猫になったアカサタ
ウッホモランドとレズビアーヌ、2つの世界での人生を終えたアカサタは、再び神様と対面します。
神様は、こんな風に話しかけてきました。
「さて、アカサタよ。前の世界での旅はどうだったかな?」
「ま、なかなか楽しかったぜ」
「では、次の人生を歩んでみるか?それとも、もうここで終わりにするかね?」
アカサタは、ほんの少しだけ考えてから答えました。
「そうだな。まだ生き足りないという感じはするな」
「それでは、次の世界に挑戦してみるというわけだね?」
ここでもう1度アカサタは考えます。
「その答は“イエス”だ!ただし、これまでにない刺激的な人生にしてくれよ」
今度は、神様の方がしばらく考えてから言いました。
「フム…刺激的とな。アカサタよ、人生というのは、自分の力で変えてゆくものなのだ。決して、世界がどうだからというわけではない。どんなに平穏な世界であっても、その意志があればいくらでも刺激的に変えられる。逆に、いかに動乱の世の中であっても、つまらない人間の一生はつまらないものなのだ」
「そんなものかね~?」
「そんなものだ。それに、お前の人生は、これまでも充分に刺激的であったように思うがね」
それを聞いて、アカサタはちょっとだけ納得しました。
「ま、確かにそうだな。このオレの人生、これまでも刺激的だったな。じゃあ、どんな世界でも構わねえ。さっさと次にやってくれ!」
それを聞いて、神様は大きく1つうなづきました。
それから、サッと杖を振ると、その場からアカサタの姿は消えてしまいます。新しい世界へと飛ばされてしまったのでした。
*
次にアカサタが意識を取り戻した時、すぐに明らかな異変に気がつきました。これまでとは全く違う感覚をしていたからです。
そうして、両の手足を確認してみました。
「なんだ、こりゃあ…」
見ると、アカサタの手足は人間のそれではありません。というか、手ですらないのです。4本の足なのです。
そう!今度のアカサタは、猫の姿に生まれ変わったのでした。
アカサタが新しい世界で生まれたのは、寂れた街の空き地の中でした。
そこで、兄弟の猫たちと一緒に、母猫のお腹から日の光の下へと出てきたばかりだったのです。
*
生まれたばかりの猫アカサタは、しばらくの間、母猫のお乳を飲んで暮らしていましたが、すぐにそんな生活には飽きてしまいます。
そうして、さっそく母親のもとを飛び出し、野良猫になってしまいました。
「ニャン、ニャン、ニャニャン」
猫の生活も、ニートみたいなものです。特にやるべきコトもなく、のんびりと日向ぼっこでもして1日を過ごせばよいのです。
昔から、アカサタは、こういうのには慣れています。最初に住んでいた世界から、ニートだったのですから。
ただ1つ困ったのは、魔法が使えないコトでした。人間の姿から猫になったわけではないので、呪文を唱えるコトができないのです。
けれども、猫のアカサタは、そんなコトはおかまいなし。
「ま、いいか。のんびり過ごしてるだけで、この一生も終えられるだろう」
そんな風に考えて、全然あわてません。
こうして、新しい世界での人生がスタートしたのでした。




