スプレンダー・ミリオンロウの歩んできた人生
スプレンダー・ミリオンロウは、人形化された子供の内の1人でした。
けれども、幸いなことに、人生という名の道を大きくそれることなく育つことができました。心が壊れることもなく、大きな犯罪を犯すこともなく、成長していきます。その代わり、大人になってから症状が現われました。
大学を卒業してからも、まともな仕事に就こうともせず、ブラブラと気の向くままに旅をして暮らしていました。
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スプレンダー・ミリオンロウの両親は、普通の労働者でした。工場に勤務する父親と、それを支える母親。母親の方も、暇さえあれば、パートタイムへと出かけます。
おかげで、子供たちは、いつも寂しい思いをしていました。スプレンダーも、その弟も、妹も。
「自分たちは、学がなかったから苦労するはめになってしまった。子供たちには、同じ思いをさせたくない!」
それが、両親の口癖でした。特に、母親の。
そうして、自分の子供を人形化させる道を選んだのです。子供の思いも考えずに…
長男であるスプレンダーは、特に親の愛情を強く受けて育ちました。
…という言い方をすれば聞こえはいいですが、ある意味で、それは道具としての人生でした。親の理想とする人生を無理矢理に歩まされた生き方。自分にできなかったコトを子供に託す“代替え品”としての生き方です。
小学校までは、普通の公立校に通い、中学からは、有名な私立魔法学校へと進学させられます。そのために、小学校の内から塾に通わされて、毎日、何時間も机に縛りつけられて、勉強しなければなりませんでした。
遊んでいる暇などありません。学校から帰ると、すぐに部屋に閉じ込められ、塾に行く以外は家から出ることすら許されませんでした。祝日も夏休みも、ずっとず~っとそんな感じでした。
そうして、余裕で中学の入学試験にパスします。そのまま高校に進み、一流の魔法大学へと合格し、優秀な成績で大学を卒業しました。
けれども、そこが限界でした。
「これまでは、親の命令通りに生きてきたのだから、これからは自分の好きに生きていこう!」
そう決めて、親の元から姿を消しました。
そうして、長い旅の果てに、魔王アカサタの城へとたどり着いたのでした。
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スプレンダーは、魔王の城へとやって来てからも、その才覚を発揮します。
元々持っていた魔法に対する才能と、これまで学んできた数々の能力。それらの能力を身につけるためにしてきた血の滲むような努力。
それらをここでも有効に活用しました。彼は、決して仕事ができなかったわけではありません。学校で学ぶだけの頭デッカチで、現場に向かない人間ではありません。ただ、その能力の使い道を知らなかっただけなのです。
ここに来て、スプレンダー・ミリオンロウは、水を得た魚のように自由にその力を使いました。
アカサタは、決して何かを強要したりはしません。
「どうだ?これやってみるか?」と提案し、いろいろな仕事を用意するだけです。本人が望まなければ、断っても構わないのです。
スプレンダーの方も、おもしろがって、その提案に乗ります。
行き場を失った子供たちの面倒を見たり、「魔法を覚えたい」と言ってくる者たちに基礎魔法から指導したり、街で困っている人がいれば派遣されて問題を解決したりします。
そうして、実践経験を積み、メキメキと実力をつけていきました。




