勇者の誕生
さて、神様の能力によって、別の世界へと飛ばされたニートでしたが、どうなったのでしょうか?
続きを見てみましょう。
ニートは、1人の少年に生まれ変わっていました。
年齢は15歳前後といったところでしょうか?
パッと見たところ、見た目もなかなかよくて、“イケメン”と呼ばれる部類に入りそうです。
ニートは、生まれ変わって、“勇者”と呼ばれていました。
ただし、まだ何の功績もあげてはいません。そういうのは、全部これから。そういう意味では、生まれ変わる前と同じニートのままだったとも言えます。
今日は、勇者になったニートが、王様に会いにいく記念すべき日でした。
この世界には、悪の魔王が住んでいて、世界を滅ぼそうと目論んでいるのです。勇者が住んでいるこの辺りは、まだ平和な方でしたが、それも時間の問題です。いずれ、魔王の悪の手が及ぶ日がやって来るでしょう。
そうなる前に、王様が討伐隊を組織しようと考えたのでした。
勇者は、その為の試験に向うところなのです。
*
勇者となった元ニートは、この世界へと送られてきた時のことを思い出していました。
その時に、神様にこう言われていたのです。
「よいか?これから、お前を別の世界へと送る。その世界で、お前は史上最強の勇者となるだろう。なぜなら、私はお前に“最高の能力”を与えておいたからな」
ニートは、ちょっと驚きつつも喜びました。そうして、喜びの笑みを隠しきれませんでした。
「ガハハハ!ガハハハ!最高の能力か!そいつはいいな!その能力を使って、無双すればいいわけだな?いいじゃねえか、いいじゃねえか。これは、ワクワクしてきたな~」
でも、ニートは喜びすぎていたために、その能力が何なのか聞くのを忘れていました。そうして、この世界へとやって来て、ちょっとイケメンの少年へと転生したのです。
*
お城の中、謁見の間へと通された勇者は、王様の前にひざまずいていました。
元ニートの勇者は、こういうのは嫌いでしたが、仕方がありません。「最初くらいは、いい格好をしておくか」と、嫌々ながらやっているのです。
それが終わると、王様の方から話しかけてきました。
「おお、よく来たな。勇者よ。名は何と申す?」
ここで勇者は考えました。
名前か。そういえば、名前なんて考えてもいなかったな。ま、そんなものは適当でいいか。
「勇者アカサタ、と申します。以後、お見知りおきを」
勇者は、そう答えました。
「フム。勇者アカサタとな。よい名じゃ、よい名じゃ」
「ハッ!ありがとうございます」
「して、勇者アカサタよ、お前の夢はなんじゃ?」
ここで、アカサタは考えました。
夢だと?何で、そんなコトを聞く?ここは、就職試験の面接会場か何かか?テメーは、面接官かっつーの!夢は、この世界で最強の人間になって無双しまくり、女の子をいっぱい周りにハベらせてイチャイチャウハウハすることだっつーの!
ま、いい。ここは無難に答えておくか。
「ハッ!夢は、この世界にはびこっている悪を滅ぼし、世界に平和をもたらすことであります!人々の笑顔こそが、我が命であり、最高の幸せなのでありますから!」
ムッ。我ながら、いい答ができたな。これは、模範解答だろう。面接試験なら一発合格の解答だな!
そんな風に、勇者アカサタは思いました。
「よくぞ言った!勇者アカサタよ!では、これを授けよう!」
その言葉と共に王様が差し出してきたのは、わずかなお金と、1本の棒きれだけでした。
「では、これらを持って魔王討伐の旅へと出かけるのじゃ!何らかの成果があがったならば、再びここを訪れるがよい!」
王様の話は、それで終わりでした。