アカサタ、旅の準備をする
ある日、勇者アカサタは旅の準備を整えていました。
自分の実力にも自信が持てるようになってきて、近所のモンスター退治にも飽きてきたからです。それで、以前に誘われていた商人の一団に護衛としてついていくことにしたのでした。
もちろん、女勇者ハマヤラも一緒です。
「あんた1人を長い間、放ってはおけないわ!悪さをしないように見張っていないと!」などと言っています。でも、本心はどうなんでしょうね?
炎の魔法を得意とするスカーレット・バーニング・ルビーも見送りに来てくれています。
「ほんとは、あたしもついていってあげたいんだけど。この後、別の任務が入ってて。北の方へ出かけないといけないのよ。次は一緒に行きましょうね」
そんな風に、やさしい言葉をかけてくれます。
「わかりやした!約束っす!アネゴ!どうかご無事で!」
「あんたもね、アカサタ。ちゃんと生きて帰りなさいよ」
「大丈夫っす!ノープロブレムっす!!」
さて、勇者アカサタは、今回の冒険でどのようなコトを学ぶのでしょうか?そうして、どのくらい成長できるのでしょう?
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旅の出発地点はアルファベ国の首都アルファベ。いつも、勇者アカサタが暮らしている街です。
そこから西へ向かい、山を1つ越えた先にある芸術の街ラ・ムーへと到着します。ここまでは、以前と同じ。
ちなみに、アルファベからラ・ムーまでは、山を迂回して進むルートもあり、こちらの方が道も広く安全です。ただし、非常に遠回りになるので、馬車を使ったとしても、何日もかかってしまいます。それに対して、山の中に敷かれた道は狭く、トロールなどの魔物と遭遇する可能性もありますが、馬車で半日。最高に急げば、数時間でたどり着くことができます。
今回の旅は、結構大がかり。
商人が数十人、それらを護衛する雇われの傭兵が10人以上。その内の2人が、勇者アカサタと女勇者ハマヤラというわけです。
傭兵のリーダーは、商人とは顔見知りで、もう何度も同じような任務を成功させています。他のメンバーも、大体、似たようなもの。経験者がほとんど。この手の仕事は、慣れたものです。
旅の道中は、危険な場所と、比較的安全な道にわかれます。アルファベからラ・ムーまでの山中は、危険な部類。そこから先は大きな街道が続くので、しばらくは安全な旅ができそうです。このまま、西へ西へと向っていく計画。
芸術の街ラ・ムーで数日間、滞在した旅の一行。
ここで、いくらかの商品を売り、代わりに別の商品を仕入れたりして過ごしました。食料品や水の補充も万全です!
ちょっとした長い旅に出ると聞いて、伝説の画商イロハ・ラ・ムーも顔を見せてくれました。
「私も若い頃は、世界を旅して回ったものだよ。旅はいい。人を成長させてくれる」
それに対して、勇者アカサタは、こう答えます。
「はい!1回りも2回りもでっかくなって帰ってきます!もちろん、アソコもでっかくなって戻ってまいります!」
「ワッハッハ!アカサタ君は、相変わらずおもしろいね~!その意気!その意気!」と、イロハ・ラ・ムーは笑って送り出してくれます。
「まったく。こんな時まで、何、言ってるんだか…」と、あきれ顔の女勇者ハマヤラ。
こうして、本格的に旅はスタートしたのでした。