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ハマヤラの選んだ生き方

 長男のアベスデが大学で経営学を学び、次男のダックスワイズが家を飛び出していって貧民街の帝王となっていた頃、2番目の子ハマヤラは極々ごくごく普通の人生を歩んでおりました。

 普通とはいっても、あくまで“お金持ちの子”としては、普通の人生です。世の中のほとんどの人たちからすれば、実にうらやましい程、贅沢ぜいたくな生き方でありました。


「おにいちゃんは勉強ばかりでツマラナイ。『勉強!勉強!将来、自分のなりたい者になり、やりたいコトをやるためには、若い頃から勉強しておかないといけないぞ!』なんて口癖くちぐせのように言っている。けど、私はあんな風な人生はまっぴらよ。せっかく、生まれてきたんだから、人生楽しまないとね!」

 ハマヤラはそう言うと、少し頭をひねって考えます。

 それから、今度はこんな風に言いました。

「…かといって、ダックスワイズ。アレもダメね。せっかく、お金持ちの家に生まれたのだから、それを活用しないと。家を飛び出して、学校もやめちゃって、まったく何をやってるのかしら。将来を棒に振ってしまって、せっかくの家庭環境が台無しじゃないの」


 こうして、ハマヤラはマジメに学校に通い、それでいて勉強ばかりに没頭し過ぎず、適度に恋愛したり部活を楽しんだりしながら、人生を謳歌おうかしていたのでした。


         *


 そんなある日のコトです。

 ハマヤラの通っている学校のクラスメイトが1人、姿を消してしまったのは。

 …とはいっても、別に誘拐されたとか、自ら命を絶ったとか、そういうわけではありません。その子の家が没落ぼつらくしてしまったのです。

「は~い、みなさ~ん!ちゅうも~く!」

 ハマヤラのクラスの担任教師が、そう言って教壇きょうだんに立ちます。

「みなさんご存じの通り、このクラスから、また1人お友達がいなくなってしまいました。どうしてだかわかりますか?」

「ハイ!」と、1人の生徒が手を上げます。

「はい、どうぞ」と、担任の先生は、その生徒を指さします。

「アイツは、家が金持ちではなくなってしまったからです!貧乏人に落ちぶれてしまい、この学校に通えなくなってしまったのです!」

 その答を聞いて、先生は満面まんめんの笑みを浮かべて言います。

「その通りですね。みなさ~ん、お金はほんとうに大事ですよ。お金がなくなり、一般人へと落ちぶれてしまったら、大変な目にあってしまいます。裕福で幸せな人生を送り続けたかったら、誰を蹴落けおとしてでもかまわないので、自分の利益をしっかりと守りましょうね~」

「は~い」と、元気よく返事をするクラスメイトたち。

 その様子を眺めながら、「ま、仕方がないわよね。これが、この世の中ってものよ…」と、心の中で無理に自分を納得させようとするハマヤラでありました。

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