女性に対する執着心
それからのアカサタは、“この世界に女性を連れ戻す!”という目的のためだけに生きていきました。寝る間も惜しみ、食事も最低限に抑え、友人と楽しく遊んだりもせず、ひたすら勉強に没頭する毎日です。
“好きこそ物の上手なれ”とはいうものの…なんという集中力!なんという執着心でしょうか!女性に対する執念ともいえるその一点のみで、アカサタは生き続けていたのです。
おかげで、一流の大学に合格し、それなりの地位の仕事につくことができました。そうして、世界の秘密に迫ることに成功しました。
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ここは、“世界生物研究所”アカサタの就職先です。
この世界生物研究所では、生き物の仕組みについて研究が続けられています。男同士で子供を誕生させる方法も、この研究所から生まれました。
研究所の所長でもある博士が言います。
「では、アカサタ君。君は、今日からこの部署で働いてもらう」
アカサタは、この世界では“ジョン”という名前で生きてきたのですが、アカサタ自身「ダサイ!」という理由で、その名前を気に入っていませんでした。そこで、改名して、前の世界と同じようにアカサタという名前を名乗ることに決めたのでした。正式な名前ではありませんが、ま、ペンネームみたいなモノです。
「はい!博士!粉骨砕身一生懸命がんばる所存でございます!よろしくお願いします!」と、丁寧なんだかどうだかよくわからない言葉で返事をします。
「フム。期待しておるぞ。がんばりたまえ」
博士にそう言われて、さっそくアカサタは自分の席につき、研究を開始します。
アカサタは、この研究所での研究内容を、もう1度確認し直しました。
これまでの勉強で、この程度は全て頭の中に叩き込んであるのですが、これから先の研究を行うために必要な作業でした。
「え~っと、なになに…人間の男性の細胞を改変して、卵子を作り出す。それと、別の男性の精子を組み合わせて、受精卵にする。これらを人工的な子宮に着床させる、と…」
この時代、男性同士から子供を誕生させることは、非常に安全なレベルで行えるようになっていました。さらには、髪の毛や瞳を好きな色に変えたり、背の高さ体格を決めたり、どのような運動能力を持たせるか、などといったコトまで誕生前に操作できるようになっていたのです。
アカサタが配属された部署では、それをさらに発展させ、「もっといろいろな能力を人間に持たせることができないだろうか?」というようなコトを研究するのが主な仕事となっていました。
もちろん、この段階で性別も決定されます。普通に受精させるだけだと、自然に女性も生まれてきてしまうのです。そこで、誕生前に、性別を強制的に全て男性に統一するように決められていました。
これは、世界政府の決定であり、何人たりとも破るコトは許されません。もしも、その規則を破るような者があれば、厳罰に処されてしまいます。
実は、アカサタが、この研究所に就職した理由は、そこにあったのです。
「自らの手で、女の赤ん坊を誕生させる!」
それが、心の底で密かに抱いていた野望の1つでありました。そうして、この研究所で、その野望に向って着々と準備を進めていきます。




