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後継者作り

 魔王アカサタは、考えていました。

「自分に与えられたこの力。このまま終わらせては、いけないのではないだろうか?」と。


 アカサタには、賢者アベスデより引き継いだ数々の強力な魔法があるのです。

 その多くは、すでに世間に広まっていましたが、それでもまだ人々の知らない魔法がいくつもありました。

「それらを誰かに伝えておかなければならないのではないだろうか?」

 アカサタも年を重ね、そういうコトを考えるようになってきていたのです。

「いずれ、この人生も寿命が尽きる時が来る。そうなる前に、伝えておかなければならない」と。


 こんな時代ですから、敵を攻撃するような魔法は、あまり役には立ちません。

 それでも、探索や移動の魔法にも便利なモノはいろいろとあります。それらを改良したり応用して使えば、世界はさらなる発展をげるでしょう。


 アカサタは、魔王の城に集まってきた者の中から、希望者をつのって、特に有能な者に魔法を伝授することに決めました。

 もちろん、あのスプレンダー・ミリオンロウもその内の1人でした。スプレンダーは、一流の魔法大学を優秀な成績で卒業しただけあって、既に魔法の基礎は学び終え、いくつも高度な魔術を習得しています。それだけではなく、新しく教えられた魔法も次から次へと瞬く間に身につけていくのでした。


「これが、オレの後継者…なのだろうか?」

 アカサタは、そんな風に考えます。ただ、この時点では、また明確な答は出ていません。


         *


 スプレンダー・ミリオンロウとアカサタは、よく2人で話をしました。

 スプレンダーは、過去や現在よりも、未来について考えるタイプ。なので、話題も自然とそちらの方向へとかたむいていきます。

 たとえば、こんな感じ。


「アカサタさん。今、みんなに教えている魔法も、きっと、この世界をよい方向へと導いてくれると思うんです。僕は、そう信じています」

「そうだな、オレもそう思うよ」

「けれども、それは、地味な補助魔法ばかりではいけないと思うんです」

「…というと?」

「もっと大きな威力を秘めた破壊魔法なども教えるべきだと考えます。きっと、それが、この世界をもっともっと発展させてくれる!」

「果して、そうだろうか?こんな時代だ。せっかく世界は平和になってきたのに、今さら戦闘に使うような魔法は必要ないんじゃないか?」

「いえ、そうではありません。魔法というのは、扱う者しだい。それを使う者によって、その結果も左右されるのです。一見安全に見える魔法だって、ちょっと工夫してやれば、人を傷つける手段となります」

「フム」

「それと同じように、危険に思える魔法だって、使う者によっては平和利用できるはず。むしろ、その威力が大きければ大きいほど、より多くの人々を幸せにしてくれるものとなってくれるはずです。たとえば、電気の力だってそうですよね?大きな破壊力を持った方法で発電させ、大勢の人々のためになっている」

「なるほど…」

 そう言って、アカサタは納得しました。


 スプレンダー・ミリオンロウの言っているコトには、一理ありました。

 それで、アカサタは、自分が覚えた数々の攻撃魔法も教えることに決めました。それらは、これまで、戦闘でしか使用してこなかったものです。敵を攻撃し、倒すためだけに誕生した魔法。それらも、未来ある若者たちが、うまく使ってくれるかもしれないのです。

 けれども、それは大きなリスクも秘めていました。武器はしょせん武器。正しき者が使えば、確かに人を幸せにしてくれるかもしれませんが、悪しき者が使えば、やはり人を傷つけるものです。それを扱う者を、どうやって選別するというのでしょうか?

 もっとも、この時には、それはまだ関係のないお話。それが大きな問題となってくるのは、もっとずっと先の時代のことなのでした。

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