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軍事都市グロシュタット

 勇者アカサタと女勇者ハマヤラを含めた傭兵と商人の一行は、砂漠を西へと横断し終えました。

 そこからは、また馬車に乗り換えです。ラクダは置いて、新しく馬と馬車を借りました。こういうコトが気軽にできるのも、みんな、商品の取引で儲けたお金があるからなのです。お金の力は偉大です。


 砂漠を越えた先からは、また街道を進みます。街道はキチッと整備されていて、馬車でも進みやすいようにできています。

 そうして、さらにいくつかの街を通り過ぎ、途中で何泊かして、到着したのは大きな都市でした。その名も、軍事都市グロシュタット。


 軍事都市グロシュタットは、最近、勢力を広げてきた国家“シュトゥルム国”の首都です。

 世界に繁殖し始めた魔物に対抗する為、強力な武器や兵器を次から次へと開発し、グングンとその軍事力を拡大しているのです。

 それに比例するかのように、周辺に出没する魔物も強力になってきています。まるで、誰かが意図しているかのように。というか、実際に意図されているのですが。この世界を裏から操作している魔王ダックスワイズによって。


         *


 傭兵のリーダーグレイが、メンバー全員に向って指令を出しています。

「今回は、ちょっと長めの滞在になる。一応、ここが旅の終着点だ。商売の状況によって、この先に進む可能性もないわけではないが、おそらく、そうはならないだろう。皆、そのつもりで体を休め、帰りの旅の支度を始めておいてくれ。最低でも、ここで10日は過ごすことになる」

 どうやら、ここが今回の旅の折り返し地点になりそうです。

「また、ここで報酬の半分を支払ってもらえた。これから全員に分配していく。ここグロシュタットは、武器の開発で名を知られている。各自、武器屋などを覗いて、気に入った物があれば購入しておくといい」

 そう言われて、ここまで同行してきた雇われの傭兵1人1人に報酬が配られていきました。


 勇者アカサタも、ズシリと重い袋を渡されました。中を確認すると、金貨が詰まっています。数えてみると、30枚以上あります。

「おお~!すげえ!!さっそく、エッチな店に向うか!」

 ポカリ!と女勇者ハマヤラに頭を叩かれる勇者アカサタ。

「せっかく大金をもらったんだから大事に使いなさいよ!貯金しておきなさいよ、貯金!!」

「…って~な!なんだよ、お前はオレのか~ちゃんかよ!そういうとこが、か~ちゃん臭いっつーの!!」

 毎度のやり取りが交わされているところへ、傭兵のリーダーがやって来て言いました。

「オイ!アカサタ!武器を見に行くぞ!武器を!」

「武器~?」

「そうだ。お前、まだロクなエモノを持ってないだろう。この街はいいぞ。いつ来ても、新製品が揃っている。さすがは、軍事都市とうたわれただけあるな」

 こうして、勇者アカサタは、グレイによって武器屋へと連行されていきました。


         *


 傭兵のリーダーグレイに従って、勇者アカサタと女勇者ハマヤラは、大きな武器屋へと入っていきます。

「ここは品揃えがよくてな。オレもよく通ってるから、顔が利く。交渉すれば、少しは安くしてもらえるぞ」

 そう、グレイに言われて、店内を見回す勇者アカサタ。

 確かに、店の中は非常に広く、様々な種類の武器や防具などが取りそろえられています。アカサタが、元々住んでいた世界でいえば、ホームセンターやDIYショップといったところでしょうか?

「へ~、確かに凄いわね。アルファベのお店とは大違いね。私、ちょっと弓を見てくるわ。今度、アーチャーの技術も身につけようと思ってたから」

 そう言って、女勇者ハマヤラは、1人でどこかへ行ってしまいました。


 1人になった勇者アカサタに、グレイが声をかけてきます。

「お前は何にする?使ってる剣も安物だろ?いいのを2~3本、持っとけよ。商売がてら、使う武器はいいのを選んだ方がいいぞ。いい武器は命を救ってくれる。ある意味で、防具以上にな」

 ウ~ム…と悩んで、アカサタは答えました。

「剣もいいけど、槍ってのも使ってみたいな。この前、砂漠で戦ったドデカイ虫!ああいうのと戦うには、やっぱり、リーチが長い方が得だな~と思って」

「槍か。剣に比べて重さはあるが、確かに距離を取って戦うには有利だな。今の内から、扱い方を覚えておくのもいいだろう。槍は、あっちのコーナーだな」

 そう言われて、アカサタはズラリと槍の並べてあるエリアへとやって来ました。


 勇者アカサタが、陳列してある商品の前で思案していると、店員さんが声をかけてきました。

「いらっしゃいませ。どのような品をお探しでしょうか?」

「いや、槍をね、1ついただこうかと思って。槍といっても、股間の槍じゃねーぜ!」

 アカサタお得意の下品なギャグが飛び出します。

「は、はははは…お客さま、冗談がお好きなようで」と、店員さんの乾いた笑い。けれども、そこは、さすがにプロの接客業者です。即座に気を取り戻し、このように商品をすすめてきました。

「こちらの品などいかがでしょうか?軽くて丈夫、穂先にはクロムロックが使用されており、非常に鋭利となっております」

「フム。悪くないな~」などと、わかった風をしているアカサタ。けれども、実際にはクロムロックが何かだなんてサッパリわかりません。それで、わざと別の質問をしてみました。

「そういうのもいいけど、もっと特殊な効果が付いたヤツとかないのかな~?魔法で強化されている槍とか」

 その瞬間、店員さんの目つきが変わりました。

「ハッ!特殊効果付与!魔法強化!」

 それから、ジロジロとアカサタの方を眺め、頭のてっぺんから足の先まで観察し始めます。そうして、こう言いました。

「お客さま、そういう品は非常に高額となっております。申し訳ないのですが、お客さまのようなお方には、ちょっとお値段の方が…」

「金か?金なら持ってるぞ!ホラ!」と、勇者アカサタは、先ほどもらったばかりの金貨の入った袋を見せびらかせます。

 おお~!と、おおげさに驚いてみせる店員さん。

「そうですか。そうですか。ありますか、お金。では、こちらの方へどうぞ」

 そう言われて案内されたのは、豪華な陳列ケースに展示された商品ばかり。

 チラリと値段を見てみると、金貨300枚とか金貨500枚とか書いてあります。

「いかがです?たとえば、こちらの商品などは、“稲妻の槍”と名づけられており、その名の通り攻撃した相手に電撃ショックを与えることができるようになっております。お値段の方は、金貨560枚と少々値が張るのですが」

「ウ、ウ~ム…そうだな。ま、まあ、悪くはないが、今回はもうちょっと無難なものにしておくかな。次回!次回この店を訪れた時には、こいつにしよう!」

「さようでございますか」

 このようなやり取りの後、結局、新しい剣を2本と初心者用の槍など、いろいろな装備を購入し、金貨30枚の買い物をさせられてしまった勇者アカサタでありました。金貨30枚というと、今回もらった報酬のほとんどです。アカサタが元住んでいた世界の価値にすると300万円前後になります。

 それだって、傭兵のリーダーグレイに交渉してもらって値引きしてもらった価格です。元々は金貨36枚という話でしたので…


 ま、なんだかんだと言いつつも、これから先の冒険で使用する商売道具です。このくらいの先行投資は必要でしょう。それで、未来の経験と命を買ったと思ったら、安いものかも知れませんね。

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