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ガーディアンエンジェルの誕生

 最初、勇者アカサタは1人で戦っていました。けれども、それではキリがありません。倒しても倒しても、らえても捕らえても、悪人は尽きないのです。


 悪人とはいっても、生まれながらの極悪人ではありません。ただ、働きもせずに楽に生きていきたいだけの連中です。そういう意味では、アカサタと似たようなところがありました。

 アカサタ自身、マジメに働くのは苦手でした。特に、何の意味も見出みいだせない単純労働に従事じゅうじしていると、頭がおかしくなりそうになるのです。

 なので、そういった悪人連中を相手にしている時でも、心の底から憎んだりはできませんでした。


 それでも、悪は悪。たとえ悪気わるぎはなくとも、悪意を持っていなかったとしても、一生懸命マジメに生きていこうとしている人々の害になるような者たちを放っておくわけにはいきません。

 むしろ、悪意がないからこそ、余計にタチが悪いともいえたのです。


         *


 そんな終わりのない戦いに挑んだ勇者アカサタでしたが、しだいに状況が変わっていきます。

 孤軍奮闘こぐんふんとうするアカサタの姿を見て、人々が協力してくれるようになってきたのです。

「アカサタ様1人にまかせてはおけないわ!」

「自分たちの街は、自分たちの力で守らなければ!」

「我々も立ち上がる時が来たのだ!奮起しなければ!」

「私たちの街を守り、治安を守るために、法を整備しましょう」

「ひいては、その行動が世界をより平和にしていってくれるだろう!」

 そうやって、仲間が増えていきます。


 盗賊まがいの行為を繰り返していた者たちも、勇者アカサタの生き方を見て、心を入れ替え始めました。

「オレたちは、一体、何をやっていたんだ?」

「いつまでも、こんなコトではいけない!」

「せっかくの力があるんだ。この力を街を守るのに使おう!」

 そうして、これまで街の平和を乱すようなコトを繰り返していた者たちが、今度は逆に、街を守る自警団となっていったのです。

 彼らは、自らを“ガーディアンエンジェル”と名乗り始めます。街を守る守護天使というわけです。


 それでも、まだ数多くの者たちが、ボ~ッとして日々を過ごし続けます。そういった者たちは、決して人に害を与えるわけではないのですが、かといってマジメに働こうとするわけでもありません。

 ただただ何もせずに、路上で、あるいは家の中で無意味に時間を過ごすだけなのでした。

 それくらい、魔物と戦っていた日々は魅力的でした。それに比べると、世間の一般的な仕事というのは退屈過ぎます。

「もう1度、あの頃に戻りたい」

血湧ちわき、肉躍にくおどる快感を再び味わいたい…」

 そんな風に願いながら、過去の思い出にひたりながら、時間が過ぎていくのを眺め続けるのみでした。

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