キャンドル家の令嬢、ロゼッタ・ミランダ・フローレンス・キャンドル
新しいアカサタのご主人様は、ロゼッタ・ミランダ・フローレンス・キャンドルという、キャンドル家の令嬢でした。けれども、長ったらしいので、今後はロゼッタと呼ばせてもらいましょう。
ちなみに、最初のご主人様である、おしっこを浴びるのが大好きな男は、ロゼッタの弟でマラカイという名前。でも、この物語では、あまり重要人物ではないので、弟の名前を覚える必要はないでしょう。
弟の方は、まだ20代にも関わらず、醜い風貌をしていました。が、姉のロゼッタは、30歳を越えているのに、実に美しい姿をしていました。貴族の娘らしく、身なりもキチッと整えています。
ロゼッタの部屋に連れ帰られたアカサタは、このように話しかけられます。
「アカサタ。あなたには、才能があるわ。私にはわかる。見た目はただの女の子でも、中身は全然違う。むしろ、男のような荒々しさと勇気と決断力を持っている。一体、どのような人生を歩んできたら、あなたのような子ができあがるのかしらね?」
それは、そうです。見た目はかわいらしい女の子でも、その中身は何百年も生きてきた男の魂なのです。
それにしても、ロゼット・キャンベルの人を見定める能力は、さすがでした。これまでも、数々の才能を見出し、それらの才能を持つ人間を使って大儲けをしてきたのです。
ロゼッタは、生まれながらの大金持ちであるだけではなく、ちゃんとした能力を持った人間でもありました。そういう意味でも、弟のマラカイとは全然違っていました。弟の方は、ただお金を浪費することくらいしかできなかったからです。
この世界では、こういう者が、大金を稼ぐことができるのです。能力があるだけでは駄目。環境が整っているだけでも、そこそこのレベルまでしか到達できはしません。
大金持ちの家に生まれることは大前提として、それにプラスして真の能力を持った者。それこそがトップレベルにまで登り詰めることができるのでした。
話を元に戻しましょう。
「ン?さあ?どうだろう?別に、普通に生きてきただけだけど」と、ロゼッタの言葉を聞いたアカサタは、適当に誤魔化します。
「そんなはずはないわ。あなたのような奴隷女は数いれど、あなたのような者は、そう多くはない。それとも、それこそが“生まれ持った才能”というヤツなのかしら?」
「かもな」と、アカサタは一言。
ロゼッタは、しばらくの間、首をひねって考える仕草をしてから、気持ちを切り換えたようにこう言いました。
「まあ、いいわ。理由なんて、どうでもいい。私は、宝を見つけた。それも、類い希なる至宝よ。他の者たちにはわからなくても、私にはわかる。理由なんて知れなくても、それだけで充分だわ」
ロゼッタの自信満々の笑顔を見ながら、ちょっと不気味なモノを感じるアカサタ。
「なんだか、底知れない感じがする女だな。まあ、いい。さっきのブサイク変態男よりも、よっぽどマシだ。どうせ、ご主人様に仕えるなら、こういう美人の方がいいに決まっている!」
新しいご主人様を前に、そんな風に考えるアカサタでありました。
 




