表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/324

世界の進歩のスピードの加速

 ある日、ひさしぶりに、魔王の城にダックスワイズがやって来ました。以前は、アカサタの前に魔王をやっていた男です。今回は、青年の姿をしています。

 青年の姿のダックスワイズは、アカサタに会うと、ペラペラと機関銃のように喋り始めます。その声は、実に楽しそう。「心の底から人生を楽しんでいるぞ!」といううれしさと喜びにあふれています。


「で、な。街を守る“ガーディアン・エンジェル”ってのに入隊したわけさ。そこから、街に攻めてくる魔物たちと戦って…」

「へ~」と、あまり興味なさそうに返事をするアカサタ。

「それから、今度は、こんな時代だろう?次から次へと、見たこともない発明品が生まれてきて。いや~、電気の力ってのは凄いもんだな~!!毎日、映画館に通い、家ではテレビを見て暮らしてるよ」

「フ~ン…」と、アカサタの方は、なんだかつまらなさそう。

 それでも、ダックスワイズの方は、喋るのをやめません。

「“マジック・ドラッグ”ってのを知ってるか?人間の集中力を極端に高める魔法の薬。アレは、マズイな。人の体を破壊するぞ。今に大きな社会問題になるに違いない。オレは、そのマジック・ドラッグをやめさせる活動に参加していて…」

「はあ…」と生返事をするアカサタ。

「それもこれも、みんな、お前のおかげだ!アカサタよ!お前のおかげで、ほんとに楽しくなった!毎日が毎日、退屈せずに済んでいる!!これから、もっともっと世界をおもしろくしてくれよ!」


 その言葉には答ず、代わりにアカサタは別の疑問を口にします。

「けど、ほんとにこれでよかったのか?」

「どういう意味だ?」とダックスワイズは、首をひねってたずね返します。

「だってよ、元々、この世界にない文化をたくさん持ち込んじまったんだぜ。それによって、いくつもの大きな問題が起きてしまった。こんなにムチャクチャな世界になっちまって…」

 ダックスワイズは、拍子抜けした表情で答えます。

「な~んだ、そんなコトか。いいんだよ。どうせ世界は進歩する。いずれ、こうなる時は来ていた。それは、運命みたいなもんだ。世界の流れには誰もさからえやしない。ただ、お前はその進歩のスピードをちょっとばかし早めただけ。それだけに過ぎないんだ」

「ちょっとばかし…だろうか?」

「まあ、その辺は気にするなって!それよりも、もっともっと世界を混乱させ、おもしろくしてくれ!世界の行く末なんて知ったこっちゃない。何か問題が起きれば、このオレが解決してやる!お前は、もっと問題を起こせ!世界の進歩のスピードを加速させろ!なにより、オレたちが楽しめれば、それでいいじゃないか!」


 アカサタは、ダックスワイズのその言葉を聞いて、ちょっとだけ安心しました。けれども、心の底では、まだ疑問は解消されてはいません。

“ほんとうに、これでいいのだろうか?何か大きな間違いをおかしているのではないだろうか?”という疑惑が、常に心の中に居座り続けていたのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ