ヒヨ太の末路
次から次へと襲ってくる除霊師や陰陽師たちの攻撃をかいくぐり、返り討ちにしながら、猫のアカサタはそれまでと同じような日々を生き続けます。
そんなある日、ひさしぶりに猫のヒヨ太のもとを訪れることにしたアカサタ。
ヒヨ太は、元々野良猫であったのをアカサタが拾い、アカサタの伝授した奇跡の舌技により、今ではお金持ちのお嬢様の飼い猫となっていたのでした。
「あるぇ~?おっかしいな?ヒヨ太の奴、どこいった?姿が見えないぞ」
お嬢様の部屋をのぞいたアカサタが、そんな風に声を上げたのも無理はありません。なぜなら、部屋の中には数え切れないほどの猫が寝転がっていたからです。
しかも、当のヒヨ太は、以前とは全く別の姿をしていました。
「あ、いたいた!アレだな!」
そう言うアカサタの視線の先には、とんでもないデブ猫がいました。
ベッドの上の一番いい場所に偉そうに鎮座しているのは、間違いなくあのヒヨ太でした。ただし、前に見かけた時とは全然違って、物凄く太っています。
これでは、ヒヨ太ではなくデブ太です。
そこに、この家のお嬢様がやって来ました。
お嬢様は、部屋に入ってくるなり、猫たちにエッチなプレイを強要させようとします。
ヒヨ太もその輪の中に入ろうと、一生懸命に体を動かそうとしますが、どうにもうまくいきません。
「う、動けん…」と、一言つぶやいただけでした。
一通りことが終わり満足すると、お嬢様は、こう言いました。
「アラ?この猫、まだいたの?最初は痩せていて、ペロペロするのもうまかったけど、こんなにおデブちゃんになっては何の役にも立たないわね。もうこうなったらおしまいだわ」
それから、お嬢様は、家のお世話をしている執事の老人を呼ぶと、こう命じました。
「もう、この子は要らないわ。どこへでも捨ててきてちょうだい」
執事は、「はい。わかりました」と返事をすると、即座に行動を起こします。
ヒヨ太は、そのまま抱きかかえられて、近所の草むらにポイ~ッと捨てられてしまいました。
*
草むらに放置されたヒヨ太に向って、アカサタが話しかけてきます。
「オイ、デブ太!あ、いや…ヒヨ太。どうしたんだ?こんなに太っちまって」
自分の体重で身動きの取れないヒヨ太は、丸々と太った首をどうにか回すと、声のした方へと振り向きます。
「あ!アカサタさん!助けてください!」と野太い声が返ってきます。
「なんで、こんなになっちまったんだ?」
「それが…あの家で贅沢三昧。朝から晩までカロリーの高いおいしい物ばかり食べて生きていたら、いつの間にかこんな体になってしまっていて…」
「なるほど。そういうコトか。贅沢も過ぎれば体に毒ってわけだな」
こういう時に、アカサタは放っておけない性格なのです。
そのまま見捨てて去っていくこともできたのですが、そうはしません。デブのヒヨ太の面倒を見つつ、最初から鍛え上げることに決めたのでした。




