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攻めるべき時に攻め、引くべき時に引く

 “魔王将棋”は、全世界へと販売され、好評をはくしました。

 次々と新しい駒を売り出し、売り上げの方も順調です。

 元々、将棋と同じ9×9マスの盤で戦っていたのですが、それにもいろいろなバリエーションができました。駒を減らして5×5マスの盤で戦ったり、逆に使用する駒の数を増やして11×11マスや9×15マスの盤を使ったり、様々です。

 ルールの方も、どんどん複雑になっていき、新しい遊び方もたくさん生まれていきました。

 もはや、魔王将棋はアカサタの手を離れ、ユーザーたちの手によって自由に進化していくようになっていたのです。


         *


 けれども、やがて、アカサタは魔王将棋にも飽きてしまいます。

 そうして、今度はスポーツ観戦に没頭し始めました。プロのスポーツ団体をいくつも立ち上げ、自分でもチームを持って運営します。

 森を切り開いて、野球場やサッカースタジアムやゴルフ場を作らせます。


「なあに、金ならいくらでもある!湯水のごとく使えばいい!!」

 アカサタのその言葉通り、お金ならば、いくらでもあるのです。資金は無限に集まってきました。

 なにしろ、アカサタが投資した先は、どれもこれも大成功を収めるのです。いえ、正確には、そうではありません。失敗も数多くあるのですが、それにもまさって成功を収めるのです。

 いくつもの失敗を重ね、必ずそれ以上の利益をあげる成功を手にするのでした。


 それは、一種の才能でした。

 こぢんまりとしたお金の使い方しかできない人には、決してできない生き方です。お金を使うのも、お金を集めてくるのも、常に派手でした。

 アカサタは細かいコトを気にしません。

 細かい部分は、それにけた専門のスタッフにまかせて、大きなコトをやるのです。攻める時も引く時も、判断は迅速じんそくです。

 「ここぞ!」と思った時にはガッと攻めて、「駄目だ」と思った時はサッと撤退てったいします。それで、大きな判断のあやまりをするようなことは滅多めったにありません。

 そういう意味では、戦闘と同じでした。剣や槍を手にし、魔法を撃ち合っていた、あの頃と同じ。あのギリギリで命のやり取りをする感覚と同じ。


 アカサタは、世界の大きな流れを読むのが得意です。

「お金は流動的なモノだ」と、考えていました。アカサタの周りでは、お金は常に流れていきます。決して1ヶ所にとどままったりはしません。次から次へと水のように流れてきて、雨のごとくバラきます。それで、大抵はうまくいくのです。

 それで駄目な時は、あきめます。諦めて、気持ちを切り換えて、次の事業に取りかかるのです。

 そういった行為を繰り返している内に、傷を小さく抑え、大きく利益をあげるコツをつかんでいきました。前の失敗は、次の成功で取り返せばいいのです。


 だから、出資者はいくらでもいました。後から後から「どうかお金を出させてくれ!」「お願いだから、うちで借りてください!」と、そんな風に申し出てくる人たちが現われてきて、あとちません。

 大きな視点で見た時に、必ず利益は出るのです。貸したお金に何パーセントも利子がついて返ってきました。


 こうして、アカサタは世界の中心で傍若無人ぼうじゃくぶじんに振る舞いながら、それでも大きく人々に迷惑をかけることなく、進撃していきます。

 アカサタが何かを思いつき、行動を起こすと、そのたびに世界はれ、進歩をげます。

 それは完全に連動れんどうしていました。世界の動きとアカサタの動き、その2つは完全に1つのモノとなり、大きなウネリを上げながら、進んでいくのです。


「心の底から望んでいる行動を取れば、それでいい。ただし、“何もしない”だけは駄目だ。必ず何かをやる」

 その昔、ダックスワイズが言っていたセリフ。まさに、その言葉の通りに。それは、ダックスワイズの心を満足させただけではなく、同時にこの世界そのものにも影響を与え続けていたのです。

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