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本当にあってしまった怖い話

作者: 焔伽 蒼

それはある冬の昼過ぎの事、坂井は友人である馬場を家に招待していた。




いつものように、くだらないことを駄弁ってはバカ騒ぎする感じで遊んでいた時、ふと二階の自室でテレビを観ていると、何らかの番組で地元が中継されていたのを知った。




馬場は面白がって、「よっしゃ!ちっと原チャリ転がしてくるぜ!俺の勇姿、見てろや!」と、意気揚々に家を出ていきバイクを走らせた。






「よく恥ずかしげもなく、テレビに映ろうだなんて思えるよな……」






馬場の言動は今に始まった事ではない。坂井も諦めて、テレビを見ながら馬場の勇姿を見守ってやろうとした。




ガチャン!




テレビを見出した辺りで、突如大きな音がする。


間違いない。これは一階の玄関が閉まった時の音だ。築30年と割と古い家のせいか、玄関が閉まっただけで大きな音と振動が家を響かせる。






「あれ?もう帰って来たのか。さては急に恥ずかしくなって、諦めて帰って来たんだな」






そう思って、上がってきたら馬場をからかってやろうと心待ちにしたが、いつまでも上がってこない。






「何だ? 合わせる顔がないのか、それともそぉっと上がって来ているのか?」






そこまで考えたが、後者は有り得ない事に気付く。


この家は築30年、階段一段上がるだけでミシミシと唸りを挙げるのだ。


友達の中では、かくれんぼが出来ない家と小学生の頃に言われていた程だ。




音がしないと言うことは、上がって来ていないと言うこと。




坂井はしびれを切らして、いつまでも上がって来ない馬場を探しに一階に降りた。




そこでドルルル!と聞き覚えのある、改造バイクのエンジン音が聞こえてきた。






「あれ……? このバイク音……馬場……だよな?」






馬場は「たっだいまー」と気さくに声を上げながら、玄関を開けて入って来た。




そこで気付く。馬場のバイクは極めてエンジン音がうるさい。


部屋を密室にしても、普通にやかましく聞こえて来るほどだ。




……さっき、玄関の音がした時━━━バイクの音がしなかった。




ただただ玄関の音と振動がしただけだ。






(……気のせい……なのか?)






確かに音も聞こえたし、振動も身体に響いた。


泥棒でも入ったのかと一階を見て回るが、荒らされた様子も何かを取られた訳でもない。




父が帰って来たのかとも考えたが、今は出張中で帰りは明日の早朝だ。


母は別居しているので、実質さっきまで坂井は一人だった。




寒気がした。幽霊を信じている訳ではない。では何だったんだ。そんな心配が心中を曇らせた。






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






その日の夜━━━馬場は見送った後、坂井はいつものように深夜遅くまでテレビを見ていた。




最近なってやっと一般人でも購入しやすい値段になったテレビだ。どっぷりハマってしまっていた。


気付けば時間も2時を回ろうとしていた。




テレビを止めた、さあ寝るかと電気を消そうとした瞬間━━━ミシ……ミシ……と音が鳴り出した。




階段をゆっくり上がって来る音。






「親父が帰って来たのか?にしては早いな。5時頃と聞いていたのに……」






仕事が思ったより早く終わったのだろうと、特に気にすることもなく階段を上がって来るのを待った。




するとミシ……ミシ……ミシミシミシミシ!と、勢いよく上がって下から上がって来る音に変わった。




そこで坂井は異変に気付く。父はいつも何時だろうと、遠慮なく玄関を強く閉める癖がある。


今度はその音がなかったのだ。それじゃあ、今踊り場まで上がって来た足音は誰のモノなのか……扉を隔てた先には誰がいるんだ?




そこで昼間に聞いた玄関の音の事を思い出す。それはまるで誰かが帰って来て、今になって二階へ上がって来たような……恐怖を感じた。




恐る恐る、坂井は声をかけた。






「親父……なのか……!?」






……返事はない。確かに足音は、階段を上がりきった感じだった。




誰かが居る筈なんだ。




再び声をかける。






「なあ親父!返事をしろよ!」






━━━瞬間、ガタガタガタガタ!!、激しく扉が揺れた。手を当てて力一杯押しているような感じだ。




坂井は心底驚き、うぁっ!と悲鳴を漏らし、側にあった木刀を片手にいつでも攻撃出来る耐性と、窓から逃げる準備をしていた。




音は直ぐに鳴りやんだ。あとは扉を開けて入って来るのかと、警戒して待った。


寝たら殺られる、そう思い臨戦耐性を断固として崩すまいと誓った。






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






待つ事三時間半、日も出てきて新聞配達のバイク音が聞こえてきた頃、ガチャン!と玄関の閉まる音がした。






「たでぇまー!」






と親父の声が下からしてきた。






「親父……いま帰って来たのか? だが、まだ扉の向こうには誰かが……」






ミシミシ!と再び下から階段を上がってくる音がする。




ガララとスライド式の扉が開かれた。




そこに居たのは親父だった。親父だけだった。




誰も居なかったのだ。




後に親父に聞いたが、家には誰も居なく、普通に頭でも打ったのかと小馬鹿にされただけだった。




これは実際にあった話━━━焔伽の父の話し━━━今を持っても、あの音が何だったのかは分からないままである。







   完

考察、古くなった木材は収縮等が始まり、音が鳴る現象がある。


また扉や窓の音などは、大概が風によるものである。事実、この時の二階踊り場には小窓があり、そこは常に網戸にして開けていた。




たまたま偶然が重なり、あのような現象が起きたのだろうと焔伽は考える。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のオチが……! そういうことなんですか。
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