4-0 プロローグ
非常に短いので、一時間後にもう一度更新します。
凍て付くような寒さだった。
空を見上げれば鉛色の曇天。青い空を最後に見たのはいつのことだっただろうかとソフィアは少しばかり考えるが、すぐに頭を横に振って考えるのをやめた。
動いても動かなくても、無慈悲に体温を奪う雪と寒風は、このサルニア大陸を支配する「叡智の魔王」の精神を象徴するかのよう。
ここまで寒いと、得物が滑るからと言って手袋をしないわけにもいかない。
「太陽の勇者」であるソフィアも、そのパーティメンバーであるアイリーンも、「銀翼の勇者」一行たちも同様に手袋をしている。そもそも、そうでないとかじかんでまともに動けなくなってしまうからだ。
足下は迷いの森もかくやという積雪。踏ん張りが利かず、まともに動けない。頼りになるのは魔法くらいであるため、「魔法使い」が大活躍していた。
見通しの利かない森の中で突然襲い掛かって来るモンスターたち。この辺りは彼らの縄張りであり、どうしても不慣れな一行は後手に回らざるを得なかった。
「ふっ!」
ルミナークは小さく、けれども鋭い呼気と共に杖を敵へ向ける。
杖の先端に取り付けられた魔石へ魔力が収束され、より効率的に変換される。炎の弾丸が放たれ、飛び掛かって来た白い狼型のモンスターへ着弾。小規模の爆発を起こし、頭蓋と前脚が吹き飛んだ。鮮血が撒き散らされるものの、氷点下を悠に下回る気温は瞬時にそれを凍らせる。積雪の上に音もなく、赤い結晶が沈んでいった。
「うわ……凄いな、『魔女』さん。無詠唱だよ……」
「わ、私だってできますよ? ほらっ」
「メシア、ちょっと競い過ぎじゃない?」
「アリアの言う通りだとあたしも思うねえ」
「そ、そんなことありませんっ」
飛来するモンスターへ無詠唱で魔法を放つ「魔女」。そして彼女に対抗するメシア。他のパーティの「魔法使い」たちの多くは〈詠唱破棄〉のスキルを持たないが、それでも堅実に襲い掛かるモンスターへ魔法を着弾させ、撃ち落としていく。
〈詠唱破棄〉のスキルで放たれる速攻魔法は出の速度が速い分、威力が減衰される。それでいてなお敵を仕留める火力を持つのは「魔女」の二つ名を持つルミナークと「慈愛」の二つ名を持つメシアだけだった。
それでも速攻魔法を喰らって踏鞴を踏めば、そこを近接組が果敢に攻め込む。
「よっし、わたしも……!」
「ふん。僕に任せておけばいいというのに。まあ、出番を譲ってもいいだろう」
「またやってるよ、リーダー」
「しょうがないよ。そういう人だもん」
「後で後悔するのだろうな」
一方で、唯一ソフィアと同じく「勇者」である「銀翼」パーティも敵を倒していく。
向かうは魔王城。そのためには、まずこの先にある峡谷を抜け、魔族の支配する魔都を越える必要があった。
(待ってて、『英雄』さん!)
ソフィアは囚われの身になっている「欠落」の無事を祈り、魔法を放つ。
そうして少しずつだが着実に、人類の刃は魔王城へ迫っていた。




