アベスデの真意
さらに、時は流れます。
長男のアベスデは17歳となり、経営学を学ぶために大学へと進んでいます。
長女のハマヤラは15歳。末っ子のダックスワイズは14歳。それぞれ、16歳までの子が通うシニア・スクールへと通っています。
アベスデは、父親の血を色濃く受け継いだのか、見た目はさわやかな好青年。性格はマジメで、ひたすら勉強に没頭しています。女の子にも、あまり興味がないようです。
ハマヤラは、勉強はそこそこですが、オールラウンダーとして様々なジャンルで活躍しています。スポーツで体を動かしたり、頭を使うゲームも強かったり、もちろん恋愛にも興味をもちまくり。放っておいても、言い寄ってくる男子生徒は多いのでした。
ダックスワイズはというと…
ちょっと変わった性格をしています。勉強はあまり好きではなく、真剣に取り組もうとはしません。それでも落第するようなコトはなく、勉強時間の割にはいい成績を取っているといった感じでしょうか?
年がら年中、遊びほうけていて、女の子を取っかえ引っかえしては楽しんでいます。何事においても“要領がいい”タイプなのです。
性格的には、一番アカサタに似ていると言っていいでしょう。
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さて、大学で経営学を学んでいるアベスデですが、その真意は父親のハルバートが思っているモノとは全然違っていました。
アベスデが脇目もふらず必死になって勉強に没頭しているのには、理由がありました。
それは、アベスデがまだプライマリー・スクールに通っていた頃のコト。11歳の時の出来事でした。
ある時、アベスデたちプライマリー・スクールの生徒は、街に出て貧しい人たちの生活を見て回るコトになりました。
「さあ、みなさん。貧乏人のかわいそうな人生を見学しましょうね~」
学校の先生が、そう言って回ります。
「こんな風になってはいけませんよ~!お金がないと、酷い人生を歩むコトになってしまうのです。みなさんは、たくさんお金を稼いで、裕福な人生を歩むのです。それこそが、幸せな人生というものなのですから」
見ると、ボロボロの服を着た子供たちが、路上で生活をしています。今日の朝ご飯すら食べていない子がほとんどでした。朝ご飯だけではありません。お昼も夜も、まともに食べる物などないのです。
仕方がないので、その辺りのレストランのゴミ箱から残飯をあさって食べている始末。
子供だけではありません。大人も老人も、男も女も関係なく、大勢の人々が似たような生活を送っているのでした。
その光景を見て、アベスデは思います。
「このままではいけない。この世界は狂っている。こんな世界、いつまでも続いていいはずはない!この世界を僕が変えてやる!その為に、まず力を手に入れなければ。誰にも負けない圧倒的な力を!この世界においての力、それは“お金”だ!!」
子供ながらに世界の真実を見抜き、現実的な対策法まで見出したアベスデ。
その人生を、貧しき人々の為に使おうと、心に決めたのでした。




