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研究者パーレン・タートルネック

 パーレン・タートルネックは、人形化された子供の1人でした。

 その心は完全に壊れていて、普通の人が感じるようなコトを感じ取ることができなくなってしまっていました。

 けれども、決してそれを表に出したりはしません。さも、「自分は普通の人間です」という顔をして生き続けていたのです。


 そんなパーレン・タートルネック。大人になって、生物学の世界へと進みます。そうして、大学の研究員として日々を過ごしていました。

 パーレンの心の中にある思いは1つだけ。

「自分の研究で、いかに世界に影響を与えるか?」

 ただ、それだけでした。


 新しい生物を発見した時も、それは変わりません。偉大な発見をして、世間の人々に認められたいだなんて、これっぽっちも思ってはいません。地位や名誉などが欲しいわけではないのです。本当の意味で“世界に影響を与える”というのは、そういうコトではないのです。

 今回も、それは同じでした。実験を繰り返し、“人間の感情を変えてしまう寄生生物”を誕生させても、それを世間に発表しようとはしませんでした。

 そうはせず、極秘に人に飲ませては、その反応を楽しんでいたのです。思った通りの反応を示す(あるいは、全く予想もしないような結果が出る)ことが、おもしろくておもしろくてたまりませんでした。

 そうやって、人体実験を繰り返し、自分の研究に完全な自信を持つと、その寄生生物を世界へと広めていったのでした。


 その悪事に協力したのは、食品会社につとめるパーレン・タートルネックの友人。彼は、大量販売されているレトルト食品に寄生生物の卵を混ぜると、何食わぬ顔で出荷していきます。

 数年間、それは誰にもバレることなく、同じ行為が繰り返されました。そうやって、寄生生物は世界へと広まっていきます。

 なにしろ、人間の腸内に元々住んでいる細菌なのです。ただ、能力が違うだけ。寄生生物の卵は、人間の目に見えるものでもありません。また、その効果もわかりづらいものでありました。目に見えない小さな生き物が、人間の感情を変化させ怒りっぽくさせるだなんて、誰が想像できるでしょうか?


         *


 そんな悪事も、ついに明るみに出る日がやって来ました。

 寄生生物の存在と効果が判明し、犯人も突き止められてしましました。世間では、社会問題として取り上げられます。新聞やテレビのトップニュースになり、パーレン・タートルネックとその友人は、逮捕されてしまいました。


 そんな2人を救ったのが魔王アカサタでした。

 アカサタは、自分の部下を派遣し、刑務所から2人を助け出します。そうして、魔王の城へと連れてこさせました。


 アカサタもまた、善悪の概念がいねん曖昧あいまいな人間でした。この程度の犯罪、悪だとは思えなかったのです。子供のやる、たあいもないイタズラくらいにしか思っていません。

 そうして、パーレン・タートルネックは、魔王城に研究室を与えられ、自由に自分の研究を追求することを許されたのでした。 


         *


 スプレンダー・ミリオンロウは、城にやってきたパーレン・タートルネックの気持ちがわかりました。

 なぜなら、彼もまた同じような人生を歩んできたからです。子供の頃から勉強けで、思うように遊びに行くことも許されず、ずっとつらい思いをして生き続けてきたからです。

「1歩間違えば、僕もあのような人間になってしまっていただろう」

 そんな風に思いました。


 こうして、2人は意気投合し、一緒にお酒を飲んだり、仲良く会話するような仲になったのでした。

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