表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

238/324

大魔法野球

 この時代、世の中では、野球をさらに発展させた“大魔法野球”というものが流行はやっていました。

 この大魔法野球。基本的なルールは、これまでの野球と同じなのですが、もうとにかく何でもあり!魔法を使うのもよし!魔物を選手として登録するのもよし!

 なので、これまで以上にド派手で迫力のある試合が楽しめるようになっています。その代わりに、選手のケガはえず、かなり危険な競技となっていました。


 たとえば、ストーンゴーレムがファーストを守っています。パワーも桁違けたちがいなので、バットのしんに当たれば、軽々とスタンドまで運んでしまいます。ただし、動きが鈍いので、ファールフライを捕れないこともよくありました。速い球に対応するのも苦手です。

 吸血鬼は総合的に優秀な選手なのですが、太陽の光が苦手。なので、出場はナイターか、もしくはドーム球場での試合に限られます。

 飛行能力を有する魔術師や背中に翼を持った魔物が、ホームラン性の当たりを捕球してしまうなんて場面を何度もの当たりにすることができます。逆に、空中でボールを捕球しても、そのまま勢いで選手ごとスタンドまで押し込まれてしまうこともあります。


         *


 ちょうど、アカサタがテレビで自分のチームの試合を観戦中なので、ちょっと試合の様子をのぞいてみましょう。


 実況アナウンサーが、ピッチャーの投球を見て絶叫しています。

「出た~!!必殺の稲妻いなづまサンダーボール!!稲妻とサンダーという、同じ意味の単語が重なっている必殺技だ~!!」


 稲妻サンダーボール。その名の通り、ピッチャーの手から離れたボールは、稲妻のごとくジグザグに進み、キャッチャーミットに吸い込まれていく魔球。

 さらに電撃をまとった球であり、普通に打っていると、電撃のダメージを食らってしまいます。なので、バッターは防電バットを使用し、キャッチャーも専用のキャッチャーミットを使っています。


 ちなみに大魔法サッカーでは、この投球を元にした“稲妻サンダーシュート”という技も存在します。不規則な動きでゴールキーパーを翻弄ほんろうし、ゴールネットへと突き刺さる必殺シュートです。

 この時代、魔法や魔物はスポーツ業界にも進出し、どのスポーツにおいても積極的に取り入れられるようになっていました。


 他にも“極炎ファイアボール”や“疾風ウインドボール”“氷結アイスボール”などという特殊な球が、魔法の使えるピッチャーによって、普通の野球の変化球のごとく、当然のように投げられているのです。

 むしろ、この手の特殊球が投げられないと、まともに打者を抑えることは難しいのでした。

 例外的に、剛速球や変化球のみで勝負するタイプの投手もいますが、この大魔法野球においては、かなり珍しいタイプといえるでしょう。


         *


 試合は、アカサタが応援する“魔王デストロイヤーズ”が“妖精レインボーフライヤーズ”を24対17でリードしていました。優秀なピッチャーが投げている試合は、全く点が入らないのですが、そうでない場合、簡単に点が入り、大味な試合になってしまうのです。それが、この大魔法野球の特徴であり、醍醐味だいごみでもありました。


「さあ、9回裏。デストロイヤーズは、抑えの投手ステイメンの登場です。レインボーフライヤーズは、最終回の攻撃。この回、追いつかなければ、試合が終わってしまいます。解説のカイドーさん。いかがでしょうか?この投手は?」

 実況アナウンサーが、解説に話を振ります。

「はい、そうですね。ステイメン投手は球も速く、いい特殊球も持っているのですが、コントロールに難があるのが心配ですね。これまでも、フォアボールから崩れて試合を引っ繰り返されるという試合を何度も見てきました」

 解説の話通り、ボールボールの連発で、簡単にランナーが溜まっていきます。


「あ、クソッ!何やってんだ!!はよ代えろ!このクソピッチャー!!」

 アカサタは、テレビの画面にかじりつきながら、大声で文句を言っています。

 けれども、レインボーフライヤーズの選手は、皆、選球眼がよく、ステイメン投手のボール球を簡単に見逃します。レインボーフライヤーズ選手は、打撃力はあまり高くないのですが、機動力があり、細かいプレーをそつなくこなします。

 そうして、気づけば、あれだけあった点差はわずか3点に。ツーアウトながら、塁は全て埋まっています。


「さあ、ツーアウト満塁。これが、最後のバッターになってしまうのか?それとも、同点に追いつき、延長へと突入するのか?はたまた、一気に逆転か?」

 テレビの実況の声にも熱が入ります。

「打った~!しかし、これは、なんでもない打球。平凡なゴロがファーストへと転がっていきます。これで試合終りょ…あああああっと!!ファーストのゴレ・ゴレーン選手、まさかのトンネルぅ~!!!!」

 ファーストを守っていたストーンゴーレムが、まさかの大エラー!アカサタがひいきにしている魔王デストロイヤーズは、こういうミスが多いのです。打撃は得意な選手が多いのですが、その分、細かいプレーがなっていません。

 結局、そのまま流れを変えることができず、あわれ魔王デストロイヤーズは大逆転負けを食らってしまったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ