世界に広がる舌技
街では、誰も彼もが猫を連れて歩いています。1人で何匹も飼っている欲張りさんもいます。
もちろん、超絶テクニックの舌技を持つ猫たちに舐めてもらい、気持ちよくなるためです。
アカサタの広めた舌技は、もはや1つの街では収まりません。
人から人へ…いえ、猫から猫へと伝わっていき、国中の猫が、アカサタ伝来のテクニックで、人間たちを快楽の虜としているのでした。
やがて、それは1つの国では終わらなくなります。様々な国へと伝わっていき、ついには世界中に伝播していきます。
今や、世界中で猫は愛され、どこの家庭でも1匹ずつは飼われるようになっていました。
それをヒントにして、他の動物にも同じようなコトをさせようとする人間も現われました。
「オイ!コラ!もっとうまく舐めろ!そうじゃない!こっちだ、こっち!」
このように叱ったからといって、覚えるものでもありません。
犬・猿・イルカ・ヒツジ・ブタ・牛などなど。いろいろな動物に技を仕込もうとしますが、どの動物も、猫に比べると格段に劣るのです。
それは、そうです。世界中の猫たちは、元々、アカサタが直接実戦を交えながら教え込んだテクニックを持っているのです。人間がいくら指導しようとも、同じようにいくわけがないのでした。
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そんなある日、アカサタは不思議なコトに気がつきました。
自分の尻尾が、2つに割れてしまっているのです。
「アレ~?おっかしいな?いつから、こんな風になってたんだ?」
猫のアカサタは、自分の尻尾を結構気に入っていました。長くて、フワフワしていて、それでいて自由自在にピシピシとムチのようにしなやかに動くお気に入りの尻尾でした。
それが、いつの間にか、根本の部分から2つにわかれてしまっていたのです。
「ま、いっか。別に、不便があるわけでもなし」
その時は、そんな風に、さして気にも止めませんでした。
けれども、それは1つの前兆に過ぎなかったのです。




