ゲイル3兄弟との対決
さて、盗賊であるアゴール・ハゲール・デブールのゲイル3兄弟と対決するコトになった勇者アカサタですが、さすがに3人同時に相手にするのは分が悪すぎます。
そこで、アカサタはこんな風に持ちかけました。
「なんと!ゲイル3兄弟とは、あのご高名な3人の方々のお名前でしたか!すっかり忘れておりました!けれども、思い出しました。たった今、思い出しました!これはこれは大変失礼いたしました!!」
その言葉を聞いて、3人ともちょっぴり気をよくします。
「ほらな、やっぱりオレたちゃ有名人よ!」
「そりゃ、そうさ。天下広しと言えども、このゲイル3兄弟の名を知らぬ者などいるはずもない」
「小僧!その名を聞いて、降参する気になったか?」
アカサタは3人のセリフを聞いて、心の中でニヤリとしましたが、表情には全く出しません。代わりに、こう提案しました。
「はい。もちろん、降参いたします。けれども、ご高名な3人の方々の実力、1度この目にしておきたく存じます。どうか、この下賤な輩に稽古をつけてはいただけませんか?」
それを聞いて、3人はますます気をよくしていきます。
「何?稽古とな?」
「フ~ム…そこまで言うなら、つけてやらんこともないが」
「なかなか見どころのありそうな若者だ。いいんじゃないか?」
もちろん、この時、周りでは他の盗賊と護衛団のメンバーたちが戦っています。上空を矢が飛びかい、あちこちで、剣と剣がぶつかり合っています。どちらかといえば、護衛団の方が有利でしょうか?
勇者アカサタは、さらなる提案を持ちかけます。
「それでは、3人同時というわけにもいきません。実力不足の私めのために、1人ずつお相手を願います」
そう言って、サッと剣を抜きました。
3人は考える暇もなく剣を抜いたアカサタを目の前にして、自然の流れて1人ずつ相手をすることになりました。
「よかろう!では、まずオレからだ!」
そう言って、アゴの長く伸びたアゴールが剣を抜いて戦いを挑みます。
この時、勇者アカサタは、「引っかかったな!」と心の中で叫んでいました。3人同時に相手となると、さすがのアカサタでも骨が折れます。もしかしたら、負けてしまうかも知れません。けれども、1人ずつが相手ならば、お話は別。
アカサタは考える隙も与えず、一気かせいに攻め立てます。
キン!キン!キン!と辺りに響き渡る剣と剣がぶつかり合う音。
「グッ!コイツ、思ったより…やるな!」
アゴールがそう呟いた時には、もう遅く。アカサタの剣技により、アゴールの剣は地面へと叩き落とされていました。
「ご教授、どうもありがとうございました。では、次の先生、よろしくお願いします」
そう言われては、アゴールも素直に引き下がるしかありません。
続けて出てきたのは、頭のツルツルなハゲール。
今度は槍の使い手です。アカサタは、剣を手にしたまま。
「どれどれ、小僧の実力がどれほどのものか試してやろう」
そう言いながら、ハゲールはブンブンと槍を振り回し、物凄い勢いで突きを繰り出しました。
勇者アカサタは、初めて戦う相手を苦手としていました。相手の弱点を見抜く“真実を見極める目”が通用しないからです。
けれども、これまで何度もゴブリンやオーク相手に戦闘を重ねてきました。剣や槍や斧を扱う敵も大勢いました。それらは、魔物とはいえ、同じ人型をしています。そういった経験が、今、勇者アカサタに力を与えてくれていたのです。
ハゲールの槍術を瞬時に見極めると、一瞬にして敵の懐へと入り込むアカサタ。そうして、剣の柄の後ろの部分で、思いっきりハゲールの腹を殴打しました。
「グヘッ…」と声を漏らし、ヨロヨロと倒れ込むハゲール。
「ご指導、ありがとうございました。では、次の先生」
アカサタにそう言われては、ハゲールも後ろに下がるしかありません。
その言葉を聞いて、巨体が揺れ動きます。
「なんだい。なんだい。2人とも、だらしがないね~」
そう言いながら、最後に登場してきたのは、太りに太ったデブールでありました。その手には巨大な盾を手にしています。他には何も武器を持っていません。
「では、行くぞ!」
そう叫ぶと、デブールは、いきなり突進してきました。巨大な盾を前面に押し出した突進攻撃!まるでイノシシ!猪突猛進とは、まさにこの時のためにあるような言葉!!
勇者アカサタは、すんでのところでその攻撃を右にかわし、どうにか事なきを得ました。けれども、デブールは、突進を終えるとクルリとこちらに向き直り、再び猛スピードで突っ込んできます。今度は、それを左にかわすアカサタ。
何度か、そのような行動を繰り返し、上手くタイミングを掴みました。そうして、サッと真横に避けると、突進していくデブールの後を追いかけます。そのまま、突進を終えたデブールの背中目がけてジャンピングキック!!
ズザ~ッと、前のめりにつんのめって倒れ込む巨体。これにより、勇者アカサタの勝利が決まりました。
ちょうど他の戦闘も終わり、護衛団が残りの盗賊たちを倒し終わった瞬間でした。
「3人の先生方、ご指導どうもありがとうございました」
そう言ってペコリと頭を下げると、クルリと後ろ向いて去って行こうとするアカサタ。
けれども、それで終わりではありませんでした。本当の戦いは、これから始まったのです。




