荒稼ぎする勇者アカサタ
今回の旅で味をしめた勇者アカサタは、その後も、商人の護衛をして暮らします。何度も何度も、アルファベとグロシュタットの間を往復し、荒稼ぎをしました。
それにも慣れてくると、今度は砂漠専門の渡り屋となり、砂漠の街サンドローズと軍事都市グロシュタットの間を護衛して往復し、さらなる大金を稼ぎます。
商人は、いくらでもいます。「ここぞ!」とばかりに世界中からワラワラと商人が湧いてきて、砂漠を渡り、商品の流通をはかります。まるでゴキブリみたいに。
勇者アカサタは、例の槍も手に入れました。あのグロシュタットの大きな武器屋で見かけた“稲妻の槍”です。
武器屋の店員さんも目をまん丸にして驚いていました。
「まさか、あの時のお客様が、本当にこの槍をご購入なさるとは!!」
そう言って、床にひれ伏してしまいました。
それを見たアカサタは、こんな風に声をかけます。
「よいよい。楽にせい。楽にせい。余は満足じゃ。ホッホッホ」と、どこかの貴族のような口ぶりでした。
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いつの間にか、勇者アカサタは自分で傭兵団を設立し、その傭兵団のリーダーとなっていました。
女勇者ハマヤラは、それを補佐する役です。
炎の魔法の使い手スカーレット・バーニング・ルビーも雇い入れました。
あのハープ奏者パールホワイト・オイスターの姿も見えます。ハープを竪琴に持ち替えて、戦闘に参加しています。というか、戦闘能力自体は皆無なのですが、自らが奏でる音楽で仲間に力を与えるのです。激しい曲で意欲をかき立て攻撃力をアップさせたり、安らぎの曲で精神力を回復させたり、そういった役割です。
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そうこうしている内に、この商売も下火になってきました。
あまりにも大勢の商人が台頭し、急激に大量の商品が行き交ったために、商品価値が下がってしまい価格が下落したためです。また、同じように美味しい汁をすすろうと、各地から冒険者たちが集まってきてしまいました。同業者が増え過ぎたのです。
こうして、砂漠を往復して儲けるという戦法は、あまり稼ぎのいい方法ではなくなってしまいました。
ただし、この時のことがあって、砂漠の街デザートローズは急激に発展し、大きな街へと変貌を遂げます。酒場以外の娯楽施設も数多く作られ、宿泊所も次から次へと建設されていきました。




