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この方法では、世界は変えられない

 世界の片隅かたすみで、ダックスワイズは思いました。

「これでは勝てない。この方法では、世界は変えられない…」と。

 世界各地で、貧しい人々が武器を持って立ち上がっています。けれども、若いながらもダックスワイズにはわかっていました。

「いくら数がいようとも、戦力の差は圧倒的。このやり方では、世界は変えられはしない」と。


 事実は、その通りでした。

 お金持ちたちは、国に軍隊の出動を要請します。銃で武装した兵士たちの前に、ポコポコと倒れていく人々。

 それに加えて、自分たちでも傭兵を雇い、自己防衛をするお金持ちたち。


 貧乏人たちは、その日に食べる物や寝る場所にも困る始末。そんな状態で、ろくな武器など用意できるはずもありません。それに対して、お金持ちの方は、いくらでも武器を用意し放題です。

 それどころか、武器を売ったら売った分だけ、また利益になるのです。


 争いが起これば起こるほど、貧富の差はさらに広がっていきます。この世界を支配しているのは、そういうシステムなのです。

 完全に世界は狂っていました。でも、それは1つの物の見方みかたに過ぎません。別の世界の人々から見ると狂っているように思える世界も、ここではそれが常識なのです。少なくとも、これは1つの世界の進化の形でした。

 もしも、この世界に住む人々から見ても狂っているとして、もっと早くにどうにかしなければならなかったのです。初期の段階で、誰かが「これは間違っている!」と声を上げ、みんなで行動を起こしていれば、こうはなっていなかったでしょう。

 でも、それはもう今さら言っても遅いお話。こうなってからでは、どうしようもありません。

 もはや、世界の流れに従うしかないのです。そうして、さらに世界の進歩のスピードを進めるしかありません。


         *


 “貧民街の帝王”と呼ばれたダックスワイズは、貧しき人々の間に巨大なネットワークを築いていましたが、それでもなすすべがありません。

「今は、まだだ。まだ時期が悪い。時が来れば、必ずチャンスが巡ってくる。それまでは我慢しろ。我慢するのだ。そうして、その間に力をたくわえよ。能力を身につけよ。それが、いずれ世界を変える希望となる」

 周りの人々に向って、そう命じるのでした。

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