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第二話「貿易港グレフィーク」

 アーク大陸西、エレボス地方。エイレーネとは違い、気候の変動が激しい地方であり、獰猛な生物が跋扈することでもエイレーネの人々から恐れられている。しかし、エレボスの人々にとってはそれが日常でもあり、平然と暮らしてのける。

 エレボス地方の北西。突出した地形が印象的な場所に煉の依頼主がいた。ゲン・ガンから魔国エレボスを抜けて、道なりに進んでいくと、外交が多いグレフィーク港へと着く。グレフィーク港は交易が盛んなだけにエレボス地方にとって重要な交易都市でもある。港を治めるは四大財閥の一角のロレンツォ家。エレボス地方に展開したロレンツォ家は交易を中心とした事業を展開し、魔国エレボスの財政にも加担するようになった。当主であるヴォルフ・ロレンツォは政争を掻い潜り、見事魔国エレボスの重鎮に座することに成功した。が、家督を優先した為か家族に対しての温情というものが希薄であり、実の娘に掛ける言葉すら忘却の彼方にある。故に、ヴォルフは雇った。愚直に依頼をこなせる傭兵を。

 「やっと着いた。」

 グレフィーク港の門前に辿り着いた煉。見慣れた縄と魚のシンボルはこのグレフィークを象徴する漁業を示していた。港に住む殆どの人々は漁を生業としており、昔ながらの獲り方と魔法による獲り方で闘争することがあるが至って平和である。煉が近付くと門の柱にもたれかかっていた門番が話しかけてくる。

 「お、煉さんじゃないっすか。二日ぶりっすね!」

 「やぁ、門番さん。今日も暇を持て余しているね。」

 陽気な門番はカラカラと笑い目元の涙を拭う。グレフィーク港は海からの来訪者が基本的であり、大陸からの来訪者は極めて稀であり、大陸の門は一番楽で暇な職業でもある。

 「いやぁきついっすよ。空を見て、地面弄って、これまで入港した人のリストを熟読したり……。」

 遊びたい年頃であるが、職に就けなければ食っていけない。仕方のない事である。しかし、暇な事に変わりはない故に重い溜め息が零れる。

 「でも、偶に狩りに出掛ける時は暇じゃなくなるだろ?」

 「そーっすよ!それで丁度煉さんにも後で付き合って欲しいんすよ!」

 「ん?ということは狩りがあるのかい?」

 「最近ここら辺で野生化した牛が商人達を襲われる被害が増えているんすよ。牛退治と一緒にその牛で宴会を開こうかっていう算段なんすよ!」

 「宴会か…だったらお嬢様も参加してもいいかもしれないね。」

 お嬢様という言葉に門番が気付く。

 「ん、あぁ……。そうか、でも屋敷から出ることは領主様が禁止しているんじゃないっすか?」

 「大丈夫。過保護な父親が選んだのはこの僕なんだから。愚直な傭兵とはいわれたもんだね。」

 命令に素直に従う傭兵を領主であるヴォルフは求めていた。が、しかしながらエレボスのギルドでは財を狙う輩が多くいる為に信頼に欠ける。故に、中立な立場に存在するゲン・ガンのギルドより、煉が選ばれたのである。

 「愚直って…なんすか?」

 門番が疑問に思っている間に煉は門を潜り抜けて一言告げる。

 「馬鹿正直っていうことだよ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 チリンチリン……

 ゲン・ガンのギルドの扉がゆっくりと開く。バーテンダーのローパーがいち早く気付き、いつも通りのトーンで対応する。

 「いらっしゃい。今の時間はゲン・ガンのギルドだ。依頼かい?それとも……。」

 ギルドに入って来たのは二人。一人はゲン・ガンでは珍しい着物姿をした青年。もう一人はボロボロの布を身に纏い、燃えるような紅く長い髪を地面に垂らしており、顔は見えない。

 「ふむ、ここはギルドだったのか。てっきりバーか何かかと思ったんだけど。」

 「まぁ、あながち間違ってはいないがこの時間帯ではなかったということさ。それで?ギルドに用ではなく、食堂に用があると……。」

 「この娘がお腹が空いたと五月蠅くてね。トーストとコーヒーだけでも腹を満たすことは出来るから作ってくれないかな?」

 と、青年が告げると同時にローパーは勘付く。何故、トーストとコーヒーだけを頼んだのか。そして、既に腰掛けている紅髪の少女の席が夕べ黒鵜が座っていた席と同じだということに。

 「……あんたら何者だ?ここいらでは見ない顔だ。」

 「そう警戒してくれなくていいよ。ここで騒ぎを起こそうとか考えてはいないし。」

 「はよ出さんか。」

 紅髪の少女はぶすくれている。青年はやれやれと作った笑みで少女の様子を見ている。このなんとも言えない空間を裂くようにコツ……コツと、地面を小突く杖の音が響いてくる。

 「ほほぅ、この場に残る思念を読み取る者がいようとはな。」

 「黒鵜さん。」

 「遥か霊峰に我等から避ける者在り。人ならざる者は我等を見守る。まさか、本当にいたとはの。」

 黒鵜を見た青年は訝しみながら訪ねる。自身の事を地上ではそう呼ばれているのかを疑問に思ったのか。

 「地上ではそう伝えられているんだね。なら、話もわかるかな。」

 「いや、俺はわからないのだが。」

 ローパーは話を聞きながらもトーストとを焼き、コーヒーを淹れ、少女の前へと差し出す。おぉ、と言い目を輝かせながら目の前の食事を眺めている。

 「今回は特別だからな?」

 「う、うむ…いただこう。」

 おずおずとマグカップを手に取り、口元へと運ぶ。

 「あちっ。」

 舌を火傷したのかひりひりと腫れている。かなり熱いとわかったのだろう、舌で飲み下すのではなく唇で啜る様にして飲み始める。ローパーも不思議そうに少女を見るが、疑問の対象でもある青年を見やる。

 「で、だ。あんたはここに何をしに来たのかを言ってもらおうじゃないか。」

 「依頼を頼みたい。これからエレボスよりに起こる災厄に関して……。」

 「災厄…?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 グレフィーク港の市場は毎日貿易が行われており、行き交う人々の顔は意気揚々だ。この活き活きとした顔を見るのが煉にとって救いでもあった。市場を通り抜けると、港へ続く土の道と領主の館へ続く石畳の道があり、踏み固められた土の混じる石畳の道を歩いていく。

 「後で掃除しておかないとな…。あ、草も生えているな、これは骨が折れそうだな……。」

 道中歩きながらぼやく煉。領主の館といえど、道中の清廉さを出さなければ品格さが疑われるだろう。抜け目のなさは煉が報酬を顧みない真摯な傭兵兼執事だとも言える。

 「ただいま戻りました。」

 領主の館前、蔦状の鉄格子で囲まれ、門は石煉瓦で設えてあり、至って簡素な仕切りだけである。門を前に煉は一言帰還を告げると、そのまま領主の館の扉に手を掛ける。その次の瞬間。

 「れーん!」

 煉に何者かが凄い勢いで抱き着く。既に想定していたのか、煉は後ろに押しのけられず留まり、抱き着いた者の名を告げる。

 「ただいま戻りました。サーシャお嬢様。」

 「うん、おかえりなさい!」

 第二話を読んで下さりありがとうございます。作者のKANです。初めましての方は初めまして。

 更新期間が大分空いてしまいましたが私は失踪しておりませんので悪しからず。今回は急ぎ目で更新しましたので、前書きを記載しておりません。また細かな詳細はゆっくりと編集していきますのでご了承いただけると幸いです。

 では、第三話でお会いしましょう。ではでは……。

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