自由の神
世界というのは、いつも変化に富んでいるもの。
たとえ一時停滞したように見えたとしても、すぐに再びその姿を変え始めます。
それは、誰かの意志によるものだったり、誰も意図しないものだったり、1人の人を中心としていたり、大勢が結束した結果だったりするのですが、いずれにしても変わらぬ世界などありはしないのです。
ある1つの世界にやって来て、ムチャクチャにその世界の姿を変えながら、自由気ままに生き続けた勇者アカサタ。
もしも、アカサタがこの世界に来ることがなかったとしても、やはり世界は変わり続けていたでしょう。もっとゆっくりとしたペースで、もっと別の姿ではあったかもしれませんが、変化そのものを止めることは誰にもできなかったのです。
広く大きな視点・長い歴史から見れば、どんなに激しい嵐のような変化も、いずれは過去のモノとなり、穏やかな目で見守ることができるようになる時が来ます。
そういう意味で、アカサタが行ってきたことは、決して過ちではなかったのです。
そのアカサタがこの世界から姿を消したのに人々が気づいたのは、それからしばらくしてからのコトでした。いつの間にかいなくなり、「そういえば、最近、アイツの姿を見かけないな…」と言われるようになって、そのまま2度と誰の前にも現われるコトはありませんでした。
それまでは「迷惑なヤツだ」とか「騒がしい人間だ」などと半分煙たがれていたアカサタですが、いざその姿を見られなくなると、「いなくなってみると寂しいものだ…」と言われるようになります。
その後、「アレこそは神だった」のだと噂されるようにまでなります。
こうして、その名は“自由神アカサタ”として、後世に語り継がれていくのでした。
~第2部 完~




