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砂漠の復路

 さて、こうして装備をととのえた勇者アカサタ。おかげで、せっかくもらった報酬は、ほとんどなくなってしまいました。けれども、まだ帰りの旅が待っています。それが終われば、残り半分の報酬がもらえるのです。


 ただ、帰りは行きよりも随分と楽な旅になりました。

 グロシュタットで装備をととのえたアカサタにとっては、これまで強敵だと感じていた魔物さえ、急激に弱くなったように思えたのです。

 最初は、新しい装備に慣れるのにちょっと時間が必要でしたが、そんなものはすぐに適応し、バシバシと敵を倒していきます。

「この!天才!勇者!アカサタ様にとっては!この程度のザコ、雑作もないわ~!!」などと叫びながら、敵を斬りつけていきます。

 やれやれ、また調子に乗っていますね。


 それでも、勇者アカサタの活躍もあって、何の問題もなく、砂漠を渡り終えます。

 そこから先は楽なものです。砂漠の街サンドローズから、アルファベ国の首都アルファベまでは、そんなに大した敵は出没しません。せいぜい、トロールくらいのものでしょう。


「いや~、今回の旅は、アカサタ君のおかげで随分と楽だったよ。特に、帰りの道はね」と、商人のリーダーも、ホクホク顔です。

 美術品などを運んでいた商人の一行ですが、帰りは軍事都市グロシュタットで仕入れた武器や防具を満載しています。今度は、これらを売りさばいて、一儲けするのです。


         *


 アルファベまでの帰り道、再び、大都会ヒルマンに立ち寄りました。ここで、また数日を過ごします。


 そんなある日、勇者アカサタが酒場で過ごしていると、1人の女性の姿が目に入りました。

 ハープ奏者パールホワイト・オイスターです。どうやら、この酒場で給仕をしているようです。

「アレ~?あの時のおねえさん。確か、音楽ホールで楽器を弾いてた」

 アカサタが声を上げると、相手の女性も気づきました。

「あ!あの時の変な人!」

 どうやら、パールホワイト・オイスターの方もアカサタのことを覚えていたようです。

「なんで、こんなところで酒なんてついでいる?」

「いえ、実はハープの演奏だけでは食べていけなくて…」と、パールホワイト・オイスターは説明を始めます。

 話を聞いたアカサタは、こう答えました。

「なるほど。じゃあ、ラ・ムーへ行けばいい!芸術の街ラ・ムーへ!あそこなら、きっと、おねえさんの満足できる演奏ができるだろうさ」


 その話を傭兵のリーダーグレイにすると、2つ返事でOKしてくれました。

「まあ、後はもうアルファベまで帰るだけだからな。荷物の大部分も、この街ではけちまったし。人1人、余計に乗せたところで、支障はあるまい」と。


 こうして、ハープ奏者パールホワイト・オイスターは、芸術の街ラ・ムーで暮らすこととなりました。

 その時、彼女はこう思いました。

「勇者アカサタ。この人が、私を世界に連れ出してくれる人なのかしら?」と。

 果して、どうなんでしょうね?

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