装備を整えたアカサタ
こうして、しばらくの間、他の冒険者のおこぼれにあがりながら暮らしていた勇者アカサタですが…
そうこうしている内に、アカサタの方も戦闘で経験を積み、ちょっとずつですが能力の方も上がってきました。お金の方も段々と貯まってきて、新しい武器や防具を買い揃えることもできました。
もはや、コボルト1匹に負けたりはしません!
コボルトよりも、もうちょっと強い“ゴブリン”という人型のモンスターがいるのですが、その程度なら朝飯前で相手をしてしまいます。集団でかかってきても、ちょちょいのちょいで倒せるようになっていました。
もっとも、お昼過ぎまで寝ていて、食事も1日3度は必ず食べるアカサタが朝食の前に戦闘を行うなんてことは、ありえない事態なのですが…
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街の中を、大股で自信満々に歩き回るアカサタの姿が見えてきます。
「ガハハハ!ガハハハ!ちょろいちょろい!やっぱり、オレ様は天才だね。ちょっと努力しただけで、この結果よ!」
などと、調子に乗っています。自信過剰が、アカサタの悪いところですね。でも、確かにこの短期間に、これだけの成長は大したものです。ちょっとくらい調子に乗らせてあげましょう。
勇者アカサタの名は、街でもちょっとした評判になっていました。
もっとも、冒険者としての腕が認められたとか、人柄のよさで尊敬を集めているとか、そういうのではありません。どちらかといえば、その逆です。
「なんだかマヌケな奴がいるらしいぞ」
「実力もないのに、すぐに調子に乗る駄目人間」
「でも、金払いはいいのよね。ちょっとおだてただけで、すぐに商品を買ってくれる」
「悪い奴じゃないんだよ。ちょっと変な奴だけど」
ま、こんな感じです。
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街には、銀行があって、冒険の途中で手に入れた物やお金を預けておくことができます。
アイテムの方は、預けた銀行でしか引き出せません。けれども、お金の方は、別の街や村に存在する支店でも引き出せるようになっています。
勇者アカサタは、金づかいの荒い方でしたので、銀行の預金残高は常に0に近い状態でした。せいぜい、銀貨が数枚程度。毎日、食事をして宿屋に泊まると、10日も経たずになくなってしまうでしょう。
まったく、困ったものです。先のコトを考えない人ですね。大きなケガをしたり、病気になって何日も寝込んだりしたら、どうするのでしょうか?
もっとも、そんな風にアカサタに尋ねたとしても、こう答えるに決まっています。
「そんなもん、宿屋で一晩寝れば、回復しちまうだろう!だって、ここはそういう世界なんだろう?宿屋様様!万々歳だぜ!」
ま、実際、その通りなんですけどね。