表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/324

神も魔王も同じようなモノ

 魔王となったアカサタは、自分の能力を何に使えばいいのか、完全にわからなくなってしまっていました。


 確かに、世界に魔物を放ったことで、よいコトもありました。それで、人類の進化の促進そくしんの手助けはできます。

 けれども、それでは、前の魔王と同じコトをやっているだけ。決して、それを超えることはできず、それ以上の存在になれてはいないのです。ただ立場が入れ替わっただけに過ぎません。


 ここにきて、アカサタは魔王ダックスワイズの気持ちが理解できました。「世界は退屈だ…」と言い続けていたダックスワイズの思いに、心の底から共感できたのでした。

 それから、1人でこうつぶやきます。

「神っていうのも、こんな気持ちなのかもしれないな…」


 最初にアカサタをこの世界に連れてきたのは、神様でした。今や、アカサタは、その神様の気持ちすら理解しようとしているのです。実際に、神様がどのような心持ちで生き続けているのかはわかりません。けれども、それを理解しようと挑戦してはいました。1歩ずつですが、その領域へと近づきつつあったのです。


 それから、アカサタはベッドの上に寝転がり、こんな風に考えて、その考えを言葉にしてみました。

「魔王も神も同じようなモノか…」

 部屋には、他には誰もいません。聞いている者もいないのに、1人で喋り続けます。

「どちらも絶大な能力を誇りながら、その力を持てあましてしまっている。だから、退屈しのぎに、いろいろとやってみるのではないのだろうか?アレやコレやと試してみる。それに飽きたら、また別の遊びを試してみる。その繰り返し」

 アカサタは、ベッドに寝転んだまま続けます。

「きっと、神の野郎やろうが、このオレをこの世界に連れてきやがったのも、そのためだったのだ。世界は、あまりにも退屈過ぎる…」


 アカサタは、1人で考え続けます。

「この能力を、一体、何に使えばいいのだろうか?」と。

 自分の欲望のために使ったとしても、すぐに満足し、飽きてしまいます。かといって、人々の幸せのために使ったとしても、満足感を得られません。そこに意味を感じないのです。

 1人を助けたところで、別の1人が困る。その1人を救ったとしても、また別の1人が不満をもらし始める。ひたすらに、その繰り返し。

 人々の願いは尽きません。欲望にキリはありません。たとえ、誰かの希望をかなえたとしても、それは別の誰かの不満を生むだけ。どんな理想的な仕組みを作り上げたところで、無駄でした。世界中の人々全てが満足するような世の中などありはしないのです。誰かにとって理想的な世界も、他の誰かにとっては最悪の環境なのですから。


「それでも…」

 と、アカサタは思います。

「それでも、まだオレにはできるコトがあるかもような気がする。自分のためか、他人のためかは関係ない。あるいは、もっと別の誰かのために、何かできるコトがあるという、そんな気が。少なくとも、ここは、まだ終わりの地点ではない。あきらめるべき時ではない。なぜだかわからないが、そういう確信がある」

 不思議と、アカサタは自然にそう思うことができました。万能にも近い能力を手に入れて、生きることを諦めたり、放棄ほうきしたりすることなく、「まだ先に進もう!」と思うことができたのです。

 そうして、ベッドから飛び起きると、扉を開けて、部屋の外へと飛び出していきました。


 実際に、その思いは正解でした。この時の「もっと別の誰かのために、何かできるコトがある」という思いが、やがて運命はアカサタをある地点へと導いていくのですが…

 それは、まだ遠い遠い先の出来事できごととなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ