会社に就職したアベスデ
さて、そこからまた数年の時が経過します。
大学で経営学の勉強を終わらせ、卒業後は、父親のハルバート・マッケンバイヤーの会社で働き始めたアベスデ。
「大学で難しい学問もいろいろと学んだが、それらはただの理論でしかない。実践の伴わぬ理論など、机上の空論に過ぎない。ここから先が本番だ!勉強は、まだまだ続く!これから、一生続くのだ!」と、はりきっています。
けれども、いかな父親の経営する会社で働き始めたとはいえ、まだ何もできないペーペーです。社長の息子であろうとも、優遇はされません。容赦なくこきつかわれます。
もちろん、アベスデの方も、それは覚悟の上でした。他の社員たちも、そんなアベスデの姿を見て感心します。
「アイツ、社長の息子だっていうのに、えらくやる気のある奴だな」
「何もせずにのうのうと暮らしていても、将来は約束されているようなものなのに。そんなコトは関係なく、懸命に努力し続けるんだよな~」
「どうせ社長の息子という立場を利用した不抜けた奴が入ってくるだろうから、徹底的にしごいてやろうと思っていたが…とんでもない!厳しくすればするほど、さらに力を増してきやがる」
「入社して3ヶ月も経っていないのに、メキメキと実力をつけてきてるぞ。こりゃ、オレたちもうかれてはいられね~な」
「そうだ!オレたちも見習わなければ!初心に返って、がんばろう!」
こんな風に評価を上げ、アベスデに影響を受けた社員たちが、さらに切磋琢磨し、仕事に没頭するのでした。
そうして、アベスデに触発された社員たちが、自ら率先して社内改革を行います。これまで無駄の多かったシステムに手が入れられ、効率化がはかられていきます。
おかげで、会社の売り上げは以前よりも増し、利益もどんどん増えていくのでした。
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「アベスデや!よくやってくれた!これは、私の跡を継いで社長のイスに座るのも、そう遠くない未来であろう」
父親のハルバート・マッケンバイヤーも、そんな風に褒めてくれます。
それでも、アベスデは油断しません。
「いいえ、お父さん。僕なんて、まだまだです。これから学ぶコトが山ほどあります。大学で学んだ知識を生かし、実際に会社で利用できるように、いろいろと応用を考えているところです」
その言葉を聞いて、ハルバートはさらにアベスデを気に入り、ますます期待をかけるようになるのでした。
「ハマヤラは女だし、ダックスワイズの奴は行方知らずになって、どこで何をやっているのかもわからん状態だし。お前だけが、私の希望だぞ。これからも、期待に応えるように懸命に努力してくれ」
「はい!」と、元気に答えながらアベスデは思います。
“ここまでは、僕の思惑通り。問題は、ここから。まずはお父さんの経営権を奪い、会社の頂点に立つコト。全ては、それからだ…”
こうして、アベスデは順調にその人生を進み続けているのでありました。




