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魔法屋さん

       「魔 法 屋」


 こんな風に大きく看板に書かれた店の前に、勇者アカサタは立っていました。

 そろそろ剣や斧などの物理攻撃だけでなく、魔法を使った攻撃も覚えたいと考えたからです。


 この世界では、魔法は自動的に覚えるわけではなく、ちゃんと勉強をして習得しなければなりません。

 たとえば、魔法学校に通って、基本から習うとか。それが嫌な人は、自分で本を買って学ぶとか。何事も、そう簡単に身につけられたりはしないのです。能力を上げる為には、一生懸命努力をしないと。


「ちわ~!魔法が欲しいんっすけど」

 そう言いながら、ズカズカと店の中に入っていくアカサタ。

「はいはい。どのようなモノになさいましょうか?当店では、属性を問わず、いろいろと取り揃えております」

 魔法屋さんの店員さんは、どのようなお客さんに対しても、このように丁寧な対応をしてくれます。

「そうっすね。簡単に覚えられて、威力が絶大なヤツがいいっすね」

「お客さま、それは難しいですね。簡単に覚えられる魔法は威力が小さくて、威力が大きな魔法というのは覚えるのが大変なものですから」

「そうなんっすか?じゃあ、とりあえず、この炎の魔法で!」

「炎系の魔法でございますね。お客さま、魔法の扱いは初めてでいらっしゃいますよね?でしたら、こちらの一番簡単なモノでいかがでしょう?」

「じゃあ、それで」

「金貨1枚になります」

 ちなみに、金貨1枚というのは、勇者アカサタが元いた世界の価値で10万円前後。銀貨1枚が1万円。銅貨1枚が100円といったところです。

「結構するんっすね」

「まあ、魔法というのは、こういうモノですから。誰もが扱えるものでもなければ、貴重なものでもあるのです。当店で扱っている品の中で最高額の商品は、金貨1000枚のお値段となっております」

「ヒェ~!1000枚!それに比べたら、安いもんか。とりあえず、それでいいっす」

「はい。お買い上げ、ありがとうございます。今後とも、ごひいきに」


 こうして、金貨1枚を支払って、一番簡単な炎系の魔法を手に入れた勇者アカサタでありました。が、ちゃんと習得できるのでしょうか?


         *


 街の端っこにある空き地で、魔法の特訓をしているアカサタの姿が見えます。

「えい!とりゃ!えいや!」

 気合いでどうにかしようとしているみたいですが、指の先からは、ちっとも炎が出てきません。

「っかしいな~?どうなってやがる?ちゃんと、この本に書いてある通りにやってるのに…」

 そこに、いつものように女勇者ハマヤラがやって来ます。

「何やってんのよ?アカサタ?」

「いやね、魔法を覚えようかと思って。炎の魔法。オレも、ちったあ勇者らしくしないといけねぇな~なんて思って。それで、大枚をはたいて、これを買ってきたわけよ」

「どれどれ、ちょっと貸してみなさいよ」

 そう言って、ハマヤラは魔法の本を取り上げます。

「フムフム。あ、なるほど。こうするわけね。ホイッ!」と、女勇者ハマヤラが呪文を唱えると、途端に指先から真っ赤な炎が飛び出しました。

「スゲエ!どうやったんだよ!?」

「いや、この本に書いてある通りにやってみただけよ。別に、そんなに難しくないでしょ?」

「いやいやいや、スッゲエ難しいだろう!これ!お前、才能あるな~」

「あんたの頭が悪すぎるだけなんじゃないの?こういうのは、頭のよさも必要なのよ。賢さ。わかる?か・し・こ・さ!」

「クッソ~!オレ、こういうの苦手なんだよな。学校の勉強もできなかったし…」

「ま、がんばんなさいよ。陰ながら応援しててあげるから」

 そう言って、女勇者ハマヤラは去って行きました。


 その後、何日も特訓を続けたのですが、勇者アカサタが出せるようになったのは、マッチ1本でつけた炎くらいのものでした。こんなことなら、マッチかライターでも買ってきた方が早そうですね。

 でも、その努力は立派なものです。がんばれアカサタ!負けるなアカサタ!立派な勇者になって、悪の魔王を倒すその日まで!

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