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魔物がいなくなった世の中で

 勇者アカサタは、世界を旅して回り、現状を知りました。

 魔王と戦い、世界が平和になった後、何が起こっていたのかを。


 確かに、魔物が消えていき、世界は平和になりました。

 けれども、それと同時に数多くの問題が生まれていました。


 1つには、魔物が減ったコト、それ自体が問題でした。

 これまで魔物退治をなりわいとして生きていた冒険者たちは、仕事を失い、失望の日々を過ごしました。倒すべき相手を失って、放心状態となったのです。

 いわば、“戦闘依存症”といえるでしょう。

 

 もう1つには、アカサタのせいでした。いえ、直接的にアカサタが悪かったというわけではないのですが、全く関係がなかったというわけでもありません。

 どういうコトかというと、アカサタの後について、四天王や魔王と戦った者たちが、自分たちの功績こうせき誇示こじし始めたのです。

 そうして、こんな風に吹聴ふいちょうして回りました。

「オレ様は、勇者様について行き、世界を救った英雄であるぞ!皆、我をたたえよ!報酬ほうしゅうを与えよ!!」

 そうして、街の人々から金品を巻き上げ、女性たちを奪っていったのです。それは英雄ではなく、ただの成れの果て。もはや、盗賊となんら変わりがありません。

 それも、1人や2人ではありません。あちこちに、そんな人間が大勢いました。

 さらには、女性たちを“奴隷”としょうし、売り買いし始めたのです。まるで、おもちゃのように扱っては、ポイッと捨てる。そんなコトを繰り返します。


 他にも、一部の国家が、その武力を持てあましつつありました。

 これまで、魔物討伐に向けていた武力や兵力の矛先ほこさきを失い、使い道が見出みいだせずにいたのです。

 けれども、武器の生産は止まりません。次から次へと生み出される新しい武器や兵器。商人たちは、どうにかして、それらを売りさばこうと、武器の価格を下げます。それでも、全然売れなくなってしまっていました。

 そもそも戦う必要自体がなくなったのですから。必要のない物が売れるはずがありません。


 そうして、今度は人間同士が争うようになりました。

 魔物の代わりに、他国の人間を相手にその武力を行使するようになったのです。それで、再び、武器は売れ始め、商人たちは利益をあげるようになっていきます。


 勇者アカサタは、そういった話を耳にして、決心します。

「このままじゃあ、いけねえな。ここは、いっちょ、オレが何とかしてやらないと!他にやるようなコトもないし、しばらく、悪事を働く人間相手に戦ってみるか!」

 こうして、アカサタは、世界の治安維持のため、立ち上がったのでした。

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