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仲間と協力する勇者アカサタ

 さて、勇者アカサタは、この世界でのルールがちょっとだけわかってきました。

 正直、人と協力するなんて大嫌いでしたが、背に腹は代えられません。働かないと、お金が入ってこないのです。お金がないと、食べ物を買うことも、宿屋に泊まることもできません。

 アカサタは、一生懸命マジメに働くだなんて絶対に嫌だったので、外でモンスターを倒して、お金を稼ぐことに決めました。

「オレは絶対にマジメに働いたりせんぞ!!絶対にだ!!単純労働なんて、クソ食らえ!!」

 と、この調子です。


 よく見ると、周りにはアカサタと同じような冒険者が何人もいます。注意深く観察すれば、大勢の街の人に混じって、それらしき人物を発見することができるでしょう。

 大きな斧を持っていたり、長くて鋭い槍を持ち歩いていたり、そもそも重そうな鎧を着ていたりもするので、一目瞭然です。見た目は、一般人と変わらないような冒険者でも、雰囲気でわかります。その身から発しているオーラが全然違うのです。

「いかにも、人を殺しそうな目をしてやがるな。あ!あっちの奴なんて、かなり鍛えてやがるぞ。装備は薄くて、肌は露出してるが、筋肉モリモリじゃねーか」

 素人同然のアカサタでも、ちょっと見ただけで、こういったコトがわかるくらいなのでした。


         *


 そうして、アカサタは、ある冒険者のグループに入れてもらいました。


 駆け出し冒険者のアカサタは、ランサーと呼ばれる槍の使い手の側に寄っては、こんな風に語りかけます。

「ヘッヘッヘ…ダンナ~、いい槍してますな~!股間の槍のコトじゃございませんぜ~」

 弓の使い手であるアーチャーに対しては、こんな感じ。女性のアーチャーです。

「オッ!そちらのアネゴは、弓の名手ですか?ちょっと腕前を見せてくださいよ~!腕だけでなく、見た目も素晴らしい!これは、男どもが放っておかないでしょう」

 魔法使いの老人には、こう。

「オヤオヤ、大層な風格をお持ちですね。さぞかし偉大な魔術師であらせられるのでしょう」


 こんな感じで、ヘコヘコとおべっかを使いまくり。あからさまなお世辞なのですが、それでも言われた方は悪い気はしません。こんなに口が上手いなら、普通に就職して、営業マンにでもなればよかったんじゃないかな~?


         *


 それから、冒険者のパーティーは、外にモンスター狩りへと出かけました。

「クッソ!なんで、このオレ様が、こんなクソ野郎どもにペコペコヘコヘコしないといけねぇんだよ!今に見てやがれ!必ず、テメエらを見下すレベルまで上がってみせるからな!」

 これは、アカサタの心の声。もちろん、声にも表情にも出しません。こういう所は、シッカリしているのです。


 アカサタは、戦闘では全く役に立ちませんでしたから、他の人たちが倒したモンスターから、お金やアイテムを回収するのが主な役割でした。

 そうして、時々、王様から頂いた木の棒でポコリと敵を殴るのです。即座にサッと身をひるがえし、他のメンバーの陰に隠れます。それでも、敵からダメージを受けることも、たびたびありました。

 そんな時には、回復役の僧侶が、天に祈ってアカサタの傷を回復してくれます。どうやら、この世界にも神様がいて、その力を使って受けた傷を癒してくれるらしいのです。不思議な話ですけど、仕方がありません。それが、この世界での現実なのですから。

「ありがてえ!ありがてえ!僧侶のダンナ!センキューベリーマッチですぜ!」

 そうやって、回復してもらうたびに、アカサタはお礼を言います。正直、回復役の僧侶は迷惑そうにしています。

「戦闘中に、うるせぇな…」みたいな顔をしていますが、アカサタは全然気にしません。


 そんな態度が段々と気に入られ、アカサタは冒険者たちの中でも、ムードメーカーとして重宝されるようになっていきました。

「アイツ、戦闘には全然役に立たないくせに、妙にテンション高いんだよな~」

「そうそう。あの人がパーティーにいる時は、なんだか明るく元気な気分になってくるのよね。つまらないモンスターとの戦闘も、楽しめるようになるっていうか」

「まあ、少々騒がしいところもあるが、居て損はないという感じかな」

 こんな感じで、評判は上々です。

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