大都会ヒルマン
さて、一行は、街道を進んでいきます。道は、ひたすらに西へ西へと延びています。
そうして、いくつかの街を抜けて、何泊もしながら旅を続け、大都市へと到着しました。その名は、ヒルマン。大都会ヒルマンです。
この辺りは、既にヒルマン国の領地。その前にも、いくつかの小国を通り抜けてきました。ちなみに、芸術の街ラ・ムーは、アルファベ国の一部です。
傭兵のリーダーであるグレイが号令をかけます。
「オッシ!この街でしばらく滞在するぞ!」
さすがに、大都会というだけあります。規模としては、アルファベ国の首都アルファベよりも大きく、住んでいる人の数も遥かに多く見えます。パッと見た感じ、3倍とか5倍くらいはありそうです。
商売的にも大きな取り引きが成立しそうです。商人たちは、それぞれの荷物を持って、街へと散っていきました。
「これから、数日間は、自由に過ごしていいぞ」
そう命令がくだり、傭兵たちは旅の緊張感から解き放たれ、おのおの好き勝手な方向へと散っていきます。
「さっそくオレは酒場に向うがね。お前さんらは、どうするね?」
そう尋ねられて、勇者アカサタと女勇者ハマヤラは、顔を見合わせて少し考えました。
「初めての街なので、ちょっとブラついてみようと思います」
勇者アカサタは、そう答えました。
「そうか。まあ、出発の前日に集合してもらえれば、どう過ごしてもらっても構わんよ。じゃあな」
そう言って、傭兵のリーダーとは別れを告げました。
*
女勇者ハマヤラが話しかけてきます。
「さて、どうする?」
それに対して、勇者アカサタは即答します。
「もちろん!エロい店に行こうぜ!これだけの大都会なら、そういう店も充実してるだろ!」
ポカリと頭を殴られる勇者アカサタ。
「じょ、冗談だよ…」と、すぐに弁解します。
「あんたの場合、冗談に思えないのよ!」
もちろん、冗談などではありません。1人になった隙に、勇者アカサタは自分の願望を達成するつもりなのです。
そんな風にして、2人がブラブラと街の中を探索しながら歩いていると、一軒の音楽ホールにたどり着きました。ホールの前には、こんな看板が立てられています。
「稀代のハープ奏者パールホワイト・オイスター出演!」
それを見て、女勇者ハマヤラが決断します。
「ここにしましょう!」
勇者アカサタは、あまり乗り気ではなさそうです。
「ええ~!?おんがくぅ~?いや、いいよ、オレこういうのは。お前1人で行ってこいよ」
アカサタは、どうにかして1人になる時間を作りたいのです。
けれども、無理矢理に引っ張られて、音楽ホールの中へと引きずり込まれてしまいました。
「芸術鑑賞もいいものよ。大体、あんた、絵に関心を持ったり、詩を作ったりもしてるでしょ!音楽だって同じようなモノよ!この際だから、いろいろ学んでおきなさい!」などと言われながら。




