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ゲイル3兄弟、救出作戦

 翌日、目が覚めた勇者アカサタは、さっそく街へ情報収集へと出かけました。

 お酒の方は、完全に抜けています。


 街では、昨日の話題で持ち切りです。

「どうやら、あの3バカトリオがつかまったらしいわよ」

「3バカ?ああ、あのゲイル3兄弟ね。お寺の厳しい修行から逃げ出して、この街からいなくなったって聞いてたけど」

「それが、なぜだか知らないけど、酒場で大騒ぎしていたらしいのよ。そこを通報されて、らえられちゃったって話よ」

「まったくバカな連中ね。ヒョコヒョコ戻ってきたりして」

 ハハァ~、そういうわけだったのか。だから、あの3人は、この街に寄りたくなかったのか。それを知ってりゃ、また別の手段も考えたのに。ちょっと悪いコトをしちまったかな?と、勇者アカサタは思いました。

 

 それから、ゲイル3兄弟が捕らえられているというお寺の場所を聞き出すと、さっそく、そのお寺に向ってを進め始めました。


 実は、ゲイル3兄弟は、この宗教都市マービルの出身でした。

 厳しい修行の末、特殊な能力を身につけたのですが、ここでの退屈な修業の日々に飽きて、外の世界へと飛び出していったのです。

 けれども、世間知らずの3人のこと。上手うまく、世の中を渡っていけはしませんでした。そうして、盗賊へと身を落とし、今回、アカサタと出会ったというわけです。


         *


 “公平寺”と大きく書かれた木の看板が、門にかかげられています。

「たのもぅ~!!」と、巨大なお寺の扉の前で、勇者アカサタは叫びました。

 中から坊主が1人、飛び出してきます。

「なんだ?なんだ~?何の用だ?」

 坊主は、そう尋ねてきます。

「実は、このお寺に入門させていただきたいと思いまして」

 そう、勇者アカサタは嘘をつきました。素直に事情を話したところで、スンナリ中に入れてもらえるとは限りません。そこで、一計を案じたわけです。

「ほう。入門希望者だったか。しかし、この寺での修業は厳しいぞ。お前さんに耐えられるかな?」

「大丈夫です。わけあって、それなりの修練を積んで参りました。ちょっとやそっとでは、へこたれません」

 アカサタのその言葉は、半分は本当でした。確かに、数多くの魔物と戦って修練を積んできたとは言えます。

 けれども、残りの半分…つまり、“ちょっとやそっとでは、へこたれない”という部分は大嘘です。我慢がまんするのが大の苦手で、飽きっぽいアカサタのことです。つらい修業など、すぐに逃げ出してしまうに決まっています。


 坊主はジロジロと、アカサタの姿を眺めています。頭のてっぺんから、足の先まで舐め回すように観察してから、こう言いました。

「フム。ま、いいだろう。ちょっと上の者に話をしてこよう。そこで待っていなさい」


 それから、しばらくの間があってから、先ほどの坊主が、もう1人の坊主を連れてやって来ました。どうやら、この人の方が格が高いようです。

「君かね?我が寺に入門したというものは?」

「はい!そうです!ホウ・コリと申します!」と、アカサタは元気に堂々と偽名を語りました。ただ、チラッとホコリが視界に入ったので、そう言っただけです。深い意味などありません。

「フ~ム。けれども、我が寺の修行は厳しいぞ。ついてこられるかな?」

「はい!その話は、さっきも聞きました!大丈夫です!問題ありません!」

「そうか。だが、いきなり門下にするというのも難しい。とりあえず、数日間、この寺で過ごしてみなさい。それで、基本的な修業を体験してみるがよい。それに耐えられたら、また考えよう。まずは、それからだ」

「わかりました!よろしくお願いします!」

 こうして、勇者アカサタは、見事に公平寺へと潜入することに成功したのでした。


         *


 その夜、勇者アカサタは、さっそくゲイル3兄弟の救出作戦を開始しました。


 寺の修行僧に混じって修業の体験をさせてもらうことを許されたアカサタは、昼間の内に情報収集を済ませておきました。いつもの調子で、手八丁口八丁で会話を進め、いろいろと聞き出したのです。

「ここでは、日々、厳しい修行が繰り返されているそうですね」と、アカサタが尋ねると、修行僧たちが口々に答えました。

「それは、そうよ」

「明日から、お前にも体験してもらうぞ」

「お前さんに耐えられるかな?」

 フ~ムと考えたフリをしてから、アカサタはさらに尋ねました。

「では、その厳しい修行から逃げ出した者は、どうなるのです?」

 それには、このようにいくつかの答が返ってきます。

「それは、逃げ出した者の勝手。放っておかれるだけ」

「ただし、それが害になると判断された場合は、話が別」

「この寺で身につけた能力を悪用されては困るからな。そうなる前に、捕らえて連れ戻すのよ」

 ほほう~と感心したようにアカサタは、さらに質問を続けました。

「能力?それは特殊な能力なのですか?」

 それに対しては、こう。

「特殊も特殊。自らの肉体を気の力によって変化させ、様々な特性を得る。それは、使い方によっては非常に危険な武器ともなる。ゆえに、能力だけではなく、精神の方も鍛えねばならぬというわけよ」

 勇者アカサタの質問は続きます。

「では、その能力だけ身につけて、精神の方は未熟な者もいたのですか?」

「ああ、最近も、そんなやからが3人ほどな。けれども、そやつらも無事に捕まった。今は、地下の懲罰房ちょうばつぼうに入れられておる。今後の処遇は、これから決めるらしい」

 と、こんな感じ。

 そうやって、懲罰房の位置まで聞き出したというわけです。

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