入れるための魔王様の策かもしれん」などと噂している。
(困った……)
そう。何が困るって、それが嘘でもないからなのだ。
メサイアはトールへ極秘にこう告げた。
「何なら、子種を貰って来なさい。人間と、魔族……されど、共に『勇者』の子……。フフ、どんな子が生まれるのか……興味深いわ……」
思い出すだけで、顔が赤くなるのを自覚する。
それでも、ええいと覚悟を決め、扉をノックするのだった。
◇◆◇◆
「ご主人様ぁ……」
『マスター……おやつ……』
「…………なんだ、この最悪の目覚めは」
扉をノックされ、知らん女の声で目が覚めた後、俺の左右にはメイとエミリーがいた。色々と昨日は大変だったから、最後は気絶するようにベッドに倒れ込んだのだ。その後で入り込んで来たのだろう。
昨日は戦った後にソフィアたちを帰して、うまいこと駄剣を押し付けて。それからメサイアと今後のことを話してと……なんでもうちょっと時間を置かなかったのだろうか。
ともあれメイが隣にいるとウザいので、さっさと起き上がることにする。ついでに軽く頭を叩いておいた。エミリーはまあ小さいのでよしとしよう。虫みたいなもんだし。パチンってやったら死ぬし。
「知らん声だったな……そういや、あの侍女、死んだんだったか」
起こしに来たのは誰なのだろうか。ともあれ、俺に付いていた侍女の一人は激昂したメサイアに殺されたのだ。ふふん、俺への態度が悪かったから、その罰だな。
けどこの声……他の侍女でもなかったんだよな。誰だろう?
「はいよ。今開ける」
「は、はいっ」
上擦っている。緊張してるのか? ああ、俺と協力することになったから、メサイアがそれに合わせて何か言い含めているのかもしれない。まあ俺にとって不利になるわけでもないだろうから、問題ないとしておく。
扉を開くと、そこには何故か顔を真っ赤にした女性がいた。
金糸の髪はさらさらしていて、動きやすいショートカット。メサイアが造ったのか、魔法が付与されて魔具と化した上等な軽鎧。全身鎧ほど重厚ではないが、革鎧よりは余程丈夫であるはずだ。そして腰にはこれまた魔具であるような両手剣。
肌は白色で、木目細かい。少し伏し目がちだが、目も大きくて綺麗なルビーレッド。端的に言って、美女と呼んでいいだろう。方向性は違うが、アイリーンと同じく綺麗系の美女である。
「よっし!」
「ど、どうかしましたか!?」
「いや、なんでもない」
驚いた様子で目を丸くして慌てている。この感じ、グッド。俺を蔑んだ目で見ていたあの侍女たちとは違うね。なんだよ、いるじゃん「叡智」の魔王軍。こういうのが良いの。むしろこういうのじゃないとダメなの。
「そんで、何? 朝飯?」
「それは、まだもう少し先の予定でして……。魔王様に言われ、事前に改めて挨拶をしろとのことです」
「挨拶……?」
よくわからんな。俺たちは今日でこの魔王城を発つことになっている。今更何を挨拶しろというのか。
ああそうだ。問題がひとつあった。トールだ。あの黒い全身鎧でしかも男。
鬱陶しくて仕方ないわ。エミリーでもうるさくてウザくはあるが、羽虫とはいえ女だから許してる部分があるのに、礼儀正しくても男は要らん。戦力なら俺一人で間に合ってる。
とりあえず挨拶ということだから、部屋に入れることにする。ついでにメイを蹴ってベッドから転がり落とし、エミリーは持ち上げて枕に叩き付けることで起こした。主人より起きるのが遅い奴隷がどこにいるというのだ。
そうしてようやく、この少女の挨拶が始まる。
「私、トール・テンペストがこれより、『欠落』殿と共に旅を同行したいと存じます。未熟で到らぬ点が多々あるかと思いますが、ご容赦頂ければ幸いです」
「………………なに?」
「は……、え、ええと……何か、不明瞭な点があったでしょうか?」
思わず低い声で訊ねると、トールを名乗る彼女は目に見えてオロオロし始める。
「おまえ、トール?」
「は、はい……そうですが」
「……同名の別人?」
「いえ……魔王様の側近でした、トールです。あ、ああ! そういうことですか!」
そう言って、このトールを名乗る女は事情を説明する。
「………………」
どうやらあの黒い鎧は魔具だったようで、装備すればあの大きさの男みたいになるものらしい。その間は魔力体のようなものになるらしく、だからヘルムを弾き飛ばした際に頭がなかったのだとか。あと声も男みたいに低くなるようだ。そのギミック必要だったか……?
実際の中身はこの通りの女である。魔族であるため、実際の年齢は俺より余程上なのだろうけれども。
「待て。じゃあおまえ、デュラハンじゃないのか?」
「いえ……。私はサキュバスですので」
すい、と尻尾が出てくる。
「ふわー! 凄いのです!」
『や、やるじゃない……! でもワタシだって、ホラ! 羽あるし!』
何を競っているのだろうか、エミリーは。羽くらい虫にもあるわ。それとも遠回しに自分は虫と同じくらいだと自虐しているのだろうか。
「サキュバスと『勇者』って、相性悪くないか?」
「はい……。それを補うためのあの鎧でした。そのため、レベルの割にはステータスも低いかと……」
しょぼんとするトール。なんだその顔、やめろ。悪いことしてるみたいで興奮しちゃうだろ!
義眼のスキルを発動し、トールのレベルとステータスを確認する。
トール・テンペスト。魔族でサキュバス種。レベルは一九七。ロールは「勇者」で、銀色にまでランクアップしている。
ステータスは……サキュバスであるためか、レベルの割には筋力と耐久が低い。代わりに魔力は高いが、「勇者」の魔法の火力を考えると、あまり意味はないかもしれない。どっちにせよ大火力のものが多いため使い勝手が悪く、恩恵を得難い。
あとスキルを見ていて気付いたのが……なんだこれ。〈一途なサキュバス〉ってワケわからんぞ。スキル詳細も名前のままだし……。
何なの、好きなやつでもいるの? ああ、メサイアか。何? 百合? そういうの悪くないけど、俺は個人的にあまり好きでない。目の前で組んず解れつするのは良いが、それなら混ざりたい。俺が直接恩恵を得られないのなばら意味はないのだ。
「あの……どうでしょうか? 『欠落』殿が女性が良いと仰っており、私は一応女なのですが……」
「んー、まあ……メサイアも言ってたし……いいんじゃない?」
「そ、そうですか……良かった……」
ホッとしたように微笑む。まるで花が咲いたような笑みだな。本当におまえ魔族でしかもサキュバスかと言いたくなる。「僧侶」とかのロールでも良いと思うくらいには。
まあ、トールは戦力的には問題ないか。野郎と思っていたところ、これだけ可愛い女の子なら文句も出ない。
メイとエミリーと自己紹介しているトールを見ながら、これだけは言っておかなくてはならないと判断し、強く告げておいた。
「いいか、トール! この旅は俺がリーダーだ! ゆえに、俺に従わなくてはならん!」
「はい! 『欠落』殿に従うということは存じております!」
「いや、わかってないな」
ちっちっち、と指を振る。途端にトールは慌て出した。軽く泣きそうである。そこまで必死にならなくてもいいのだが。
「メイ!」
「はいです!?」
「おまえは俺を何と呼ぶ?」
「ご主人様はご主人様です!」
そうだ。その通りだ。
「エミリー!」
『ふぁい!? ワタシも!?』
当たり前だろう。なんだと思ってたんだおまえ。窓から放り捨てるぞ。あるいは虫籠に閉じ込めて売りに出すぞ。
「おまえは俺を何と呼ぶ?」
『マスター』
「そうだ。グッドだ。なのでこれをやろう」
『やったー! あ、これ酸っぱいヤツじゃん……』
文句言うなら食うな! これでも普通の林檎より嵩張らないから代用品としては非常に俺は喜んで食べてるんだぞ!
「さて、トール!」
「は、はいっ」
「おまえは俺を何と呼ぶ?」
「え、ええと……」
トールは右へ左へと忙しなく視線を巡らす。別にどこにも答えはない。当たり前だ。というか、何と呼ばれるのか少し楽しみでソワソワする。
「え、ええと……それでは……」
ごくり、と唾を飲むトール。反射的に俺も唾を飲んだ。
「だ、旦那さま……ではいかがでしょうか?」
瞬間、身体が動いた。どうしようもない。これはもう天啓だろう。俺は悪くない。
「そうだ! それでいい!」
「ふぁ、ふぁいっ!?」
抱きしめ、よしよしと頭を撫でてやる。
すごい。良い匂い。あとやわらかい。メイとか小さいし、エミリーはもっと小さいしで困っていたのだ。これこそ俺が望んでいたものだと言っていいだろう。メサイアもたまには悪くないことをする。むしろ良い。これが良い。
胸のサイズは……ソフィアよりは少し小さいか。でも大丈夫。許容範囲だ。というかおっぱいに貴賎とかないし。形がすべてだし。その点、トールは身体を鍛えているせいか形も良さそうだし。文句はない。
何故かトールが抵抗しないのでそのままベッドに連れ込もうとし、エミリーにドロップキックを喰らって我に返るのだった。
魔王城を出て、悪魔の言う制限時間内にサルニア大陸を去る必要があるため、俺たちは急いでルゴンドの都を目指していた。俺が大気の大精霊を召喚すると、トールは驚愕で目を見開いていた。あともう少しのレベルでこれより下級の精霊ならおまえも召喚できるようになると思うよ。
そうして空を飛んで移動中は手持ち無沙汰なので、これから新しくパーティに加わったトールから色々な話を聞いている。俺に指示に忠実に従うようお勉強させなきゃならんし、彼女にとって何が得意で何が不得意なのかも聞かなければならないからな。
「それじゃ、大剣はあまり得意じゃないのか?」
「いえ……普通にンッ……使えますが……ひぅっ、この……身長です、ので……あの大剣は、ぇぅ、その……使えません」
そりゃそうか。トールがあの鎧を着用していたときの身長は二メートルに足らないくらいの巨漢だったのだ。その身体で振るう大剣を今のトールが使うのは厳しいだろう。
またあの鎧の補助がなくなった以上はステータス的にも難しいし、身体の大きさ的にも取り回しという問題がある。勿論、それは日常の生活でもそうである。
「ご主人様……」
『うーん、どうかと思うのヨ。ワタシもサ』
「何がだ。まるで問題なんてないぞ」
「ぅぅ……」
別に、トールを俺の膝に座らせて胸を揉んでるだけだろうに。何が悪い。ちなみに、鎧は外させていて、服の下から直に触っている。当たり前だ。当たり前だっ!
可愛らしいことに、トールは耳朶まで真っ赤である。これでサキュバスというのだから困ったことだ。
「これはサキュバスとして慣れさせるための行為だ。ひょっとすると、種族を活かして役に立ってもらう可能性もあるからな……」
ふっ、と笑っておく。しかし、何故かメイとエミリーからのジト目は依然として変わらない。何故だ。
情報収集させるのにトールを「女」として働かせるのは非常に良いアイデアだと思うのだが。ましてやサキュバスだぞ? これ以上ない采配だと思う。
「こ、これも……ぅん……訓練、なのです、よね?」
「当たり前だろう」
「であるなら、私は構いません。どうぞ、その……好きにして下さい」
「よし! 任せろ!」
前々から俺のパーティにしては色気というか、そういうものが足りないと常日頃思っていたのだ。ようやくそれも解消した。うんうん。メイは奴隷として要るが、エミリーは別にいなくてもいいな。ペット枠だ。そのうち、もっと良いのが出てきたら交換しよう。
『さらっとワタシの未来が危うくなった気がする!?』
うるさい。
けど、今の俺ならそれくらいの怒りは飲み込める。問題ない。この手の中のぬくもりがあれば、その程度の怒りはあってないようなものだ。
しかし……こうなると、左腕がないのは凄く不便だぞ? 一刻も早く左腕を取り戻さないとマズいな……。
ただの一夜ならとりあえず発散できればいいとして、今後移動中もこういうことができるというのなら、両手が揃っているかどうかというのは大問題だ。
「ひゃあっ!?」
「こら、逃げるな!」
「す、すいません……!」
手を下腹部に伸ばそうとすると、驚いたトールが逃げようとする。すかさず捕まえ直したから問題ないが。
「それに、落ちたらどうする気だ」
「そ、そうですね……すいません」
「まあ俺は優しいからな。許してやろう」
「はっ。ありがたく思います」
「…………エミリーさん……」
『ウン……。マスター、ご機嫌だし……放っておく?』
「ですです……。たぶん、邪魔したら、すごーく怒られるのです」
『そーネ。よく考えたら、ワタシたち、別に問題ないし。何する?』
「今晩、何食べるです?」
『甘いモノがいいワ!』
なんか後ろの方で二人が勝手なことを言っている。晩飯が甘いものってなんだ。それはどういう地獄だ? デザートなら話はわかるが。
「俺は何を食おうかなあ」
「私は特に……」
おまえを食ってやろうか! ……さすがにこれは言わない方がいいかな。
しかしそれにしても……トールがこんな美女とは思わなかった。それに加え、ここまで従順とも思ってなかった。これは思いがけない拾い物だろう。大事にしなくては。
「いっそのこと、このままアールグランドまで行きたいところなんだが……」
「ルゴンドの……ン……街に、行くのですよね?」
「ああ」
撫で回し、揉み、摘みながら会話を続ける。トールは顔面が紅潮し、目も潤み、息も絶え絶えだが、気にせず会話を続けることにする。これはサキュバスの訓練なのだから、仕方がない。いやー、俺もしたくないけど? けど? 訓練だし? しょーがない。
途中でソフィアたちが下にいた気がしたけれど、特に気にせず無視して飛んで行くことにした。何かギャーギャー騒いでいたような気もするが、たぶん気のせいだろう。
そうこうしてルゴンドに到着し、ギルドの支部長や市長には驚かれたものの、話を丸め込んで、アールグランド行きの船に乗ることに成功した。
ちなみに。トールの尻尾はバレないようにメサイアから魔具を渡されている。傍目には人間にしか見えないだろう。エミリーも姿を消すための隠蔽魔法を使っているようだし。……まあ、潮風は魔力的に身体に合わないようだから、メイの服の中に隠れていたが。
そうこうして、俺たちはサルニア大陸を後にしたのであった。
目指すはアールグランド大陸。
「剣舞の魔王」が支配する、砂漠の大部分を占める大陸だ。
これで第四章は終わりです。
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