海賊団との戦闘
ボッ~~~~~~~~~~~~~という汽笛の音。それが、戦闘の合図でした。
「合図が来たわ!さあ、行くわよ!!」
そう叫ぶと、扉を開け放って、船内の客室から飛び出していくスカーレット・バーニング・ルビー。もちろん、勇者アカサタやゲイル3兄弟、パールホワイト・オイスターも、すぐ後に続いていきます。
他の客室の扉も、バタンバタンと次々と開いていき、戦士や剣士、魔術師たちが飛び出してきます。
急ぎつつも、折り重ならないように注意しながら、船内の狭い階段を登っていき、船の甲板へと飛び出すアカサタたち。
そこでは、早くも、海賊たちとの最初の戦闘が始まっていました。
「騙しやがったな~~~!!」と叫ぶ海賊の声が聞こえてきます。
そんなセリフはお構いなしに斬りかかっていくアルファベ国の兵士。見た目は、商人の格好をしていますが、その衣装の下には軽めの鎧を装備しています。
船上での戦いです。万が一、海に落ちた時のために、あまり重量のある鎧は向きません。しかも、船と船の間を渡した板の上や、狭い船内での戦闘も予想されます。素早い動きが可能な軽装備の方が何かと有利でもあります。
事実、海上での戦闘に慣れた海賊たちも、そのほとんどが軽めの服装です。鎧など着用せず、急所のみをピンポイントで守る胸当てなどしか使用していない者ばかりでした。
ボチャン!ボチャン!と、次から次へと人が海へと落ちていきます。その多くは、海賊たちの方でした。
ただ、最初は不意を突かれた海賊団でしたが、さすがに数分も経つと、皆、状況が飲み込めてきたようです。態勢を整え、気持ちを落ち着かせると、戦況は互角に近づいていきます。
「そろそろ、例の技、行くわよ!」
スカーレット・バーニング・ルビーは、そう叫ぶと、海賊たちが海賊船に積み込んだ荷物に向って、炎の攻撃魔法を放ちました。
炎は、物の見事に目標に向って着弾!!その直後、ドガ~~~~ン!!という爆音と共に、荷物は大爆発を起こします。
その勢いで、船体は大きく揺れ、船と船の間に渡してあった板は外れ落ちてしまいました。もちろん、その上を渡ろうとしていた者たちも一緒に海上に向って一直線!次々と、落下していきます。
「オットットット…」と、勇者アカサタも、爆発の衝撃を受けて揺れた船の上で、上手くバランスを取って足を踏ん張ります。
スカーレット・バーニング・ルビーの放った爆発攻撃をキッカケにして、国家直属の魔術師たちも炎の魔法を繰り出します。
ヒュンヒュンヒュンと、いくつもの炎の矢が軌跡を描きながら、5隻の海賊船目がけて飛んでいきます。
ドゴ~~~ン!!ドガ~~~ン!!ドッカ~~~~~ン!!
あちこちで起こる爆音。さらには、海賊船の甲板上から上がる火の手。
海賊たちは、消火作業にもあたらねばならず、戦闘に集中できません。その隙を突いて、無数の矢がアルファベ国海軍兵士たちの弓から放たれます。
軽装備の海賊たちに突き刺さる矢の数々。たまらず、海賊船は急発進し、5つの方向へと分かれて進み始めました。
「アネゴ~!逃げられちまいますぜ!!」
そう叫ぶ勇者アカサタに対して、スカーレット・バーニング・ルビーは冷静に言い放ちます。
「大丈夫よ!ここで逃がしたりはしない」
その言葉の通りでした。
国家直属の魔術師の中には、風の魔法の使い手が何人もいます。彼らの発動した“空中浮遊の術”によって、兵士たちは瞬く間に5つの海賊船へと分かれて運ばれていきます。
勇者アカサタも、その内の1つへと飛ばされていきました。
「スゲエ!これは便利だな!!オレの使う“フワリン”と同じ効果か。けど、威力は桁違いだぜ!!」
けれども、油断している暇はありません。
勇者アカサタが降り立った海賊船に、1人の強力な使い手が現われたのです。
「やってくれたわね…」
悔しそうに、そう口を開いた人物の方向に目をやるアカサタ。
すると、それは1人の女海賊でした。