表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/324

初めての戦闘

 王様に謁見した帰り道。

 勇者アカサタは、トボトボと歩いていました。お城を出て、街の中を歩きながら、首をかしげていました。

「おっかしいな~?ほんとに、これでいいのか?」

 アカサタは疑問を感じていたのです。

「勇者であるこのオレに渡されたのが、こんなはした金と、ただの棒きれ1本だけとは。どう考えても、おかしいよなぁ…」


 アカサタが王様から渡された品、それは銅貨100枚と、武器なりそうな棒。棒の柄の部分にはシッカリと布が巻いてあって、握りやすそうです。

 銅貨100枚は、銀貨1枚の価値があります。銀貨10枚で金貨1枚と交換してもらえます。銅貨100枚あれば、4~5日は安宿に寝泊まりできます。ただし、食べ物を買ったりもしなければならないでしょうから、実際には2~3日しか暮らせないでしょう。

 つまり、アカサタは、いきなり働かなければ暮らしていけないような状況に追い込まれてしまっていたのでした。果して、アカサタはそのコトに気づいているのでしょうか…?


「まあ、いい。このオレには、神に与えられた“最高の能力”とやらがある。それを試してみるか」

 そう言って、アカサタは、街の外へと出かけていきました。


         *


 街の外には、魔物がウヨウヨいます。その辺りの森や茂みの中に潜んでいて、人間が現われると、襲ってくるのでした。なので、キコリであろうが商人であろうが、誰でも街の外に出る時には、それなりに武装していかなければならないのです。

 街は、高い塀で囲まれていたり、魔力で防御されていたりして、そう簡単に魔物が入ってこられないようにできています。けれども、街の外は違います。1歩でも外に出る為には、それなりの能力が必要となるのでした。それができない人は、お金で戦闘経験のある人を雇うしかありません。


 アカサタは、全くのド素人。戦闘の経験どころか、誰かが血みどろになりながら戦っているシーンを見たこともありません。あるとしても、映画やドラマの中だけのこと。そんなものが、何の役に立つというのでしょう?

 それとも、神様が与えてくれた最高の能力が、アカサタを救ってくれるのでしょうか?


「出たな!化け物め!」

 そう叫ぶアカサタの前に現われたのは、1匹のコボルトでした。

 コボルトというのは人型の生き物で、人間よりも小さく、性格もあまり獰猛ではありません。

「ウリャアアアアアアアアアアアアアア」

 かけ声と共にアカサタは、コボルトに向って襲いかかります。これでは、どちらが化け物か、わかったものではありません。

 コボルトは、その攻撃をヒラリとかわすと、アカサタに殴りかかりました。

 ポコリという音と共に、アカサタの頭にたんこぶができました。コボルトは素手で殴ったのですが、それでも結構なダメージです。

「うぎゃああああああああああああああああ」

 アカサタは、激しい痛みで、地面を転げ回ります。

 そこに、コボルトのさらなる追撃!

 ドスッという音と共に、アカサタのお腹に蹴りが決まります。

「グホッ」

 アカサタは、そう言葉にもならない声をあげると、ほうほうの体で逃げ出しました。


         *


 どうにかこうにか街へと逃げ帰ったアカサタは、1人呟きます。

「どうなってやがる?このオレ様は、勇者じゃなかったのか?神の与えてくれた最高の能力は、どうした?これじゃあ、ただの惨めな人間に過ぎないじゃないか…」

 そうです。そうなのです。勇者とは名ばかり。

 この時のアカサタは、ただの1人の普通の人間に過ぎなかったのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ