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第二章 第1話

プロローグ終了。ここから本編スタートです。

「という訳で、なんというか、(みやび)さん…でしたっけ?

 お気持ちは嬉しいのですが、今はちょっと女性とお付き合いとかそういったことはできないと言いますか…」

「…わかりました!

 裕也さん!私が責任をもって裕也さんを幸せにします!」

「っておーい、お話聞いてますかー」


ここは反政府組織、アノニマス(anonymous)を立ち上げる際に使おうとしているアジト候補の一つ。

元は倉庫として利用されていたようで、ただただ広い空間が広がっているだけであり、明りは壊れた窓から差し込む光だけ。

そんな中、僕と彼女、雅さんは打ち捨てられた椅子に座り場違いな話題に花を咲かせているのである。


「はい、もちろん聞いていますよ!

 きっと裕也さんは私の白馬の王子様なんです!

 運命の赤い糸でつながっているんです!

 いえ、糸なんかではとっても足りません!…そう、ロープ!

 しめ縄のような真っ赤な何かで繋がっているのです!」


少し茶色がかった色素の薄い髪を頭の両側でピョコピョコさせ、これもまた色素の薄い瞳を爛々と輝かせながら僕のことを射抜くように見つめている。

(あ、駄目だ。この子痛い子だ)


「真っ赤な何かですか…

 ちなみに雅さん。あなたはなぜ機関から狙われていたか分かりますか?」

「いえ!わかりません!ていうか機関ってなんですか!

 私、思い出したらムカムカしてきました!

 なんであの人達、私の事襲ってきたんでしょうね!」


なんでだろう、普通に喋ってるだけなのに体力使う。

母さんといい、雅さんといい、最近残念美人に縁が多い気がするな!

うん、全然嬉しくない!


「僕の話聞いて…いえ、いいです。もう一度説明します。

 いいですか?

 今の日本政府では、司法・立法・行政、その他諸々を全て一つの組織が担っています。

 ここまではわかりますね?」

「はい!なんか凄いですね!」


雅さん、リアクション凄いなー。

さっきから怒ったり笑ったり泣きそうになったり、遠くから見ている分には楽しいかもしれない。

黙っていれば10人中9人は振り返りそうなほどの美人なのに。


「…まあ良いでしょう。

 雅さんも使っていると思うのですが、IPCには実は裏の顔がありまして、

 人間が持ちうる様々な感情、特に不満といったマイナスの感情を減らしているんですよ」

「な、なんですとー!!!

 ということは…

 まさか…

 どうなるんですか?」


大丈夫、僕は大人です。

こんな子供を相手に僕が怒るだって?

ハハッ、よしてくれよ。

いや、やっぱり仕方ないじゃない?

雅さんも、ついさっきまでは普通の生活を送っていたのに、急に機関の処理対象となってしまったが故に命の危険に身を晒されたというのだから。

そこに突然僕がやってきて「冷静に話を聞いてくださーい」なんて言えないじゃない?

大丈夫、僕の心は深いのです。マリアナ海溝も真っ青なくらい深いんです。

器なんて、東京ドーム2個分なんだぜ!ビッグな男なんだよ!


「それよりも、私…子供は3人欲しいです!

 言っちゃった!きゃっ!」


「OK、ちょっと黙ろう」


「きゃー!

 裕也さんに怒られちゃいました!

 こんな廃倉庫に私を連れ込んで…一体何をするつもりなんですか!

 ナニをするんですか!

 私はじめてなので、ちゃんと優しくしてくださいね!」


この少女、ノリノリである。

スカートの裾を持ってチラッチラッとかやってるし。

よし、大丈夫だ。僕はクールだ。

もうアレだね。程よく無視しましょう。うん、そうしよう。


「それでですね、今の日本は最高権力組織である「機関」と呼ばれている少数人によって支配されているんです。

 マイナス感情を制御することによって、機関に対する悪感情も制御しているのです。

 しかし、IPCによる感情制御が効きづらい方というのが稀に居るらしいです。

 それが雅さん、貴方なんです」

「ほほー!私、レアなんですね!レアキャラなんですね!色違いですね!」


「すみません、無視します。

 そういったIPCの感情制御に耐性が有る人達を、機関の人間が処理して回っているようです。

 僕はそういった人々を助けて、一緒に機関を倒すべくアノニマス(anonymous)の一員としてスカウトしているのです」

「そうなんですねー!

 私、裕也さんのためにがんばります!」


さらっと無視されたのにダメージゼロだと…!?

あ、なんか距離感つかめてきたかも。

基本人の話聞かないっぽいみたい。

ちょっといたずらしてみようかな。


「雅さん、おっぱい小さいですね」

「はい!

 アンダー65のトップ78です!

 将来性の有るBカップです!」


え、なんかよくわからない単語出てきた。

アンダーって何だ…?何とかカップだけじゃないの??

じゃなくて!聞いてないと思ってたけど聞いてるじゃん!

しかも将来性の有るBカップって何なんだ…。


「裕也さん、もしかして大きい方がお好きですか?

 えっとですね、日本のとある地方の伝承によると、好きな男性に胸を揉まれると大きくなるそうですよ?

 私…裕也さんだったら…きゃっ!言っちゃった!」


真っ赤になった顔を隠しながらモジモジしはじめた。

くっ…!

なまじ可愛い顔してるから、強く言いづらい!



『マスター、彼女のアドレスを教えて頂ければ処分致しますが』


凛とした声が耳に響く。

相変わらずゼロさんの声は綺麗だなー。もうね、「マスター」って呼びかける部分だけ色々なパターンを録音してそれを一晩中聞きながら眠りたい。

無感情に呼ばれる「マスター」

ほんの少しのほほ笑みと共に呼ばれる「マスター」

少しだけ怒ったように呼ばれる「マスター」

あぁ、幸せだ。


「っておーい!妄想してる場合じゃねぇ!そういう物騒なのダメ!なし!」

「…ふむ!裕也さん、無理やりとかそういう感じのはあまり好きじゃないんですね!わかりました!」


『では、ペチャってしましょうか?』


「言い方の問題じゃねぇ!」

「…難しいです!本当は嬉しいのに言葉ではイヤって言っちゃうような、愛の有る無理やり系ってことですか!

 私頑張ります!裕也さんとの愛が有ればできると思います!というかやります!今すぐ!」


「お前じゃねーよ!

 もう何か会話混ざっちゃって訳わかんなくなってるから!

 雅さんちょっと黙って!こっちの世界に帰ってきて!

 …こほん。

 えっとですね、先ほどお話したPKG"ゼロ"がですね、話しかけてきたんですよ。

 そういえばまだ紹介していませんでしたね」

「ぱっけーじをしょーかい??」


まぁ、普通はそういう反応するよね。


「PKGゼロは、僕の親父と母さんが作成した自立型AIなんですよ。

 僕のIPCでジェネレートしているので僕には姿も見えますし声も聞こえるのです」

「脳内嫁…!?」


「違います。無視しますね。

 そのゼロを雅さんにも紹介したいのですが、ちょっと普通と違った手続きが必要なのです。

 わかりやすく言うと、雅さんのIPCにアクセスして一部僕の視覚情報や聴覚情報、触覚情報をリアルタイムシンクしながら…」

「はい!わかりません!」


「ですよねー。雅さん、話の途中から目の焦点合ってませんでしたよ。

 えっとですね…猿でもわかるように噛み砕いて言うと、僕が雅さんの触れちゃいけないところまで侵入します」

「裕也さん…私、痛くても我慢します!」


超絶勘違いしていらっしゃる。

まいっか。なんか面倒になってきちゃった。ハッハー。


「大丈夫ですよ。痛くありません」

「なんと!テクニシャンですか!」


「うがああああああああああああ」


ちくしょう!なんだこの精神攻撃は!

さっきからゴリゴリHP削られていくよ!

喋る毒の沼だよ!脳内スピーカーで「ガッガッ」ってなってるよ!

もうHPゲージ真っ赤だよ!


「失礼、取り乱しました。

 ご安心ください。別にえっちなことはしませんよ。

 じゃあいきますね。

 ゼロ、アドレスは「0B:5C:C0:A1:D5:57:FF」

 パスワードは1024bit。僕のリソースを使用許可」

「かしこまりました、マスター」


 ---対象 雅 アクセスルート確保・・・クリア。

 ---対象 雅 パスワード解析開始・・・クリア。

 ---対象 雅 感覚情報リアルタイムシンクスタート・・・クリア。


ゼロの凛とした声が、脳内に響き渡る。

僕の処理能力をリソースとして使用しているため、後頭部に鈍い痛みが広がる。


「マスター、完了しました」


「ふぇ?

 ぬほー!なんか出てきた!白い人!

 なんなんですかあなた!すっごい美人!

 お人形さんみたい!」

「彼女がゼロです、仲良くしてあげてください」


「雅さん、ゼロと申します。よろしくお願いします」


「ひょー!喋った!っていうか声綺麗!

 肌白い!さわっていいですか!?っていうかもう触ってますね!ごめんなさい!

 うわー!すべすべ!つるつる!

 ペロペロしていいですか!?いいですよね!?


「マスター、やっぱりプチッってしていいですか?」


「はいはい、二人共落ち着いて。

 雅さん、おさわり禁止!というかおすわり!

 ゼロ!威嚇しない!フシャーってしない!」


なんというカオス。

彼女達二人を会わせたのは間違っていたのかもしれない。

疲れたよ…もう疲れたよ…。






それから暴走する雅さんが思う存分ゼロをワシャワシャし終わるまで2時間かかった。

雅さん、とっても満足そうな顔。お肌ツヤツヤだね!

ゼロ、親戚の子供に弄ばれた猫みたいにぐったりしてる。なんかごめん…。



「二人共仲良くなれたようで何よりです」


ゼロが泣きそうな顔でこちらを見てくる。ごめんよゼロ、君は生け贄にささげられたんだ…。

生け贄を欲する暴走少女(雅さん)を鎮めるにはこれしかたかったんだっ…!


「ところで、何度もお伝えしていますが僕はこの場所で反政府組織アノニマス(anonymous)を立ち上げたいと思います。

 これからの細かい活動方針はおいおい決めていくとして、まずは根本的な目標から確認します。

 第一目標は、機関を壊すこと。

 第二目標は、IPCによる国民への洗脳を解除すること。

 第三目標は、IPCによる洗脳に耐性がある人達を機関から助けつつ、アノニマスに加わってもらうこと。


 第三目標いついては、雅さんが一番身にしみて体験していると思いますので説明は要らないと思います。

 第二目標については、正直どうしたらいいのか僕にもわかりません。

 第一目標については、どうやら"ルート"と呼ばれている人物が居るらしく、ひとまずはそのルートと呼ばれる代表人物の打倒が目標になると思います。


 そこで、雅さん」


「はひっ!」


こいつ話聞いてなかったな…。


「えっとですね…

 僕らの仲間になって悪の親玉を倒しましょう!」

「はい!わかりました!」


軽っ!えっ!ちゃんと考えてる!?


「…あの、お気持ちは嬉しいのですが、反政府組織っていうのは当然危険もありますし、雅さんが襲われた時のような奴らと戦うことになる訳でですね?

 僕としても雅さんのような可愛い女の子を危険に晒したくないという気持ちも有るわけでして…」

「大丈夫です!

 私、裕也さんに助けてもらってなかったらきっともう生きてませんでした!


 あの時、裕也さんに助けてもらった時、私学校帰りだったんです。

 私の学校、裕也さんと同じ国立第二高校です。

 実は私の方が先輩なんですよ?

 さっき洗脳って聞いて、私なんか色々わかっちゃいました。


 なんて言ったらいいのかわかんないんですけど、私まわりに馴染めなかったんですよね。

 そうなんです、私、裕也さんと同じように小さな頃からまわりに馴染めなくて、

 私もボッチだったんです!」


「ぼぼぼぼぼボッチちゃうわ!」


「いいんです!ボッチでも!

 今では、私は裕也さんに出会えました。

 だから、私も、裕也さんも、もうボッチじゃありません。

 ですので、私は裕也さんについていきます!」

「雅さん…」


ひとりぼっち。

僕には、奏が居てくれた。

何が有ってもお姉ちゃんだと、胸を張って言ってくれた奏が。

でも、雅さんには…?

誰も居なかったんだろうか。

友達が居ないと語るその表情は、口調はあくまでも明るさを保っているが、心なしか悲しそうに見えてしまうのは気のせいだろうか。


「あ、ちなみに子供は3人がいいです!」

「…」

「上から女の子、男の子、男の子がいいです!」


あ、うん。気のせいだ。

お願いだから、ちょっとシンミリしちゃったさっきの時間返して…!


「マスター、ペチャってしても…」

「ゼロ、今は聞かないで…。思わずGOって言っちゃいそう…。」





こうして、反政府組織アノニマス(anonymous)の立ち上げと、記念すべき初のメンバーを迎えたのであった。










感想、ブックマークありがとうございます!

とっても嬉しいです。ひゃっほーい!ってなってます。小躍りしてます。

更新がんばります!

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