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スプレンダー・ミリオンロウの歩んできた人生

 スプレンダー・ミリオンロウは、人形化された子供の内の1人でした。

 けれども、幸いなことに、人生という名の道を大きくそれることなく育つことができました。心が壊れることもなく、大きな犯罪をおかすこともなく、成長していきます。その代わり、大人になってから症状しょうじょうが現われました。

 大学を卒業してからも、まともな仕事にこうともせず、ブラブラと気の向くままに旅をして暮らしていました。


         *


 スプレンダー・ミリオンロウの両親は、普通の労働者でした。工場に勤務する父親と、それを支える母親。母親の方も、暇さえあれば、パートタイムへと出かけます。

 おかげで、子供たちは、いつも寂しい思いをしていました。スプレンダーも、その弟も、妹も。


「自分たちは、がくがなかったから苦労するはめになってしまった。子供たちには、同じ思いをさせたくない!」

 それが、両親の口癖くちぐせでした。特に、母親の。

 そうして、自分の子供を人形化させる道を選んだのです。子供の思いも考えずに…


 長男であるスプレンダーは、特に親の愛情を強く受けて育ちました。

 …という言い方をすれば聞こえはいいですが、ある意味で、それは道具としての人生でした。親の理想とする人生を無理矢理に歩まされた生き方。自分にできなかったコトを子供にたくす“代替だいがひん”としての生き方です。


 小学校までは、普通の公立校に通い、中学からは、有名な私立魔法学校へと進学させられます。そのために、小学校の内から塾に通わされて、毎日、何時間も机にしばりつけられて、勉強しなければなりませんでした。

 遊んでいる暇などありません。学校から帰ると、すぐに部屋に閉じ込められ、塾に行く以外は家から出ることすら許されませんでした。祝日も夏休みも、ずっとず~っとそんな感じでした。

 そうして、余裕で中学の入学試験にパスします。そのまま高校に進み、一流の魔法大学へと合格し、優秀な成績で大学を卒業しました。


 けれども、そこが限界でした。

「これまでは、親の命令通りに生きてきたのだから、これからは自分の好きに生きていこう!」

 そう決めて、親の元から姿を消しました。

 そうして、長い旅の果てに、魔王アカサタの城へとたどり着いたのでした。


         *


 スプレンダーは、魔王の城へとやって来てからも、その才覚さいかくを発揮します。

 元々持っていた魔法に対する才能と、これまで学んできた数々の能力。それらの能力を身につけるためにしてきた血のにじむような努力。

 それらをここでも有効に活用しました。彼は、決して仕事ができなかったわけではありません。学校で学ぶだけの頭デッカチで、現場に向かない人間ではありません。ただ、その能力の使い道を知らなかっただけなのです。

 ここに来て、スプレンダー・ミリオンロウは、水を得た魚のように自由にその力を使いました。


 アカサタは、決して何かを強要したりはしません。

「どうだ?これやってみるか?」と提案し、いろいろな仕事を用意するだけです。本人が望まなければ、断っても構わないのです。

 スプレンダーの方も、おもしろがって、その提案に乗ります。

 行き場を失った子供たちの面倒を見たり、「魔法を覚えたい」と言ってくる者たちに基礎魔法から指導したり、街で困っている人がいれば派遣されて問題を解決したりします。

 そうして、実践経験を積み、メキメキと実力をつけていきました。

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