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アカサタ、詩を作る

 その夜、勇者アカサタは、冒険者たちの集まる酒場で、自作の詩を披露していました。

「できたぜ!オレの詩を聞いてくれ!!」

 さて、どのようなモノなのでしょうか?ちょっと聞いてみましょう。


         *


 オレは勇者様!能力は様々!

 世界を救う!魔物が巣くうこの世界を!


 炎の魔法だ!ファ~!嫌~!

 風の魔法で加勢する!

 水の魔法は見ず知らず!

 氷の魔法、こ~りゃないぜ!


 イェ~イ!イェ~イ!

 いえいえ、いえいえ


 オレ様は救世主!君と急接近!

 剣を振るえば、敵は震え上がる!

 ナイスなナイフを装備して!

 槍で突っつけ、やり過ぎだ~!

 斧を振り下ろして、オーノー!


         *


 こんな詩が延々と続いていきます。

 曲に乗って詩を歌い上げ、勇者アカサタはノリノリですが、ライブ会場と化した酒場の客たちからは罵詈雑言の嵐です。

「なんだそりゃ~!」

「ヘッタクソ~!!」

「はよ、引っ込め!!」

「才能ないんだよ!!」

 こんな感じ。


 それでも、勇者アカサタは、気にせず最後まで歌い上げました。

 酒場の片隅でそれを聞いていた詩人クリアクリスタル・クリスティーナは、クスッと軽く笑いました。


 その姿を目にした勇者アカサタは、さっそく飛んできます。

「クリスティーナさん!いかがでしたか?」

 勇者アカサタのその質問に、さすらいの女性詩人は、こう答えます。

「おかしなお方。でも、なかなか見どころがあるわね」

 アカサタの顔がパッと輝きます。

「聞いたか!みんな!才能あるってよ!」

 即座に、酒場中から反論の声が飛んできます。

「そんなコト、誰も言ってねーだろう!」

「見どころあるって言われただけだろう!」

「ちょっと褒められたからって、いい気になるなよ!」


 詩人クリアクリスタル・クリスティーナは、それらの言葉を制して、こう語ります。

「詩は言葉。詩は想い。詩は魂。あなたの言葉には、魂を感じるわ。熱き想いをね。言葉の使い方は、まだまだだけど、何かを感じる。技術なんて気にしなくていい。そのまま進みなさい。そうすれば、その先には、あるいは…」

「あるいは?」と、アカサタは問い返します。

「いいえ。何でもないの。それよりも、もっと好きなモノに没頭しなさい。最初は、人々の声は気にしなくていい。世界は関係ない。それどころか、世界は敵だと思っても構わない。そうすれば、きっと、あなたもいい詩人になれる。いずれ、世界が味方になってくれる時も来るでしょう」

「よっしゃ~!わかった!オレ、きっと、いい詩人になるぜ!!」

 と、魔王を倒す勇者になるという目的を完全に忘れて、詩人になる決意を固めます。

「じゃあ、続けていくぜ!!次は、『世界中をおっぱいで満たす』って作品だ~!みんな、聞いてくれ~!!」


 こんな感じで、酒場の人々から煙たがられながらも、その日の夜遅くまで自作の詩を披露し続けた勇者アカサタなのでありました。

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