ノンビリした暮らし
こうして、勇者アカサタは元の暮らしへと戻りました。
この間、2年近くが経過しています。砂漠越えは、1度往復するだけでも40日以上かかります。街での宿泊期間などを考えると、2ヶ月近くは必要です。それを何度も何度も繰り返し、気がついたら、こんなにも時間が過ぎてしまっていたのでした。
元々、この世界へ送り込まれて来る前まで、勇者アカサタはニートだったのです。働くことなど大嫌いでした。
アカサタ自身も、そのことに気がつきました。
「おかしい。絶対におかしい。こんなはずではなかったのに…」
最初は、“世界を救うため”とかなんとか神の野郎に言われてやって来たが、結局、マジメに働いてるんじゃないか?これは?騙されたか…
そんな風に考えました。
何度も砂漠越えを成功させ、傭兵団のリーダーにまでなった勇者アカサタでありましたが、銀行の貯金残高は、ほぼ0のままでした。
というのも、お金が入ったら入ったで、すぐに使ってしまうからです。もちろん、酒場などで無駄にばらまいてしまうこともありましたが、それだけではありません。大金が入ると、そのまま新しい武器や防具の購入に使ってしまうのです。
軍事都市グロシュタットでは、次から次へと新製品が発売されます。珍しい武器や防具も並んでいます。伝説の剣だとか、炎や冷気を防いでくれるマントだとか、これまでよりも軽く防御力のある鎧だとか。勇者アカサタは、よく考えもせず、店員さんにすすめられるまま、それらの商品を購入してしまっていたのです。
もちろん、それにより戦闘はグッと楽になりました。ただし、お金は全然溜まらないまま。
お金を稼ぐ→高い武器や防具を購入→強くなる→またお金を稼ぐ→高い武器や防具を購入。ひたすら、この繰り返し。
勇者アカサタは、宿屋のベッドの上で呟きます。
「アレだけの金があれば、この世界のどこかに家1軒くらいは軽く買えてたんじゃないか?」
相変わらず宿暮らしのアカサタ。以前よりかは、上等な宿屋に泊まれるようになったとはいえ、いまだに自分の家どころか、自分の部屋を借りることすらできていません。
この世界にも、アパートやマンションに近いものは存在しましたが、旅暮らしの多いアカサタには合いません。その日その日を、行く先々の宿屋で過ごした方が楽なのです。家族でもいれば話は別でしょうが、独り身のアカサタには、その必要もありません。
「ええい!めんどくせえ!しばらく遊んで暮らすか!」
考えるのを放棄すると、その後、しばらくノンビリとして暮らす勇者アカサタなのでありました。




