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賢者アベスデ

 この世界のどこか。

 ある荒野の崖の上に、1人の老人が立っているのが見えます。老人は1頭の馬を引き連れていて、馬の方はまだ若く、その身は全身、限りなく黒に近い焦げ茶色をしております。


 老人の名は“賢者アベスデ”

 この世の全てを知るとも言われている賢者アベスデは、魔王を打ち砕く“勇者”を探していました。

「世界中を旅して回ったが、いまだ望みの人物には出会えず…」

 荒野で、1人、そう呟いています。

「なかなかに見所のある者は何人もいた。才能を持つ者は、数知れず。努力を怠らぬ者も、無数に存在する。だが、その両方を兼ね備えた者となると、なかなか…」

 アベスデは、遙か彼方の地平線を見つめながら、そう語ります。もしかしたら、側にいる限りなく黒に近い焦げ茶色の馬に向って喋っているのかも知れません。

「しかも、その才能と努力が、魔王を倒す為に使われる者となると、さらに数は絞られる。わずかながら条件を満たした者たちも、皆、魔王の前に屈してしまった」

 そう呟くと、老人とは思えぬ身のこなしでサッと馬上へと飛び乗り、ゆっくりとした歩みで馬を進め、どこか遠くへと消え去ってしまいました。


 この世界のありとあらゆる知識を有するとも言われた賢者アベスデでしたが、勇者アカサタについては何も知りませんでした。

 それも、そのはず。アカサタは、この世界の存在ではないのですから。別の世界から転生してきたアカサタのことを知らないからといって、賢者アベスデを責めることなど誰にもできません。

 たとえ知ったとしても、今はまだ、ただ1人の若者に過ぎないのです。ちょっとばかし…いえ、究極にエロい、ただの1人の若者。それが真の勇者と認められたりするものなのでしょうか?


 それについては、2人が実際に出会ってみるまでわかりません。もしかしたら、真の勇者と認められ、神の叡智を授けてくれるかも知れませんし、その逆に「ただの落伍者!」と烙印を押されて、見捨てられてしまう可能性だってあります。


 そうして、賢者アベスデが勇者アカサタに出会うのは、もうしばらく後のコトとなるのでした。

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