兄弟の契り
戦闘が終わると、辺りは惨たんたるありさまでした。
あちこちに死体が転がっており、負傷者も数多くいます。
護衛団のメンバーでも回復魔法が使える者は、傷の深い者から順番に手当てをしていきます。
盗賊の生き残りは、全員、手を後ろに縄で縛られ、地面に並べられました。もちろん、3人の兄弟アゴール・ハゲール・デブールも生き残っています。
目が覚めたアゴールが言いました。
「兄貴!!」
気絶から復帰したハゲールも続きます。
「ぜひとも我らの兄貴になってくだせえ!!」
顔面に直接マッチ・ヘ・ボンバーを食らった火傷を回復してもらったデブールも、懇願します。
「オレからも、お願いします!どうか、オレたち兄弟に仲間入りし、兄貴になってください」
それを聞いて、勇者アカサタは困惑してしまいました。
「え~!やだよ!オレ、そういうの苦手だし」
アカサタは戦闘が終わると、丁寧な口調はやめて、いつも通りの乱暴な喋り方に戻っていました。
けれども、ゲイル3兄弟が散々、頭を地面にこすりつけ、泣いたり喚いたりして頼むので、最後には勇者アカサタも根負けしてしまいました。
どうやら、3人は嘘をついている様子はありません。アカサタの“真実を見極める目”を持ってしても、そこに嘘や偽りは感じられなかったのです。
それに、これだけ強力な能力を持った3人です。これから、旅を続けるのに何かと便利でしょう。もしかしたら、魔王討伐にも協力してくれるかも知れませんしね。
「わかった!師匠にでも兄貴にでもなってやるよ。その代わり、今日限り盗賊家業はやめにするんだぞ。それができないんだったら、約束はできん」
アゴールは縄で縛られたまま、飛び上がって喜びました。
「やったぜ!これで、今日よりゲイル4兄弟だな。ガハハハハ!」
「誰がゲイだ!」と、勇者アカサタ。
「ゲイじゃなくてゲイルですよ、兄貴!!」と、デブールが訂正します。
なんと、こうして勇者アカサタは新たな仲間を得たのでした。それも、強力無比な能力を持った3人の荒くれどもを!!