感動の親子の再会
ウッホモランドでのアカサタの任務。それは、若くて生きのいい男をさらってくるコト。そのために、物質転送装置を使って、移動することになります。
女だけの世界レズビアーヌにも、世界間を移動する物質転送装置はありますが、長い間使用していなかったので、どうやら動作に不安があるようです。
「アレ~?おかしいわね?うまく作動しないわ」と、担当官の女性が言っているのが聞こえてきます。
そこで、担当官はガシッと一発、機械に蹴りを入れました。
すると、ウイ~ンウイ~ンウイ~ンと物質転送装置が動き始めます。
「動いたわ!これでヨシッと!」
その光景を横で見ていたアカサタ。不安そうです。
「オイオイ、大丈夫か?こんなんで?」
「大丈夫よ!たぶんね」
「たぶんって…」
「どうせ、移動するのはアタシじゃないから。失敗したとしても心配ないわ」などと物騒なコトを言う担当官。
猫やネズミなどで、何度か転送実験を行い、いよいよアカサタの番になりました。
「じゃあ、いってらっしゃい。がんばってね」と、やさしい声をかけられますが、相変わらずアカサタは不安なまま。
「ほんとに大丈夫かよ…」
この世界にやって来た時と同じように、ミョ~ンミョ~ンミョ~ンという音と共に、機械の中に入れられたアカサタの姿が薄らいでいきます。そうして、瞬く間にその場から消えてしまいました。
*
辺りを見回すと、人気のない森の中。
「やれやれ、どうやら無事に成功したようだな」
そう呟くと、アカサタは移動を開始します。目指すは、かつてこのウッホモランドでアカサタが住んでいた街。
そこで、昔の知り合いを訪ねる気でした。
「相変わらず、男臭い世界だな…」と、ブツクサ文句を言いながら進んで行きます。
そうして、見事にウィリアムスとオリバー2人を見つけ出します。
最後に2人に会ってから、もう6年以上の時が過ぎていました。
「おお~!アカサタ!アカサタじゃないか!」
「生きていたのか!アレ以来、全く姿を見せないものだから、てっきりお前は死んだものかと諦めていたぞ!」
そう言って、2人はアカサタを迎えてくれます。
ウィリアムスとオリバーの家で、2人の用意してくれた食事に舌鼓を打ちながら、アカサタはこれまでの出来事を話して聞かせました。
「…というわけで、レズビアーヌは夢のような世界だったのだ」
それを聞いて、2人はこう尋ねます。
「そんなコトよりも、ローズはどうした?」
「そうだ!ローズだ!我々の娘は無事なのか?」
アカサタは自信満々に答えます。
「ああ~、もちろんだとも!今は、このオレの住んでいる屋敷で、面倒を見てもらっている。スクスクと成長してるぜ!」
アカサタの言葉を聞いて、2人は歓声を上げます。
*
その後、アカサタはウィリアムスとオリバーの2人を連れ出し、向こうの世界で愛する娘と再会させました。
世界を移動するのには、ウッホモランドの物質転送装置を使いました。物質転送装置を管理している研究者を買収したのです。
「お前も、女だけの世界に連れていってやる!向こうの世界は楽園だぞ!」と口説くコトで一発でした。
男だけの世界の住人も、その多くは女という存在に興味があったのです。
「おお、ローズ!大きくなって!」と、ウィリアムスとオリバーの2人が同時にローズに向って話しかけます。
「お父様なの?」と、不思議そうな顔のローズ。それはそうです。生まれて初めて見る両親の顔なのです。
「ああ、お父様だとも!」と、オリバーが言います。
「じゃあ、こっちは?」
「こっちもお父様だよ」と、ウィリアムスも言います。
「なんだか、ややこしいわね…」とローズ。
「では、私のコトは、“パパ”と呼びたまえ」
「それでは、僕のコトは、“お父さん”と呼ぶんだ。いいね?ローズ」
「はい、わかったわ。オリバーパパと、ウィリアムスお父さんね?」
「そうだ、そうだ!よくできたね!ローズ!」と2人は声を上げて喜びます。
何はともあれ、レズビアーヌの世界で、ひっそりとではあるものの仲良く暮らすことができるようになったウィリアムス、オリバー、ローズの3人でありました。
その微笑ましい姿を端から見ながら、アカサタは1人で呟きます。
「めでたしめでたし…ってわけだな」
そうして、再び任務へと戻っていくのでした。




